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イベント概要
・開催概要:
豊かな自然に恵まれた三重県。中でも伊勢志摩から熊野古道へ続く海岸線は、イセエビやアワビ、サザエなどの海の幸の宝庫。そしてそれらが生きるのになくてはならないのが海藻たちです。その海藻が海の森となる藻場(もば)をつくり、多くの生物たちにとって海のゆりかごとなっています。
しかし近年、三重県沿岸では、海の森の減少が急速に進んでいます。原因の一つは、地球温暖化や黒潮の大蛇行に起因する海水温の上昇によって海藻を食べる魚(植食性魚類)が増えていることにあります。そして、これらの魚たちはあまり美味しくないイメージがあり、漁師さんも好んで水揚げせず、一般的に流通する機会も少ない魚です。
そこで私たちは、これらの魚たちを美味しく食するプロジェクトを通じて、漁師さんたちに積極的に水揚げしてもらい、海藻と魚たちの友好的なバランス関係を目指していきます。そしてこの取り組みを通じて、次世代を担う子どもたちと一緒に海から学び、考え、海といのちを未来へつないでいきます。
・日程:
2024年7月20日(土)9:45~15:00
・開催場所:
熊野市文化交流センター(三重県熊野市井戸町643-2)
・参加人数:
約100人
・協力団体:
熊野漁業協同組合、鳥羽磯部漁業協同組合、三重外湾漁業協同組合、熊野市、三重県教育委員会、三重大学、一般社団法人映像文化革新機構(one‘s)
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トークセッション① 「Ocean Blindness」
日本だけでなく世界で活躍している日本財団常務理事の海野光行氏と、地方創生がライフワークのフリーキャスター伊藤聡子さんによるトークセッションが、Ocean Blindnessの視点のもと繰り広げられました。
Ocean Blindnessの3つの意味合い
・無知/未知
言葉通り、私たちはまだまだ海を知らない。その上でみなさんと共有したいのは、海を知らないということは、海の可能性も知らない、ということ。まだ見ぬ海には、可能性が眠っています。プラスマイナスで言えば、プラスしかない可能性の宝庫ということ。
・無関心
そもそも関心が無いと、知ろうとも思えない。ゼロに何をかけても、ゼロ。そういう人たちを、いかに1にするかが重要。
・無視
海に問題があることを知っているけど、無かったことにしているということ。知りながら、知らないふりをしているということ。プラスマイナスで言えば、そもそもマイナスだったものをさらにマイナスにする行為。
セッションでのポイント
1.現在知られている海洋生物は約24万種でこれは海洋生物の10%に過ぎないと考えられていて、今回のフィールドである二木島湾でも同じように新種を発見できる仕組みができつつあること。
2.海底地形を調査するSeabed2030では、2016年の事業開始前は世界の海底地形図は6%しかわからなかったのを2024年6月時点で26.1%まで調査が進めることができた。海底地形図が分かることで津波や台風等の影響を予測するなどできるようになったこと。
3.魚種転換を把握しようと、現在全国の若手漁業者と協力して動こうとしている。三重県はまだ参加されてない。ぜひ参画を検討してほしい。
4.日本財団でおこなった海と日本人の意識調査では、海への興味が下がっている傾向が読み取れる。
ただし、高校生というフィルターをかけてみると、海が好きだと答えたのは52% 全体よりも8%も高い。
また、海洋問題を知っている割合が全体に比べて高く、環境問題を意識し行動している割合が全体39%に比べ高校生は50%と大きく上回っている。高校生はこのことからも海洋問題においては啓発される対象ではなく、むしろ一緒に啓発や課題解決を担うパートナー的存在と考えていいのではないか。
海と日本人の意識調査
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2024/07/new_inf_20240711_01.pdf
三重県は、愛着スコアが全国37位で、体験スコアが全国最下位、2022年2024年と同じ傾向であることが報告されると会場からはどよめきが起こりました。
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高校生との取組み連携・事前学習内容発表
今年度は、熊野市内の二木島という小さな漁村で、植食性魚類の商品開発をテーマに2泊3日の合宿を2回実施します。高校生には、日常の当たり前を問い直しながら、海の課題と向き合ってもらいます。
合宿で学んだことを通じて、高校生が地元の小中学生を対象にしたイベントを企画する設定にしております。課題を自分ごと化して、海の課題と向き合うモデルに挑戦していきます。
合宿に参加する高校
三重県立津高等学校、三重県立尾鷲高校、三重県立紀南高校、三重高等学校、新渡戸文化高等学校の5校
実施予定のプログラム
・アイゴという魚を使った商品開発
・商品開発とは何かプロから学ぶ勉強会
・実際に海で磯焼けの現場を観察(シュノーケリング)
