近年、日本のサービス業界では人手不足が一段と深刻化しており、特に多拠点で展開するビジネスモデルにおいて、非正規社員が主要な労働力として重要な役割を果たしています。
令和4年の総務省の調査によると、宿泊・飲食業界では従業員の約75%が非正規社員であり、生活関連サービスや小売業を含めると、主要3業種で全体の半数以上が非正規社員によって支えられています。
このような場面で非正規社員は正社員と同等の責任を負いながらも、キャリアアップの機会が限定的であり、スキルアップや昇給の可能性も制限されがちです。また報酬面では、国税庁 令和4年「民間給与実態統計調査」によると、就業者全体の平均給与が458万円であるのに対し、卸売・小売業は384万円、宿泊・飲食サービス業が268万円と大きな開きがあります。
本調査では、非正規社員におけるキャリア形成やスキルアップの機会、および昇給の現状について深く掘り下げ、これらの課題に対する理解を深めることを目的としています。これにより、非正規社員のスキルアップや昇給機会の整備に対する意識改革と実践的な改善策を推進する一助となることを期待しています。
調査は、外食業・小売業を対象に、①現場で働く非正規社員へのWebアンケート、②企業の本部管理職への電話調査、の2通りの調査を実施しました。
※調査結果レポート全文は、下記よりダウンロードしてください。
本調査結果を引用いただく際は、情報出典元として「ClipLine株式会社」と明記ください。
URL
https://clipline.box.com/shared/static/cd6vl3w1xu4f1fuhxavv0c7krt07gyir.pdf
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調査結果ハイライト ①現場で働く非正規社員へのWebアンケート
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調査結果ハイライト ②企業の本部管理職への電話調査
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調査概要
調査企画:ClipLine株式会社
※調査結果については、それぞれ数字の丸めにより合計が100%にならない場合があります。
① 現場で働く非正規社員へのWebアンケート
調査方法:アンケートサービス登録モニターを対象としたWebアンケート(インテージ)
調査期間:2024年5月2日(木)~5月7日(火)
対象者 :外食または小売業で非正規社員として就業中、もしくは過去1年以内の就業経験者1073名
② 企業の本部管理職への電話調査
調査方法:調査会社による電話調査
調査期間:2024年5月
対象者 :国内に70拠点以上を展開し、非正規社員を雇用している外食業または小売業の本部管理職252社
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設問・結果 ①現場で働く非正規社員へのWebアンケート
Q1. あなたの職場では、昇給機会がありますか。
全体の過半数が「ある」と回答。昇給機会の有無は企業規模(拠点数)と明確な相関があり、拠点数が多くなるほど、昇給機会があることがわかった。100拠点以上の6割以上が「ある」と回答したのに対し、個人経営の企業で昇給機会があるのは3割程度にとどまった。
Q2. 昇給機会がある場合、どんな条件で昇給しますか。
昇給条件に一定の基準がなく、「店長や上司の判断による」という回答が約5割に達した。昇給条件が決まっていない、または決まっていても開示されていないか知る機会がないなど、どうすれば昇給するのかが不明なままで働いていることが多いと考えられる。
Q3. 勤務を始めてからいくら昇給しましたか。時給額でお答えください。
全体の約半数が「99円までの昇給」で留まっており、300円以上昇給したのは5%程度、昇給していないという回答も3割あった(左)。勤務期間別にみると、勤続1年で約半数が、3年以上になると8割程度が昇給を経験している(右)。
Q4. スキルアップや昇給に対する意識について、近いものはどれですか。
「スキルアップに興味がある」という回答は全体の約4割を占めた。ただし、昇給につなげたいという回答は25%で、15%は仕事の充実感や満足度を重視したいという結果だった(左)。属性別にみると、スキルアップするしないに関わらず昇給を望む声は学生で最も多く(右①)、フリーターでは「スキルアップを望まず昇給はしたい」という回答が多くなっている(右②)。シニアは「現状維持を望み、スキルアップも昇給も求めない」という回答が4割となった(右③)。
Q5. 働き続けるためのモチベーションに影響するのはどんなことですか。
人間関係が良好であること、勤務スケジュールが柔軟であること、アクセスが良好であることが上位となり、時給額や昇給制度などよりも重視されている。交通アクセスを除くと店舗内マネジメントで対策可能な環境要因であることがわかる。
Q6. ご自身のキャリアについてどう考えていますか。最も近いものをひとつ選んでください。
最も多かったのは「現状維持」を望む声で全体の6割を占めた。正社員を希望する/業務の拡大やスキルアップを通して昇給・昇進を望むポジティブな回答は17%程度あり(赤枠)、属性別の傾向をみると、現在での職場でのキャリアアップを望むと回答したのは学生が22%で最も高く、シニアは11%と低い結果になった(右)。
また、昇給経験やスキルアップ評価制度の有無による有意差がみられるかを検証したところ、昇給経験がある場合は21%、スキルアップ評価制度がある場合は22%が今後の働き方にポジティブな回答をする傾向があった。スキルアップ評価による昇給を経験した場合は27%と、全体より10%高い結果となった。これらの結果から、昇給やスキルアップ評価制度は、キャリア形成の意識向上に影響すると考えられる。
