事業を通して社会課題解決に取り組む、株式会社LIFULL(ライフル)(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:伊東祐司、東証プライム:2120、以下「LIFULL」)が運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」は、2024年における東京都や首都圏の新築マンションの平均価格※に続き、大阪府や京都府、兵庫県をはじめとした近畿圏の新築マンションの平均価格をもとに市区町村単位で調査し、発表します。
※「2024年東京23区の新築マンション1㎡あたりの価格上昇率」
https://lifull.com/news/33353/
首都圏以上に近畿圏の新築マンション価格は上昇基調!近畿圏でコストパフォーマンスの良い街は?
昨今、首都圏と同様に近畿圏でも資材価格の高騰に伴う不動産価格が上昇基調にあり、なかでも大阪市内や京都市内の中心部では1億円を超える新築マンションの分譲が相次いでいます。また、物件の価格上昇だけでなく、住宅ローン金利に影響がある長期金利の上昇も予想され、新築マンションの購入を検討する方にとって「いつ、どこで買うか」と難しい判断が必要です。
子育て世代をはじめ、よりコストパフォーマンスの良い周辺県に移住したいと考える方に向けて、近畿圏の2府4県における新築マンションの平均価格や㎡単価に着目し、比較しました。住宅市況の分析を行うLIFULL HOME’S総研チーフアナリストの中山登志朗の見解とあわせてまとめています。
【大阪市内編】平均㎡単価:福島区の200万円台は近畿圏内で最高額!東京23区内と同水準。
大阪市内の新築マンションの平均㎡単価1位は「大阪市福島区」の200.0万円で、前年の同じ時期と比べて213.3%と2倍以上の価格に達しています。平均価格も1億6,190万円とTOP10内で飛びぬけた価格でした。2位は「大阪市浪速区」の147.6万円(前期比104.6%)は、3位は「大阪市中央区」の132.7万円(同113.8%)が続きます。大阪市内の平均㎡単価は95.9万円ですが、TOP10は㎡単価100万円以上の区が多くランクインしています。
大阪市を除いたエリアの新築マンションの平均㎡単価1位は「池田市」の88.5万円(前期比101.3%)、2位は「茨木市」の86.2万円(同102.1%)と前期比100%超えの80万円台の市がランクインしました。
大阪府内の市区町村別での平均価格、平均㎡単価一覧もあわせてご覧ください。
<LIFULL HOME’S総研 中山の考察>
大阪駅北側の“うめきた”エリア開発が佳境に入って高額マンションが相次ぎ分譲
首都圏と同様に、近畿圏の中心である大阪市で新築マンションの価格が上昇しています。大阪市平均では対前年同期比で東京23区(14.0%上昇)を上回る15.3%の上昇を記録しており、平均㎡単価は95.5万円、平均価格も6,576万円と前年から842万円の上昇、北区、中央区では㎡単価が120万円超に達して、各々9.1%、13.8%価格が上昇しています。
また、最も価格上昇率が高かった福島区では“うめきた”の再開発に伴うタワーマンションの分譲の影響で前年比113.3%の大幅上昇を記録し、㎡単価は200.0万円、平均価格は前年の5,703万円から1億円以上急上昇して16,190万円に達しています。大阪24区のうち福島区と浪速区が平均で1億円を超える状況となっており、価格比較が可能な23区のうち16区で単価ベースの価格が上昇しています。東京23区と同じく、大阪市中心部でも新築マンション価格の上昇が顕著です。
一方、大阪市を除く府内の各自治体では政令市の堺市も含めて価格上昇率は平均2.6%に留まっており、㎡単価は70.2万円、平均価格は5,010万円と前年から専有面積が縮小した影響で258万円下落しており、対照的な結果となりました。府下で㎡単価が高いのは池田市の88.5万円で、以下茨木市、吹田市と北摂エリアが続きます。大阪でも東京と同じくファミリー層の郊外方面への転出が見られるのは、この新築マンション価格のギャップが影響しています。
【京都府編】東山区と中京区が平均㎡単価150万円超え&専有面積80㎡以上で平均価格も1億以上に!
京都府の新築マンションの平均㎡単価1位は「京都市東山区」の173.2万円、2位は「京都市中京区」の162.4万円(同期比167.2%)と上位の2区が160万円以上でした。3位には「京都市北区」の125.7万円(同119.4%)が続き、TOP3の平均価格は1億超えとなりました。また、京都府の平均㎡単価は大阪市内を上回る103.6万円で前期比130.6%という結果です。TOP4以下には平均㎡単価が前期比100%~130%のエリアがランクインし、京都市内の広い範囲で上昇していることが分かりました。
京都府内の市区町村別での平均価格、平均㎡単価一覧もあわせてご覧ください。
<LIFULL HOME’S総研 中山の考察>
大阪府を大きく上回る30.6%の価格急上昇、京都市中心部での分譲が活性化
京都府では、大阪府の4.3%、大阪市の15.3%をはるかに上回る30.6%もの価格上昇が発生しています。京都市平均は22.2%の上昇と京都府を下回るものの、価格水準の高い中京区で67.2%、左京区で33.5%、伏見区でも21.1%の価格上昇が認められ、京都市10区のうち6区で㎡単価が100万円を上回る水準に達しています。また、京都市北区、中京区、東山区で平均価格が1億円を突破しており、大阪市を上回る高価格帯での分譲が行われています。
京都市には景観条例があって高い建物や周囲の景観とそぐわない建物を建築することができませんが、規制をクリアする比較的小規模で希少性をアピールしたマンションの新規分譲が京都市中心部で活性化しており、高額であっても京都市内に拠点を持ちたい富裕層やインバウンドの需要を取り込んで販売が拡大し、価格急上昇を支える主な要因となっています。このような顕著な価格上昇だけが原因ではありませんが(オーバーツーリズムなども一因とされています)、京都市からはファミリー層が滋賀県方面へと転居する例が増えており、大阪市同様に人口の郊外化が発生しています。
さらに、この価格の急上昇は京都市に留まらず、長岡京市で25.3%(㎡単価101.2万円)、亀岡市で4.6%(同58.2万円)上昇しており、京都府内全域での新築マンション価格の上昇が明らかです。
【兵庫県編】TOP3は神戸市内が独占!平均㎡単価県内1位は灘区、平均価格は1.2億円!
