東急不動産ホールディングス株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:西川 弘典、以下「当社」)は、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures, 以下「TNFD」)※1の最終提言(以下「最終提言」)を参照した「TNFDレポート」(第3版)(以下、「本レポート」)を策定しましたので、お知らせいたします。
本レポートでは、TNFDの優先地域である「リゾート施設等13地域」を分析しており、当社の代表的なリゾート地域として長野県茅野市所在の大型複合リゾート「東急リゾートタウン蓼科」を取り上げ、TNFDが提示するフレームワークに沿って、当社グループの自然資本に関わるインパクトと依存、リスクと機会に関してとりまとめました。
今回「東急リゾートタウン蓼科」におけるリゾート開発・運営による自然へのインパクトを評価するため、生物多様性定量分析のスタートアップ 株式会社シンク・ネイチャー(以下「シンク・ネイチャー」)により、着工から現在に至る約50年間における森林面積割合の推移を衛星写真等により分析しました。その結果、開発当初や拡大期において、戸建て別荘・ヴィラ建設や道路敷設等による一時的な減少はあったものの、その後増加に転じ、全体として森林は開発前と比べて増加傾向にあり、現在は最も回復した水準にあることが分かるなど、当社グループのリゾート開発・運営がネイチャーポジティブに貢献していると評価されました。
2023年8月および2024年1月(第2版)に当社が国内不動産業で初めて策定した「TNFDレポート」では、都市事業、特に、注力する広域渋谷圏※2におけるネイチャーポジティブの取組みを開示しました。本レポートでは対象範囲を拡大し、リゾート事業におけるネイチャーポジティブを分析し、開示を追加しました。
※1 自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures, またはTNFD)とは、2021年に発足した自然関連の依存・インパクト、リスクと機会を適切に評価し、開示することを要請する国際的なタスクフォース。気候変動におけるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Climate-related Financial Disclosures))と連動したフレームワークを提示している。
※2「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)」とは、東急グループの渋谷まちづくり戦略において定めた、渋谷駅から半径2.5km圏のエリアを指しており、本レポートでは、当社グループとして広域渋谷圏を優先地域と定めています。
1.リゾート事業におけるネイチャーポジティブについて
(1)対象地域の概要
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https://www.tateshina-tokyu.com
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「東急リゾートタウン蓼科」は、長野県茅野市の北東部、蓼科高原のほぼ中央に位置し、標高1,100mから1,800mに立地する、総敷地面積約660ha(東京ドーム約140個分)の大型複合リゾートです。会員制リゾートホテルである東急ハーヴェストクラブ蓼科をはじめ、ホテル約250室、ゴルフ場(18ホール)、スキー場、別荘(戸建て、保養所、ヴィラ)約2,300区画、温泉施設、レストラン、店舗などを備えています。1974年に着工し、1978年には蓼科東急ゴルフコース開業、別荘地第1次販売を開始し、以後スキー場、テニスコート、ホテル等を開業、多彩なアクティビティや癒し、ワーケーションも含め、地域の自然と共生し、お客様が快適に豊かな自然を楽しむことができる、様々な施設・サービスを展開しています。
当社グループは、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする国際目標の30by30に賛同しており、2024年2月には「東急リゾートタウン蓼科」において、スキー場・ゴルフ場を含めたリゾート施設として初めて、環境省の「自然共生サイト」の認定を取得しました。
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2)自然への依存
自然に囲まれた「東急リゾートタウン蓼科」は、観光資源をはじめ様々な自然資源に依存していると考えられます。当社は、シンク・ネイチャーと連携し、生物種の分析を軸に、「東急リゾートタウン蓼科」の観光資源としての自然への依存について、詳細分析しました。
「東急リゾートタウン蓼科」に多く植生するカラマツは、日本固有種で、針葉樹で唯一の落葉樹であり、春は新緑、秋にはカラマツゴールドと呼ばれる紅葉を楽しむことができます。分析の結果、全国的にみて「東急リゾートタウン蓼科」はカラマツ分布の中心部に位置すること、カラマツ林で特徴的な植物として、ノリウツギやヤマブドウなど山裾に色合いをもたらす植物、美しい花を咲かせるアキノキリンソウなども豊富であることが分かりました。これらの豊かな植生と、それによる美しい景観が、「東急リゾートタウン蓼科」およびその周辺を、観光地としての魅力を高め、来訪客を含む関係人口の維持・増加などの側面で、事業や地域を支えているといえます。
