株式会社河出書房新社(本社:東京都新宿区 代表取締役:小野寺優)は、バーバラ・ブッチャー著『死体と話す NY死体調査官が見た5000の死』(原題:WHAT THE DEAD KNOW – Leaning about Life as a New York Death Investigator)を2024年8月27日に発売しました。
遺体はいろいろなことを教えてくれる。わたしたちはただそれを聞き取るだけでいいのだ。
(本文より)
著者のバーバラ・ブッチャーは、1992年ニューヨーク市検視局に入局後、2015年の退局までの23年間、死体調査官(法医学調査官)としてキャリアを重ねてきました。この間、著者は、殺人による680人を含む5000人以上の死因を調査。二重殺人の事件、陰惨な自殺、そして未成年者のレイプ被害者の殺人事件など、毎日さまざまな死因の調査に携わりました。
さらに、全米最大の殺人事件とも言える9・11、アメリカ同時多発テロ事件(2001年)やロンドン同時爆破事件(2005年)、アメリカン航空587便墜落事故(2001年)、スマトラ島沖地震(2004年)などの事件や事故・災害についても担当しました。特に9・11の凄まじい状況については、本書でも克明に描かれています。
■「死体調査官」という仕事。そして、著者がこの仕事を選んだ理由
著者が死体調査官となったきっかけは、自身のアルコール依存症。これを治療するために行った職業訓練で死体調査官という仕事の存在を知りました。著者はもともと医師助手に従事し、医学的知識もあり、何より死体を見ても動揺しないという適性があったため、そのまま死体調査官という仕事を選びました。
死体調査官の仕事とは、死体の死因とその経緯を特定することで、医学的知識のほか、調査や法医学の知識も必要です。これらの知識とスキルを持って現場検証を行い、死に至った原因を探っていきます。その後、死体は監察医に送られてのちに検死が行われますが、より正確な検死のためには死体調査官による事前の調査報告が重要な意味を持ってきます。
たとえば、物的証拠に基づいて男が六階に上がったものと「合理的に推測できる」。「見た限りでは」男は飛び降りた「ようだ」。男の負傷状態は、高いところから落ちた負傷と考えると「矛盾がない」。実際に何が起きたかを知るのは故人だけなのだから、わたしたちは調査結果と状況に合致する仮説を立てなければならない。証拠から読み取れるものを解釈し、そこから死因の情報を突き止める——
それがわたしの仕事だ。(本文より)
著者は、幼い頃からうつ病と自殺願望に悩まされてきたため、これを抑えるためにアルコールに依存するようになりました。自身が精神的に深く苦しんだ経験を持つことから、弱者や貧者に対しての著者の視点は優しさに包まれています。
そのため、単に死体の調査だけではなく、死者の個人的な背景や、周囲の人々、死者を取り巻く社会的な問題などについて書かれていることも、本書の大きな魅力となっています。本書に登場する遺体は、死を通して、生きるとは何かという問いを読者に投げかけています。
■本書への賛辞
彼女の物語と洞察は、息をのむほど正直で、思いやりがあり、生々しい。本書は、手放せない作品であり、必読の書であり、古典となるべく運命づけられている。
——パトリシア・コーンウェル(推理作家。『検屍官』シリーズなど)
バーバラ・ブッチャーの説得力のある回顧録は、犯罪現場の裏で起こる本当にショッキングなことを読者に垣間見せてくれる。驚きと洞察に満ちた内容で、真実の犯罪のファンや、監察医になることが本当はどんなことなのかを理解したい人にぴったりだ。
——カリン・スローター(ニューヨーク・タイムズ、世界的ベストセラー作家)
バーバラ・ブッチャーは、ニューヨーク市の監察医務院での数十年にわたる経験から得たエピソードをもとに、死と喪失について淡々と綴り、また、彼女自身の人生の挑戦と回復について正直かつ驚くべきユーモアを持って書いている。
——アラフェア・バーク(ニューヨーク・タイムズ、ベストセラー『Find Me』著者)
ブッチャーは、死体に対するのと同じ鋭敏さと好奇心をもって、自分自身の弱さとも闘った。胸を打つほど美しい回顧録だ。
——カーカス・レビュー(アメリカの有力書評メディア)
ダークなユーモアと故人的な苦悩を巧みに統合し、医療調査官という仕事の内側を描き出している。
——パブリッシャーズ・ウィークリー(アメリカの有力書評メディア)
■目次
著者による注
1章 縊死した男の怒り
2章 復活
3章 遺体の転がし方
4章 シリアルキラー
5章 ホワイトハウス・ホテル
6章 家で試してはいけないこと
7章 タイミングがすべて
8章 童顔の殺戮者
9章 ニューヨークの裏の顔
10章 多様な人生
11章 殺す者と殺される者
12章 誕生日の出来事
13章 殺人――他人に殺されるということ
14章 自殺――自分を殺すということ
15章 同時多発テロ事件
16章 何としてでも
17章 それが権力争いというものだ
18章 どん底、そして浮上
エピローグ
謝辞
■内容紹介
自殺、孤独死、シリアルキラー、そして 9・11。アルコール依存症とうつ病を乗り越え、死体捜査官となった著者が、あらゆる死と向き合った22年間。パトリシア・コーンウェル激賞!
■著者紹介
バーバラ・ブッチャー (Barbara Butcher)
10代の頃からアルコール依存症に苦しみ、その治療中の復職プログラムにおいて、死体調査官という仕事に出会う。1992年、ニューヨーク市検視局に入局。以後23年にわたって勤務し、同局の法科学研修プログラムの主任および管理者などを務めた。そこでは5000人以上の死因を調査し、うち680人が殺人だった。また9・11(2001年)、スマトラ島沖地震(2004年)、ロンドン同時爆破事件(2005年)、アメリカン航空587便墜落事故(2001年)などの災害も担当した。キャリアを通して、調査、証拠・身元確認、災害管理、DNA研究所の管理・指導にあたり、2015年退局。現在は、ポッドキャストへの出演、死亡事故管理に関する講演など活動の幅を拡げている。
■書誌情報
書名:死体と話す
サブタイトル:NY死体調査官が見た5000の死
著者:バーバラ・ブッチャー
訳者:福井久美子
仕様:四六変型判/並製/320ページ
初版発売日:2024年8月27日
定価:2640円(本体2400円)
ISBN:978-4-309-23161-7
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309231617/
出版社:河出書房新社