岐阜県飛騨市(都竹淳也飛騨市長)では2021年に、生きづらさを抱える方々の悩みごとに世代や分野を区切らず受け止め、専門性も持って相談対応する「地域生活安心支援センターふらっと」を開設し、さまざまな相談に対応してきました。 その中で、社会に出る前の思春期時に自身の特性や自己理解を深めていれば、自身に適合する進路をみいだせ、社会に出てから辛い思いをせず活き活きと暮らすことができるのではないかと考えていました。
この折に、2023年から飛騨地域唯一の入院精神医療機関である須田病院で勤務されている阪下和美医師よりアメリカなどで定着している思春期時の健診の重要性ならびにそれを実施する上での社会的な課題の存在を伺い、今回、飛騨市を実装検証のフィールドとして飛騨市版思春期健診「ヒダ×10代ケンシン」を実施することになりました。
10 代ケンシンとは
飛騨市内に住んでいるか市内に通学している11歳~18歳、いわゆる「思春期」の皆さんを対象に、この時期ならではの心や体のこと、家庭や学校のこと、将来への不安など、さまざまな不調や悩みについて10代の健康の専門医が話を聞き、少しでも楽になる方法を一緒に考えていこうという健康診査です。
「10代ケンシン」を企画・社会実装に取り組む阪下和美医師にうかがいました
地域生活安心支援センターふらっと+(ぷらす)
顧問医師・小児科医 阪下 和美 医師
「自分は元気!という子も、しんどいなぁ…と感じている子も、皆さん、ぜひ10代ケンシンに来てください!」
「10代ケンシン」の必要性
10代の若者は一見元気で、医療や福祉とは無縁のように思われるかもしれませんが、実際は、心と体の病気が多く「非常に脆弱でリスクが高い年代」です。
発達途上の脳の働きの影響で、感情の制御や見通しをたてて行動することが苦手です。さらに高等教育が普及している先進国では、子どもと大人の境界にいる期間が長くなり、自分の実現や自立、社会的責任などいろいろな葛藤を抱えて生きる時間が長くなりました。
世界的にも思春期に健康上の問題が多いことが報告されていますが、日本でも10代の子が病院に受診する最多の理由が「精神・行動の問題」であることがわかっています。このように、10代の若者のだれもが健康を損なうリスクを持っています。
世界では予防医療が標準
欧米諸国では、生活指導や健康教育を通じて「病気になることを防ぐ」予防医療が非常に重要視されています。病気になると、その人の苦痛や治療に費やす時間やお金の負担が生じ、さらに学校や職場から離れてしまうことで社会としても損失になります。
思春期の予防医療は特に大切で、欧米では予防医療を提供するユースクリニック(若者専用のクリニック)も普及しています。
リスクの早期発見が重要!本人にも社会にも有益
10代に生じた心身の不調や生活習慣の乱れは、大人になってからも不調を生じる大きなリスクになります。たとえば、大人になってから診断される精神疾患の半分は10代半ばまでに、4分の3が20代半ばまでに発症しているというデータがあります。また、10代のころに食事や睡眠の習慣が乱れ、そのまま大人なってもそうした習慣が続いてしまうと、生活習慣病や精神疾患などになる可能性が高まります。大人が心身の不調を生じ症状が重くなると、回復までにかかる時間や費用が増え、本人や周囲の負担も大きくなる上、社会的にも医療費の増大を招き、また元気に働ける人材の喪失にもつながります。
10代のうちに健やかな生活習慣を身につけ、心身を元気に保つことは、健やかな大人になるために必須です。さらに、自分の健康を損なうリスクを自分で知ることはとても大切な予防方法になります。
1対1の対話からうまれる信頼
10代ケンシンで大切にしているのはご本人と医療者が1対1で話すことです。「学校や親には話しづらいけど、ばれないならだれかに話をしたい」、「もやもやした気持ちをだれかにきいてもらいたい」という気持ちを受けとめる場所になれればと思います。また、1対1でお話した上で、伝えた言葉は相手の心に残りやすいです。
初年度はどれだけのお子さんが参加してくれるかわかりませんが、何年か続けているうちに「行ってみたら、いろいろ聞いてもらえたよ」のような声がお子さんの間で広がるといいなと思っています。
なお、1対1で話した内容は絶対に外にはもらしません。命の危険がない限りは、ご本人の同意なしで保護者さんに伝えることもしません。安心して話してもらい、なんとなくすっきりして帰ってもらえたらと思います。
「10代ケンシン」への願い
「自分は元気」という子も「悩んでいることがある」子も、思春期のみなさん全員にぜひ来てほしいです。いずれは「1年に1回は行く」「中3と高3は行く」など共通の意識ができて、定期的に自分の健康を振り返る機会になればうれしいです。
また、10代ケンシンはお子さんが自分の健康について自分の言葉で考えて話す経験になります。大人になる前に、練習をしてほしいです。そして話して「少し楽になった」と感じてもらえればうれしいです。
その経験は、大人になってから「本当に助けてほしい」と思ったときに生きてくると思います。「10代ケンシン」で、自分で助けを求める力を育んでもらいたいです。
10代ケンシンの受け方
まずは予約を!
