本書は、燃え殻さんによる最初の小説であり25万部を突破したベストセラーでもある『ボクたちはみんな大人になれなかった』の「その後の物語」として書かれました。
著者の燃え殻さんは『ボクたちはみんな大人になれなかった』が、味付けの濃い1曲の長い曲だとしたら、今作は「アルバムの1曲、バラードのような静かな物語」だと言います。どんな夏も、人生においてたった一度しかない、特別な「ただの夏」。このひと夏を通して、主人公はゆるやかに大人になっていきます。
世界の「ふつう」から爪弾きにされ、噓で埋め尽くされた日常を生き、それでも前に向かって手を伸ばさずにはいられない。その先にどうか一握りの希望がありますように――。しずかな夜に、そっと寄り添う物語です。
◾️音楽家・菊地成孔さんの解説も収録!
『これはただの夏』は、菊地成孔さんがプロデュースしたソロユニット<けもの>の青羊さんの楽曲「ただの夏」に触察されて生まれた作品です。文庫化にあたり、その菊地成孔さんに解説を書きおろしていただきました。冒頭から「非常に正直に申し上げて現在後悔しています大変に難しい仕事を随分と気軽に引き受けてしまったなと反省しています」と始まるこちらの解説も、必読です。
◾️「マカロニえんぴつ」のはっとりさんから推薦コメントをいただきました!(一部紹介いたします)
あの夏、素直に会いに行ってただ一緒に泣いてやればよかった。本当はそうしたかったのにできなかった全てのボクは、この小説を読んで【自分ごと】にせずにはいられないだろう。前作『ボクたちはみんな大人になれなかった』は全力で独り占めしたかったのに対し、この小説は、ここに描かれている数日は、今すぐ誰かに伝えたくなる。
「もう遅いと思うには、きっとまだ早い」と。
はっとり(マカロニえんぴつVo/Gt)
◾️書籍内容紹介文
その瞬間、手にしたかったものが、僕の目の前を駆け抜けていったような気がした――。テレビ制作会社に勤める秋吉、知人の結婚式で出会った風俗嬢の優香、育児放棄気味の母親と暮らす十歳の明菜、そして末期癌を患う秋吉の仕事仲間、大関。長い人生の中でのほんの一瞬、四人は絶妙な距離を保ちながら、ひと夏を過ごす。噓で埋めつくされた日常の中で願いのようにチカリと光る「本当」の物語。
◾️著者紹介
燃え殻(もえがら)
1973(昭和48)年神奈川県横浜市生れ。2017(平成29)年、『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー。同作はNetflixで映画化、またエッセイ集『すべて忘れてしまうから』はDisney+とテレビ東京でドラマ化され、ほかにも映像化、舞台化が相次ぐ。著書に、小説『これはただの夏』『湯布院奇行』、エッセイ集『それでも日々はつづくから』『ブルー ハワイ』『断片的回顧録』『夢に迷ってタクシーを呼んだ』などがある。
◾️書誌情報
【書名】これはただの夏
【著者名】燃え殻
【発売日】2024年8月28日 電子書籍の配信あり
【造本】新潮文庫
【定価】649円(税込)
【ISBN】978-4-10-100354-2