森永乳業株式会社と、インドネシア農業標準化機構(Badan Standardisasi Instrumen Pertanian)とインドネシア保健省からの指定を受けた医療機関RSAB Harapan Kita (RUMAH SAKIT ANAK DAN BUNDA HARAPAN KITA)の3者は、インドネシア国内で腸内細菌などの生物遺伝資源を用いた共同臨床研究を実施するための基本合意文書(Memorandum of Understanding 以下、MoU)を8月22日付けで締結したことをお知らせいたします。
生物多様性条約(Convention on Biological Diversity :CBD)及び名古屋議定書の批准国であるインドネシア(以下、同国)においては、海外から同国の生物遺伝資源を用いた調査・研究活動を行うためには、原則として同国の国内制度に基づき、政府の権限ある機関から事前に許可を取得し、その生物遺伝資源の利用から得た利益を公正かつ衡平に配分することが必要となります。この生物遺伝資源には腸内細菌も含まれ、この度のMoU締結により、当社が同国で腸内細菌の研究を開始することに権限機関と合意したことになります。さらに同国の大学や研究機関などとの共同研究体制を構築することで、ビフィズス菌をはじめとした機能性素材の臨床エビデンスの取得を推進していく考えです。また、同国に対しては共同研究により得られた臨床エビデンスの提供だけではなく、腸内細菌叢分析のための学術的・技術的支援の提供などを通じて、持続的な研究体制の構築・発展に寄与し、同国における乳幼児の健やかな成長に貢献します。
<背景>
ヒトの腸内には数百種類、およそ40兆個ともいわれる細菌が生息しています。こうした多種多様な細菌の集団は「腸内フローラ」や「腸内細菌叢」と呼ばれており、ヒトの健康と密接に関係していることが研究で明らかになってきています。当社は、育児用ミルクの研究開発を進める中で、母乳を飲む赤ちゃんの腸内にビフィズス菌が多いことに注目し、1960年代から50年以上にわたりビフィズス菌研究に取り組んでいます。また、1979 年にインドネシア向けに育児用ミルクの輸出を開始して以来、40年以上にわたり、ビフィズス菌などを配合した育児用ミルク事業を行って参りました。
当社は、森永乳業グループ10年ビジョンの一つに、「世界で独自の存在感を発揮できるグローバル企業へ(2029年3月期までに海外売上高比率15%以上)」を掲げ、海外事業方針の一つである「育児用ミルク事業」の強化により、アジアを中心に栄養インフラの構築に貢献することを掲げています。アジアの中でもインドネシアは、大きな育児用ミルク市場を持つ国の一つであり、市場規模は年間約22万トン※1と日本の約10倍に相当します。
※1 出典: ユーロモニター・インターナショナル調べ(2024年8月)
当社は「赤ちゃんにとって最良の栄養は母乳」との考えに基づき、母乳組成や赤ちゃんが必要とする栄養成分の研究、製造技術の開発と安全・安心の追求を続けています。これまで培ってきた知見を活かし、インドネシア事業のさらなる強化を図り、これからも同国の乳幼児の健やかな成長に貢献します。尚、本締結にあたっては平田機工株式会社“ぷらんつプロ”のコンサルティング支援を受けています。
参考情報
<森永乳業グループ インドネシア事業>
・1979年 インドネシア向けに育児用ミルクの輸出を開始
・1986年 インドネシア最大の製薬メーカー「カルベファルマ社」グループへ対する育児用ミルクの製造技術および森永乳業ブランドのライセンス事業を開始
・2005年 「カルベファルマ社」との合弁により、育児用ミルク製造会社「カルベモリナガインドネシア社(PT.Kalbe Morinaga Indonesia)」を設立
<森永乳業グループ 生物多様性ポリシー>
https://www.morinagamilk.co.jp/sustainability/policy/#biodiversity
<ビフィズス菌研究について>
ビフィズス菌は主にヒトや動物の腸内にすんでおり、酢酸や乳酸といった有機酸を生成し、腸内環境を整えます。ヨーグルトを作る際に乳酸菌が必要であることは広く知られていますが、全てのヨーグルトに善玉菌の「ビフィズス菌」が含まれているわけではありません。ビフィズス菌入りヨーグルトは、特別にビフィズス菌を加えて製造しています。ビフィズス菌は健康に役立つ善玉菌の代表格です。
森永乳業は、1969年に乳児から「ビフィズス菌BB536」を発見し、50年以上にわたりビフィズス菌、腸内フローラを研究しており、ヒトにすむビフィズス菌に関する臨床研究論文数では世界No.1です※2。
※2 ナレッジワイヤ社調べ、2024年1月時点(PubMed・医中誌WEBにて企業による研究論文数で世界一)