西陣織織元、株式会社桝屋髙尾(本社:京都市、代表:高尾朱子)が製作するオリジナル糸「ねん金糸」の織の残布から生まれた完全アップサイクルスーツが、2024年9月19日から23日にかけて開催される「ミラノ・ファッションウィーク2025SS(2025年春夏ミラノ・コレクション)」のランウェイで発表されることが決定しました。このお披露目は、完全アップサイクルのオーダーメイドスーツを展開する株式会社まるさんかくしかく(本社:大阪市北区、代表取締役:福井彩恵、以下、まるさんかくしかく)のミラノコレクション初出展に際し、当社の織物・当社提供の着物が採用され、同社の作品として発表されるものです。
伝統の手仕事の美と、端糸や裂地を利用したアップサイクルの取り組みを世界に
「ねん金糸」は、名古屋・徳川美術館の依頼で、家康公の遺品「ねん金袱紗」の再現を行った際に生まれた、独自開発の糸です。太さにばらつきのある手引きの真綿に金色の箔を巻きつけた糸で、金箔と絹真綿が混じり合って放つ柔らかさと輝きが特長です。その後、芯の真綿を様々な色に染め、帯地として発展させ「ねん金綴錦」と命名。桝屋高尾の代名詞となっています。
当社では2019年より、SDGsの取り組みとして、このねん金糸の残糸や残布を使ったアップサイクル商品に注力しています。今回のミラノコレクション出展は、こうした取り組みやねん金糸の美に共感したまるさんかくしかくの代表・福井氏より、出展作品の素材として残布提供の依頼を受けたことによるものです。ねん金糸の持つ日本特有の美、それを無駄にしないアップサイクルの取り組みが、ミラノコレクション出展につながりました。
なお、ミラノコレクション作品には、当社の提供材料で2体が発表されます。当社代表・高尾朱子が個人所有していた紫の着物、および当社提供の黒留袖が、スーツやタキシードに。ねん金綴錦の帯は、それぞれの襟の部分にアップサイクルされ、お披露目される予定です。
<株式会社まるさんかくしかく 代表取締役社長 福井彩恵のコメント>
当社は、「過度な生産と激しい消費を繰り返しながら、クローゼットに無駄を溜め込むアパレル業界のあり⽅を⾒直したいという」想いから、廃棄される高級カーテン生地をジャケットにアップサイクルする事業に取り組んでいます。
桝屋高尾さまのアップサイクル事業に関心を抱き、工場見学に伺った際、ねん金糸が持つ独特の風合い、手仕事の美に魅了されました。
箔が輝く部分と箔の隙間から真綿の色彩が覗く部分を併せ持ち、光によって色彩を変えるねん金糸。単色ではなく色が混じり合い、光によって様々な表現を内包するその美しさは、日本の風土に根付く神秘的で繊細な精神性と重なるものがあります。グローバルに活躍される方に、その日本の文化を身に付けていただけるアイテムとして届けたいと考えています。
<参考資料>
■ミラノ・ファッションウィーク2025SS
レディース 会期:2025年9月17日~9月23日
https://www.asahi.com/special/fashion/mfw2025ss/
■株式会社まるさんかくしかくについて
高級カーテン生地を使った完全アップサイクルオーダーメイドスーツ事業を手がける。製品はすべて完全アップサイクルであることが特長。取り繕うためや、着飾るためのスーツではなく、“自分が自分らしさを解放すること”が何よりも重要だと考え、「着ることは脱ぐこと」というコンセプトの元、多くの人の人生に寄り添いながらスーツを仕立てる。
URL:
https://marusankakushikaku.net/
■まるさんかくしかく 代表取締役 福井彩恵
幼少期から持っていた自身の疾患を克服した経験から、自分らしさに目覚めるスーツの仕立てと、障がい者支援に力を入れる。“どんな人生でも自分自身の捉え方、生き方次第で未来は輝き出す” そんな想いを発信しながらアパレル×福祉ブランドMUSUBIを立ち上げ。現在は、長くファッションを楽しむための循環型アパレルを研究実践する「サーキュラーアパレルラボ」を立ち上げ、アパレルの環境問題解決にも取り組んでいる。
■桝屋髙尾について
昭和初期、会長・弘の父親の代に兄弟二人で織屋を起業。その後店を分け、織屋を起業する以前の茶染め屋の時代の屋号である桝屋を継承し、桝屋髙尾と名付けました。会長・弘は19歳の頃に父親を亡くし、家業の道へと入ることになります。伯父である高尾菊次郎を師匠とし、その菊次郎の元には民芸運動の作家たちが多数出入りをしていたため、織物制作上の原点となる文化性が育まれました。
1978年には名古屋の徳川美術館より美しく輝く黄金の「ねん金袱紗」の復元の依頼を受けます。初めて見る素材が使われていたこの袱紗の復元を成功させた折に誕生したのが「ねん金糸」。この糸は太さにばらつきのある手紬真綿に金色の箔を巻きつけた糸で、箔が輝く部分と箔の隙間から真綿の色彩が覗く部分を併せ持った材料です。
その後、芯の真綿を様々な色に染め、色彩表現の幅を広げて帯地として発展させ「ねん金綴錦」と命名いたしました。さらに真綿だけではなく、箔の色も銀色や艶消し、漆を使用するなど時代に合わせて発展させてきました。
2016年には会長・弘の娘・朱子が社長に就任し、桝屋髙尾は新しい一歩を踏み出しました。また、近年では「ねん金糸」自体の美しさをもっと体感してほしいという思いから「ねん金糸」を使用した小物づくりやSDGsを意識し残糸や残り布などの再利用にも力を注いでいます。また世界的にも稀な150cm巾の手織りの機を制作し多目的な広幅生地制作にも取り組んでいます。