事業が実施される背景:
長野県生坂村は、美しい自然環境と豊かな生物多様性を誇る地域として知られています。近年、気候変動や環境破壊が進行する中で、地域社会として持続可能な未来を築くための取り組みが求められています。生坂村は2023年に環境省の選定する「脱炭素先行地域※」に選定されており、生坂村として「生坂村ゼロカーボンシティ宣言」を発出しています。そのような背景を持つ同地を舞台に、地域全体でのカーボンニュートラルを目指すとともに、新たな観光の形として「リジェネラティブ・ツーリズム※」に着目しました。
※脱炭素先行地域とは
国が「地域脱炭素ロードマップ」及び「地球温暖化対策計画」に基づき、2050年カーボンニュートラルに向けて、民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロを実現し、運輸部門や熱利用等も含めてその他の温室効果ガス排出削減についても、我が国全体の2030年度目標と整合する削減を地域特性に応じて実現する地域です。
※リジェネラティブ・ツーリズムとは
これまでの消費中心の観光とは異なり、訪れた土地の自然環境や文化を学び、適切な手法で手を加え、より良い姿に再生することを目指す新しい観光のスタイルです。
事業のコンセプト:
テーマは「ネイチャーポジティブと何度も訪れたくなるふるさとづくり」です。単なる観光体験にとどまらず、参加者が自然環境の保護と再生について考え、共に行動することで、生坂村の自然環境を未来にわたって守り続けることを目指します。また、ツアー終了後には、参加者を「生坂村公式ネイチャー研究員(フェロー)」として認定し、彼らが地域の自然保護活動に積極的に参加することを奨励します。地域の方々との交流も大きな目的にしており、まさに自身の「第2のふるさと」となっていくようなコミュニティづくりを目指します。
事業内容:
本プログラムは、観光庁「第2のふるさとづくりプロジェクト」モデル実証事業の一環として企画しており、いくさか『創造の森』を中心舞台に生坂村内にて実施されます。プログラムの内容は、全6回構成となっており、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド形式で行われ、参加者は生き物の在り方や自然の知識を学び、いくさか『創造の森』エリアの自然調査体験や自然再生のためのアクション体験、さらに村内の方々との交流を通じて深い理解を得ることができます。
プログラムの講師には、人と自然の共生をテーマに調査・研究を行う立教大学 スポーツウエルネス学部スポーツウエルネス学科 奇二正彦准教授を迎え、自然再生の先にある新しい里山の姿を想像し、実現に向けて実際に手を加えながら地域の方々と共に「何度でも訪れたくなる里山づくり」を行います。
奇二正彦
(キジ マサヒコ)氏
立教大学スポーツウエルネス学部 准教授
専門は環境教育・保全活動。大卒後、NZのアートスクールで学び、自然学校レンジャー、動物写真家助手、環境コンサルの研究員、環境教育NPOスタッフとして活動。40歳で大学院に進学。体験とスピリチュアリティとの関係について研究し博士(スポーツウエルネス学)取得。現在、立教大学スポーツウエルネス学部准教授。スキー、キャンプなどの野外実習の他、生物多様性や社会の持続可能性についての講義やゼミを展開。
今後の展開:
今後は、本プログラムを通じて得られた知見やネットワークを活用し、生坂村の地域づくりに参画してくれる企業や一般の方々との連携を強化していく予定です。この取り組みが持つ可能性を広く周知し、企業と地域が協力して持続可能な未来を築くための一助となることを目指します。
クラブツーリズムは、生坂村や今回のプロジェクトメンバー各社と共に、地域全体が一丸となって持続可能な未来を築くために、今後も様々な取り組みを展開していきます。今回のリジェネラティブ・ツーリズムプログラムが、その第一歩となることを期待しています。