兵庫県の新築マンションの平均㎡単価1位は「神戸市灘区」の137.5万円(前期比131.4%)でした。2位は「神戸市中央区」の131.9万円(同69.2%)、3位は「神戸市東灘区」の117.1万円(同121.0%)とTOPは神戸市内のエリアが占めています。兵庫県内の平均㎡単価は82.8万円と大阪府内と同じで、前期比102.3%と上昇しています。
兵庫県内の市区町村別での平均価格、平均㎡単価一覧もあわせてご覧ください。
<LIFULL HOME’S総研 中山の考察>
兵庫県内平均2.3%&神戸市10.0%の上昇、播州エリアでもマンション分譲活性化
兵庫県では県全域では前年比2.3%の上昇と、近畿圏のなかでは比較的落ち着いた価格推移ですが、中心エリアである神戸市では10.0%(㎡単価99.3万円)上昇しています。中心部の神戸市中央区では平均価格および坪単価が前年の69.2%(同131.9万円)と30%以上下落していますが、価格水準自体は極めて高く、2024年も平均価格が10,189万円と1億円を突破しています。同じく東灘区で21.0%、灘区で31.4%、西区でも20.0%上昇するなど、価格の上昇度合いは大阪、京都と比較しても遜色なく、資材価格や建設に関わる人件費の上昇が影響していることがわかります。
また阪神間の住宅地として人気の高い西宮市で12.3%(同100.9万円)、芦屋市でも5.5%(同102.3万円)上昇しており、近畿圏の主要市街地&主要都市での新築マンション価格の上昇は広範囲に渡っていると言えます。
この価格高騰を受けて、これまで専ら戸建エリアとして知られていた姫路市や加古川市、明石市など播州エリアでも、ここ数年新築マンションの供給が活性化し始めており、神戸市中心部およびその周辺での購入を検討していたファミリー層が、より安価な物件を求めて神戸市から西側へとニーズを移行させています。㎡単価は姫路市で58.4万円、加古川市で56.8万円、明石市でも61.0万円と60万円前後ですから、神戸市中心部と比較すると40%以上安価であることで価格訴求力が高まる状況です。
奈良県、滋賀県、和歌山県の市区町村別での平均価格、平均㎡単価一覧もあわせてご覧ください。
<総評>
近畿圏は首都圏の価格構造とは大きく異なり、首都圏が東京都心から各郊外方面に向けて遠ざかるほど価格が低下する“富士山型”の構造を示しているのに対して、近畿圏は京都~大阪~神戸の各中心部に価格の山がある“山脈型”になっています。ただし、近年では大阪市中心部でのタワーマンション開発が顕著に活性化したことで、大阪市中心部の価格の山が相対的に高くなり、京都および神戸の価格の山は低くなる傾向にありました。
今回の調査でも、大阪市中心部での新築マンション価格の山の高さは極めて高いと言わなければなりませんが、京都市および神戸市中心部の価格の山もほぼ同じレベルにまで上昇しており、昨今の円安による資材価格の高騰、建設業・運輸業の2024年問題に端を発する人件費の高騰、そして市街地中心部での安定的な地価の上昇によって、新築マンションの価格が汎地域的な上昇を示していることが明らかになりました。
この明確な価格上昇によって、各地域に居住するファミリー層は大阪、京都、神戸の各中心部から大阪南部、滋賀、播州エリアなどへと居住地域を拡散させる傾向が表れていますから、市街地中心部は単身若年層と富裕者層およびパワーカップル、郊外方面では子育てファミリー層が専ら居住するという形態が定着する可能性が高まっています。
LIFULL HOME’S総研 副所長/チーフアナリスト 中山登志朗(なかやま としあき)
出版社を経て、1998年から不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。2014年9月にHOME’S総研副所長に就任。不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間多数の不動産市況セミナーで講演。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。
調査概要
集計対象:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県内で分譲された新築マンションのうち、LIFULL HOME’Sに広告掲載された物件を行政区&自治体単位で集計
集計期間:2023年1~5月および2024年1月~5月を比較し対前期比を算出
集計条件:専有面積30㎡未満の住戸および平均専有面積が30㎡未満の分譲期は除外
集計方法:各マンションにつき、分譲期ごとに最高価格/面積と最低価格/面積を抽出し平均値を算出
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