「東急リゾートタウン蓼科」では、木材の地産地消に貢献する取り組みとして、カラマツの香りを生かした『フォレストキャンドル』や『ウッドディフューザー』などを販売するとともに、当社グループの統合マンションギャラリー「東急不動産 BRANZギャラリー 表参道」においては、「東急リゾートタウン蓼科」における森林保全活動で発生した間伐材をフローリングやデザイン家具で活用しています。また、地域の皆様が森や自然環境に理解を深め、美しく健全な森を未来につないでいくことを目的に、地域の子供たちを対象に「ブッシュクラフトと植樹体験」をテーマに、火おこし体験や植樹を実施しました。
(3)自然へのインパクト
次に、土地利用による自然へのインパクトの定量評価を行いました。インパクトを詳細に評価するため、当社の開発開始以降の森林面積の変化を、シンク・ネイチャーの協力のもと、1973年以降の空中写真や衛星画像を用い、AIなどでの機械学習も用いながら森林/非森林の区別を推定し、森林面積の変化傾向を定量的に分析しました。
定量評価結果は、1ページ目に記載の通り、開発当初と比較して現在では森林面積割合は増加傾向に転じており、当社グループのリゾート開発・運営がネイチャーポジティブに貢献していると評価されました。
さらに、森林を構成する樹木の樹齢が高齢化していることを踏まえ、当社グループでは2018年から森林経営計画による保全活動を行っており、今後の森林管理のあり方が生物多様性にもたらしうるインパクトを定量的に評価しました。その結果、本エリアは樹木の高齢化が進み、生物種数が減少するフェーズにあるものの、小規模な森林保全活動を長期的に行うことで、自然遷移に任せる方法と比べて生物種数の低下度合いを抑制できることが分かりました。
(4)気候変動への取り組み
「東急リゾートタウン蓼科」では、自然・生物多様性の保全を行うことで、お客様がゴルフやハイキングなどの際に豊かな自然を感じられるよう取り組むと同時に、気候変動への対策にもつなげています。2022年には、企業などが削減したCO2を国がクレジットとして認証する「J-クレジット制度」において、総合デベロッパーとしては初めて、森林経営活動に基づくJ-クレジットの認証を受けました。また今回の分析では、「東急リゾートタウン蓼科」の森林全体で1年あたり892tのCO2を吸収していることが分かり、これは240世帯分※の排出量に相当します。開発(1974年)以来約50年間の累積では7.4万tものCO2を吸収するなど、炭素吸収という面で、脱炭素社会の実現に貢献していることが評価されています。
※「日本国温室効果ガスインベントリ(2021年度)」データの世帯あたりCO2排出量から算定。
今後も引き続き、適切な森林管理により生物多様性の保全に取り組むとともに、お客様にも生物多様性や自然の重要性を理解いただきながら豊かなリゾートライフを送っていただけるよう、管理運営に努めてまいります。
TNFDレポートは以下のリンク内>TNFDレポート(第3版)をご覧ください。
https://tokyu-fudosan-hd-csr.disclosure.site/ja/environment/tnfd/
2.TNFDレポート策定にあたって
本レポートは、リゾート施設の運営管理を行う東急リゾーツ&ステイ株式会社をはじめとした東急不動産ホールディングスグループ各社*のほか、自然資本に関するコンサルティングを手掛けるMS&ADインターリスク総研株式会社、衛星データを含めた生物多様性ビッグデータ等を活用するスタートアップのシンク・ネイチャーなど、生物多様性に精通したパートナー企業と協業し策定しました。
■長期ビジョン「GROUP VISION 2030」でめざす、「環境経営」と「DX」の取り組み
当社は2021年に長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を発表しました。多様なグリーンの力で2030年にありたい姿を実現していく私たちの姿勢を表現する「WE ARE GREEN」をスローガンに、「環境経営」「DX」を全社方針として取り組んでいます。
当社グループの中核企業である東急不動産では、「環境先進企業」をめざして様々な取り組みを積極的に進めており、自社で大規模に展開する再生可能エネルギー事業を活かし、2022年12月には自社の事業所及び保有施設(※1)の使用電力の100%再生可能エネルギーへの切り替えを完了、2024年4月には、RE100達成(※2)がRE100事務局であるCDPより認定されました。RE100事務局によると、日本におけるRE100達成した事業会社(※3)としては初の認定となります。
今後も、自社における再エネ電力利用の継続と共に、コーポレートPPA等の再エネ電力供給により、お客様へ環境価値を提供し、事業を通じた脱炭素社会の実現を目指してまいります。
(※1)一部の共同事業案件などを除く
(※2)RE100 が認めるグリーンガスが国内市場に存在しないため、コジェネレーション自家発電による電力を除きます。
なお、東京ガス様 が供給するカーボンニュートラルガスを採用することで、脱炭素を実施しております。
(※3)金融機関を除く
東急不動産ホールディングス「GROUP VISION 2030」について
https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/group-vision-2030/
東急不動産ホールディングス「中期経営計画2025」について
https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/ir/mgtpolicy/mid-term-plan/