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設問・結果 ②企業の本部管理職への電話調査
Q1. 現場スタッフの中で非正規社員が占める割合をお聞かせください。
約半数が76%以上と回答。非正規社員が現場の労働力の中枢となっていることがうかがえる結果となった。
Q2. 非正規社員のキャリアアップ制度はありますか。ある場合、内容と目的を教えて下さい。
キャリアアップ制度を設ける企業が8割に達した。内容として最も多いのは「正社員登用」で5割を超える。実施形態は面談を通じての評価が最も多く、次いでスキルチェックやテストを実施するという回答があった。また、制度の目的としてはモチベーションアップと人材確保がほぼ同じ割合で並び、非正規社員の戦力化が重要な課題であることがうかがえる結果となった。
Q3. 非正規社員へのスキルチェックの機会はありますか。 【単一回答】
ある場合、スキルチェックはどのような形式で行っていますか。 【複数回答】
8割が「スキルチェックの機会がある」と回答(左)。また、スキルチェックに使用する資料は「紙」が最多で、次にExcelなどの表計算ソフトを使うという回答が続いた。また、Excelで作ったスキルチェックシートを紙で印刷し、アルバイトは紙で回答するような形式も実例としてみられることから、資料作成ツールとしてのExcel、その出力先としての紙というあり方を踏まえると、両方を使用しているケースが9割程度あるとみられる。専用システムを使用している企業は少数で、手作業が多く発生していると考えられる。
Q4. 非正規社員が定着するためにしている取り組みはありますか。【単一回答】
7割が「非正規社員定着のための取り組みをしている」と回答。内容は、最も多かったのは時給や役職手当などの報酬面を充実させるという回答で3割を占めた。次に教育や研修制度を充実させているという回答が続き、育成にも注力している企業が多いことがわかった。
Q5. キャリアアップ制度を運用していく上での課題を教えてください。【複数回答】
キャリアアップ制度を運用していく上での課題は、本部・現場ともに「評価基準のバラつき」という回答が最多だった。評価項目自体は定まっていても、現場従業員ひとりひとりの技能や知識は定量化できるものばかりではないため、判定基準が属人化していたり、正しく評価できているかを検証する手段がないことが考えられる。Webアンケート調査のQ4では5割の非正規社員が「店長や上司の判断で昇給する」と回答しており、評価基準のバラつきが反映されているとも推察できる。現場側では評価側の時間確保も2番目の課題として挙げられており、実地作業のスムーズさや作業効率化も課題になっていると考えられる。
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総括
今回の調査から、非正規社員の昇給機会は約半数に限られており、昇給の決定が主に上司や店長の裁量によるという回答が同じく半数であったことが明らかになりました。これは昇給条件やキャリア形成の基準が不透明であることを示しています。さらに、キャリアの現状維持を望む声が6割を占める一方で、4割の従業員がスキルアップに興味を持っていることから、キャリアアップや評価制度の整備は生産性向上に有効であると言えます。また、制度を形骸化させないために運用の人的負荷を減らし、公平な評価基準を設けることが非正規社員のモチベーション向上や能力アップにつながると言えるでしょう。
また、7割の企業が人材定着を目的として昇給や福利厚生の充実、研修制度の強化に取り組んでいますが、短期的な従業員のモチベーションは人間関係の良さや勤務シフト、アクセスの便利さなどが重視されており、企業の施策と従業員の期待にやや乖離が見られます。特に人間関係については、不公平な評価やシフトが関係性を悪化させる発端となることもあるため、こちらでも明確で公平な基準に基づくマネジメントが求められます。
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本調査の総括責任者
できるをふやす研究所 所長
ClipLine株式会社 執行役員 植原 慶太
三菱総合研究所において、産官学のクライアントへのコンサルティング業務に従事。三菱地所へ出向し、再開発エリアのマネジメントなども手掛けた。2018年にClipLine株式会社に参画。カスタマーサクセス部門でコンサルタント、導入支援部長を務める。その後、カスタマーサクセス全体統括を経て執行役員に就任。横浜国立大学大学工学府 社会空間システム学専攻修士課程修了。
「できるをふやす研究所」Webサイトでは、その他サービス業界の実態調査や研究結果を掲載しております。
WebサイトURL:
https://service.clipline.com/labo/top
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ClipLine株式会社について
ミッション:「できる」をふやす
代表者 :代表取締役社長 高橋 勇人
設 立 :2013年7月11日
所在地 :〒101-0035 東京都千代田区神田紺屋町 15 グランファースト神田紺屋町 5F
資本金 :4億円(資本準備金含む。2023年8月31日現在)
企業URL :
https://corp.clipline.com/
サービスサイト:
https://service.clipline.com/
事業内容 :サービス業の潜在力を引き出す「ABILI(アビリ)」の開発・運営、及び経営コンサルティング
プレスリリースに関するお問合せや取材ご希望等につきましては、下記お問合せ先までお気軽にお問合わせください。
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本件に関するお問い合わせ
ClipLine株式会社 担当:井上 TEL:03-6809-3305 Email: pr@clipline.jp