これまで多くの伝統芸能公演を制作、上演してきた国立劇場は、再整備期間中も伝統芸能の振興のため、都内各劇場にて主催公演を続けています。今回は初台・新国立劇場小劇場にて初めて文楽を上演いたします。普段は現代演劇を上演する劇場でご覧いただく文楽で、これまでに感じたことのない、新たな魅力をご堪能いただけます。
国立劇場では、初めて文楽をご覧になる方にも、その魅力を存分にお楽しみいただけるよう、出演者による解説と文楽を代表する名場面を上演する、文楽鑑賞教室を昭和44年(1969)から継続して開催しています。東京での文楽鑑賞教室はこれまで12月に上演してきましたが、今年は涼風が立ち始める9月に開催します。各回配役の異なるトリプルキャストで1日3回公演です。午後6時開演の公演は、「社会人のための文楽鑑賞教室」または「Discover BUNRAKU―外国人のための文楽鑑賞教室―」と題し、それぞれ観劇しやすい内容で構成されています。
報道各位におかれましては、本件の皆様への周知にご協力を賜りますようお願い申し上げます。
“櫓のお七”の名で親しまれている『伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)』
八百屋の娘・お七による江戸時代に実際に起きた放火事件を題材にして、菅専助らの合作で安永2年(1773)4月に初演されました。恋人のために命がけで半鐘を打つお七の姿を描いた、短い時間で文楽の醍醐味をご堪能いただける一幕です。
【火の見櫓の段】
八百屋の娘・お七は、恋人が探している刀剣をようやく手に入れることができました。しかし、すでに時間は夜、町の木戸は閉まり恋人へ渡すことができません。そこでお七は一計を案じます。火の見櫓の鐘を叩けば、火事が起こったこととなり、木戸が開くはず……。嘘が分かれば重罪ですが、恋人を思うお七は、意を決します。
太夫と三味線はお七の一途な思いを音楽にのせ、人形はお七の逸る気持ちをきめ細やかに表現します。盛り上がる音楽とともに、火の見櫓を登る人形の動きにもご注目ください。
楽しい実演付きで初めてでも楽しめる『解説 文楽の魅力』
技芸員が実演を交えながら文楽の魅力をお伝えします。
歌舞伎との“競演”にも注目『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』
延享2年(1745)7月、大坂・竹本座で初演されました。作者は、本作の翌年から“三大名作”(『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』)を手掛けたヒットメーカーたちの並木千柳、三好松洛、竹田小出雲による合作です。
延享元年に堺の魚屋が大坂の長町裏で人を殺した実在の事件を題材に、俠客たちと、その女房たちの“意気地(いきじ)”を描いた世話物です。世話物として初めての長篇となった作品といわれており、初演の大ヒット後すぐに歌舞伎化され、人形浄瑠璃・歌舞伎ともに人気演目として上演され続けています。
同じ新国立劇場の中劇場にて『夏祭浪花鑑』を9月歌舞伎公演(9月1日(日)~25日(水))でも同時期に上演いたします。文楽・歌舞伎の『夏祭浪花鑑』の“競演”にもご注目ください。
【釣船三婦内の段・長町裏の段】
大坂に暮らす団七は、恩ある家の磯之丞を支えることを心に決めています。
磯之丞の恋人・琴浦に横恋慕する悪侍が琴浦を奪おうとするので、磯之丞と琴浦は団七の仲間・三婦の家にかくまわれています。宵宮の祭囃子が聞こえてくるその日、義理と人としての道筋を大切にして生きる三婦夫婦、一寸徳兵衛の妻お辰たちが、磯之丞を守りぬくための策を考えます。お辰の壮絶な行動により、話の決着が着いたところ、団七の義父・義平次が、団七のところへ案内すると言って琴浦を連れてゆきました。しかし、入れ違いにやってきた団七は心当たりがありません。あろうことか、義平次は悪侍に加担して琴浦を誘拐したのです。宵闇の中、やっと追いついた団七は、全身全霊で義平次を説得しようとしますが……。
うだるような暑さ、そして人いきれが感じられる大坂の市井の雰囲気に加え、祭りへの期待でさんざめく囃子が、大切な義理を守るために懸命に汗を流す人々の姿を一層際立たせます。この物語はテンポの緩急に富んだ展開が巧みで、そしてクライマックスには緊迫感が最高潮に達し息つく余裕を与えません。ステージと客席が近い新国立劇場ならではの緊張感や、舞台をつとめる出演者の息遣いも感じることができます。貴重な機会に、これまでにない『夏祭浪花鑑』の世界をお楽しみください。
無料のプログラムもついて、お手頃な価格で文楽の魅力を存分にご堪能いただける文楽鑑賞教室。
16日(月・祝)、18日(水)、19日(木)、20日(金)午後6時開演の「Discover BUNRAKU―外国人のための文楽鑑賞教室―」では、英語を交えた特別版の解説と日本語・英語のイヤホンガイドや6か国語のプログラムを無料でご利用いただけます。
ぜひともこの機会に、文楽の魅力に触れてみてください!