対象者:飛騨市に在住または在学中の11~18歳の希望者
費用:無料
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飛騨市役所ホームページ
から希望の日時・場所を選択し、必要事項を入力して予約していただきます。 -
場所は「飛騨市多機能型障がい者支援センター古川いこい」(主会場)、もしくは特別養護老人ホームたんぽぽ苑」(10月の2日間のみ)です。
※予約の際には、ご本人と保護者の方、両方の同意が必要です
※保護者の方の相談会ではありませんので、必ずご本人が来場していただきます
※来訪時の交通事故など不測の事態を避けるため、原則、保護者の方による送迎をお願いしています
1対1の面談です。相談内容は保護者にも秘密
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ご本人と保護者の方が質問票を記入します(基本はタブレット入力)
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ご本人の身長、体重、血圧、脈拍を測定します
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保護者の方を交えた簡単な面接(その後、保護者の方はすぐ退室し、待合室で待機)
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ご本人と1対1で面接をします(20分~ 40分)相談内容の秘密は厳守します
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ご本人の許可を得た範囲内で、全身の身体診察をします
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ご本人へ健康に関するアドバイスをします
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ご本人の許可が得られれば保護者の方とも情報を共有し、ご家族で心がけるとよいことなどをアドバイスします
今後、受診者の増加を図るために、医師だけではなく、看護師などさまざまな職種の医療従事者と連携してこの健診を広げていく予定です。
飛騨市での試行錯誤がモデルケースとなり、全国へ広がっていくことで、日本の10代の心身の健康をよりよくし、それがいずれは医療費抑制や元気な人手の確保につながることが期待されています。
市民の皆さんのご理解とご協力をよろしくお願いします。
お問合せ先
飛騨市地域生活安心支援センター ふらっと+(ぷらす)
担当:中切
電話:0577-54-0702 平日(祝日を除く)9:00~12:00/13:00~16:00
岐阜県飛騨市
飛騨市は、人口約22,000人の小さな市で、周囲を北アルプスなどの山々に囲まれ、総面積の約94%を森林が占めるなど豊かな自然に恵まれたまちです。また、豊富な自然資源のほか、ユネスコ無形文化遺産である古川祭・起し太鼓、ノーベル物理学賞の受賞に寄与した「スーパーカミオカンデ」を始めとする宇宙物理学研究施設、大ヒットアニメ映画「君の名は。」のモデル地となった田舎町の風景など、多彩で個性豊かな地域資源の宝庫です。
飛騨市公式サイト
https://www.city.hida.gifu.jp/
飛騨市公式観光サイト
https://www.hida-kankou.jp/
飛騨市公式移住サイト
https://www.city.hida.gifu.jp/site/iju/
飛騨市公式食サイト
https://hidaichi.jp/
飛騨市公式広葉樹プロジェクトサイト
https://hidatsumu.com/
飛騨市公式薬草プロジェクトサイト
https://www.city-hida.jp/yakusou/
PRTIMES飛騨市ページ
https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/120394