・原料の確保の視点で、定置網漁という漁業体験
・調理や衛生の視点で、獲れた魚をさばいて自分たちの食事にします。
キックオフイベントでは、津高校、三重高校、新渡戸文化高校の生徒が、自身の学校の特色紹介に加え、事前学習で印象に残っていることや、合宿に向けて自分たちで考えたことや期待していることなどを発表しました。夜遅くまで準備してきた学校もあり、熱のこもった発表になりました。
3校の高校生に共通した内容としては、黒潮の大蛇行や、磯焼けの現状、さらには植食性魚類という分類の魚を事前学習で初めて知ったことが発表されていました。また、合宿では、漁業体験や魚をさばくことへの期待や、アイゴを使った商品開発を現地で学んでいくことや、9月の小中学生向けのイベントに向けて、しっかり学んでいきたいという意気込みが語られました。
海野氏は各学校の発表に対しコメントをした後、総括として高校生全体に向けて、「異分野との交流を大切にしてほしい。異分野同士の交流をすることで新しいアイデアが生まれる」「何のためにと常に立ち返ることを大切にしてほしい。そのためにも、今回の合宿のように外に出て、異なる価値観に触れることが大切である」「環境の変化を受けて適応する側ではなく、環境を変化させる側になってほしい」という3つのコメントをしました。
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トークセッション②
【美し国から「海」と日本の「食」を考える】をテーマに、各業界の専門家の方々をパネラーに迎え、シンポジウム形式で議論を展開しました。
登壇パネラー
・池田 陽子 氏 薬膳アテンダント、全日本サバ連合会広報担当サバジェンヌ
・大瀬 勇人 氏 大瀬勇商店
・吉田 恭平 氏 (一社)藻藍部(三井共同建設コンサルタント株式会社)
・前田 陽一 氏 コープ自然派事業連合商品部統括マネージャー
・野口 賢太 氏 コープ自然派事業連合商品部商品企画課マネージャー
・戸叶 綾子 氏 新渡戸文化高等学校・中学校教諭
セッションでのポイント
1.海の環境変化によって、長年日本人の食を支えてきた海の幸にも魚種転換や藻場の喪失など異変が見られること。
2.現代人はライフスタイルも多様化し、日本の伝統的な食生活が失われてきていること。
3.世界的な健康志向の高まりから日本食が見直され、サスティナブルなシーフード需要が右肩上がりに伸びていること。
4.日本ではとれる魚の量が減っており、魚介類の消費量も減少を続けていること。
議論の中では、利用シーンや使用する魚種の変更や対応、活用方法など、魚を食べてもらうために必要なこと、大人の意識、特に子育て世代などの心に響かせるための工夫、給食や調理実習などを通じての、海や魚に対する子どもたちの意識変容などこれから期待できることについて実績やアイデアが議論、検討されました。
会場からは活発に意見が飛び交い、現地で活躍する漁師さんや学校の教員など様々な方々に加え、高校生からも発言があり、予定の時間を超えてしまうハプニングもありました。
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参加者からの声
イベントに参加して良かった点
高校生:別の学校での取り組みが知れたため。自分の学校の強み、他の学校の強みがわかって今後の活動に活かせそう。
大人:アイゴを中心にここまでテーマが広がるかと、感心しました。
大人:流通より先の話はあまり聞くことがないので、勉強になった。
大人:講演やパネルディスカッション、映画などいろいろない手段を通じて、厳しい現状をよく理解出来たこと。
大人:真剣味があって良かった。
イベントに参加して学んだこと
高校生:商品開発をするときに留意すべき点。何がブームになりうるか(求められているのか)、その客層はどこなのか。
高校生:商品から環境に興味を持ってもらうには。
大人:海が近くにあるだけで、海が好きにはならないということ。
大人:磯焼けなどの海の課題。興味を、持ち続けること。
あなたが海に関する意識や行動を変えようと思う理由
高校生:さすがに海への親しみ度が三重県が全国最下位だとは思っておらず、納得いかなかったため。自分の周りは自然が好きな人が多いためそのようには感じていなかった。部活動で外部の人に発信する機会が多くあるので、そこで海の楽しさをもっと強調して伝えようと思う。
大人: 海をアクティブ(能動的)に意識する体験がなかなかできないから。危機感を共有できたから。三重県の海に対する意識が低すぎるから。拡がりを、感じました。
大人:「海と日本人」に関する意識調査の“海にまつわる体験スコア”で、2年連続で三重県が47都道府県中最下位であったこと。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人 旅する学校
URL:
https://japantabisurugakko.wixsite.com/my-site
活動内容:地域づくりをテーマにした先生向けの研修事業
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。