お得な「夏祭セット割」をご用意!
同じ新国立劇場の中劇場にて『夏祭浪花鑑』を9月歌舞伎公演(9月1日(日)~25日(水))でも同時上演いたします。
『夏祭浪花鑑』は文楽で初演し、間もなく歌舞伎に移されて人気演目となった作品です。国立劇場ならではの企画で、名作の醍醐味を文楽と歌舞伎の両ジャンルでご堪能いただけます。
このたび、手軽に観くらべることのできるお得なセット割をご用意しました。この機会にぜひ、文楽と歌舞伎もお楽しみください。
9月文楽鑑賞教室・社会人のための文楽鑑賞教室と9月歌舞伎公演との同時購入で、1割引となります。
例えば…
文楽と歌舞伎(1等席)を各1枚で
正価 18,000円 → 16,200円
歌舞伎公演(13時開演)と社会人のための文楽鑑賞教室(18時開演)のセットでは、同じ日に観劇することも可能です。
初台・新国立劇場小劇場での初めてとなる文楽の公演
老朽化等による再整備事業のため、令和5年10月末日をもって初代国立劇場は57年の歴史に幕を閉じました。閉場後も他劇場にて主催公演を引き続き行っています。今回は初台・新国立劇場小劇場で初の文楽を上演いたします。
新国立劇場は、オペラ・バレエ・演劇といった現代舞台芸術を上演する劇場として、平成9年の開場以来、話題の公演を数多く上演し続けています。小劇場は、客席も含め劇場全体の床がすべて可動式になっており、この可動床を上下させることによって、演出プランに合わせて自由に劇空間を創造できるオープンスペースで、演劇の公演を中心に様々な舞台が上演されています。
その小劇場で文楽の公演が上演されるのは初めて。ステージと客席が近い新国立劇場小劇場ならではの臨場感や、舞台をつとめる出演者の息遣いも感じることができます。現代舞台芸術の殿堂である新国立劇場での文楽鑑賞教室。一味も二味も違う文楽の新たな一面は、文楽ファン・演劇ファンともに注目です。
国立劇場 令和6年9月文楽鑑賞教室
伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)
火の見櫓の段
解説 文楽の魅力
夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)
釣船三婦内の段/長町裏の段
【公演日程】
令和6年9月7日(土)~22日(日)※13日(金)は休演
午前11時30分開演/午後2時30分開演
社会人のための文楽鑑賞教室
午後6時開演 ※16日(月・祝)、18日(水)、19日(木)、20日(金)を除く
※日本語プログラム付き。
主催=独立行政法人日本芸術文化振興会
Discover BUNRAKU-外国人のための文楽鑑賞教室-
令和6年9月16日(月・祝)、18日(水)、19日(木)、20日(金) 午後6時開演
※英語を交えた特別版の解説となります。
※日本語・英語のイヤホンガイド、6か国語のプログラム付き。
主催=独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
令和6年度日本博2.0事業(委託型)
【料金[各部・税込]】
学生1,800円/一般6,000円
※障害者の方と介護者1名は2割引です(他の割引との併用不可)。
※車椅子用スペースがございます。
※インターネットでも学生料金・障害者割引による申し込みが可能です。
※残席がある場合、公演会場にて当日券のみ窓口販売いたします
(当日券窓口 午前10時30分~各部開演前)。
【会場】
新国立劇場 小劇場 (〒151-0071 東京都渋谷区本町1-1-1)
京王新線「初台駅」 中央口直結 (都営新宿線乗り入れ。京王線は止まりません)
国立劇場について
日本の伝統芸能の保存及び振興を目的として昭和41年(1966)に開場。外観は奈良の正倉院の校倉造りを模している。大劇場・小劇場・演芸場・伝統芸能情報館を備え、多種多様な日本の伝統芸能を鑑賞できる。初心者や外国人を対象とした解説付きの鑑賞教室も開催している。
老朽化による再整備事業のため、令和5年(2023)10月末に閉館。閉館後も都内各劇場のご協力により、主催公演を継続して上演している。
所在地:東京都千代田区隼町4-1
03-3265-7411(代表)
プレスリリースはこちらから