大正10年(1921)創業の老舗ハンコ専門店、有限会社 文福堂印房(東京都品川区)ではこのたび、外国人客からのハンコの注文が累計2,000本を突破しました。また、これを記念して日本語版・英語版のオンラインギャラリーも開設しました。
ハンコが最短30~60分で完成、注文したその日に受け取れる同店のスピード製作サービスは以前から多くの在留外国人に利用されてきましたが、近年ではそれに加えて、外国人観光客からの注文が急増しています。
特に外国人観光客の入国制限が大幅に緩和された2023年春以降、東京・大井町にある同店を訪れる外国人観光客の数はコロナ禍以前のそれを上回っています。同店の店内には出来上がったハンコを手にして喜ぶ外国人客の写真が数多く掲示されています。
■漢字とアルファベットが彫られたハンコが人気
外国人観光客に人気の商品は、同店が2018年から受注販売を開始した「デュアルハンコ」です。その大きな特徴は漢字とアルファベットの両方が彫られている点です。
・デュアルハンコ 日本語版URL https://dual-hanko.jp/
・デュアルハンコ 英語版URL https://dual-hanko.jp/e-top.html
同店の三代目店主・松崎氏は「デュアルハンコ」人気の秘密をこう語ります。「漢字やカタカナだけのハンコは、日本語が読めない人には何と彫られてあるかまったくわかりません。しかしアルファベットが彫られていることで、外国の方でも誰のハンコかひと目でわかります」
■選ばれる漢字の傾向
外国人客は「デュアルハンコ」を来店で注文する際、漢字の音と意味が一覧できる同店特製のファイルを参考に、自分好みの漢字を楽しみながら選んでいきます。
これまで数百人の外国人観光客と接してきた松崎氏は、彼らが好んで選ぶ漢字には傾向があるといいます。「多くの場合、慈・恵・理・真など、良い意味の動詞や形容詞を表す漢字が選ばれます。さらに私としては、できるだけ全体で何らかのストーリー性を持つ漢字の組合せをお薦めしています。たとえば、ジーニーという名前には『慈仁』ですね。この2つの漢字の組合せは『博愛と慈しみ』という素晴らしい意味を持ちます」
■ハンコ作例ギャラリー開設
「デュアルハンコ」は外国人観光客の以外にも、同店オンラインショップを通じて、全国各地の日本人客や企業から数多く受注しています。その多くは以下のようなニーズです。
・ビジネスや研修で来日した外国人への記念品
・海外出張の際、現地の取引先外国人へのお土産
・海外留学のホストファミリーへのお礼
オンライン注文の際、使う漢字の選定を同店に一任することもできますが、大切な方へのプレゼントなので、できれば自分で漢字を選びたいと希望する日本人発注者も少なくありません。
そこで同店では、外国人からのハンコ注文が累計2,000本を突破したことを記念して、「デュアルハンコ」約700点の作例を、使用する漢字の英語の意味もあわせて展示するギャラリーを開設しました。
・日本語版ギャラリーURL https://dual-hanko.jp/gallery-j.html
・英語版ギャラリーURL https://dual-hanko.jp/gallery-e.html
松崎氏はこのギャラリーについて「名前を漢字で表すことに興味を持つ外国の方のほか、外国人の友人・知人・顧客などにハンコを贈りたいと考える日本人のお客様の参考にもなれば幸いです」と語ります。
■最短1本60分で完成
「デュアルハンコ」は丸型と角型の2種類、それぞれ18ミリの標準サイズと21ミリの大型サイズがあり、素材も東アジア産アカネ、日本国内産柘(つげ)の他、楓(かえで)や樺の圧縮加工によるエコ素材など、幅広く取り揃えています。
価格はサイズ・素材によって異なりますが、丸型は5,500円(税込)~、角型は6,050円(税込)~。なお丸型はアルファベット7文字まで、角型はアルファベット12文字まで入ります。また丸型・角型のいずれも、日本的な図柄が織り込まれた布製ポーチが付属します。
製作所要時間は受注状況にもよりますが、基本的には1点につき約60分で完成します。注文点数が多い場合でも宿泊先のホテルが都内であれば同店が直接届けます。「外国人観光客はスケジュールが決まっているので、迅速な製作は必須です。ホテルへの配送も運送業者経由でなく、自分で届けた方が早いですし、それもサービスの一環です」と松崎氏は胸を張ります。
■東京で初めての漢字体験
同店の訪日観光客向け商品はデュアルハンコだけではありません。昨夏からは「東京で初めての漢字体験」と題したイベントも開催しています。
外国人客が自分で選んだ漢字1文字を、書き順アプリを見ながら実際に筆ペンで書くというもので、何度かの練習書きの後、専用紙に本番書きします。同店はそれを白黒反転させて18ミリ角のハンコに約15分で彫刻、書いた漢字の下にその意味・作者名・日付を記入し、そこに自分が書いた漢字のハンコを捺して完成です。
額装された完成作品を見た外国人客は「自分が生まれて初めて筆ペン書いた漢字が、こうしてハンコとともに作品になるなんて、とってもクールで一生の思い出になる」と大満足です。
本イベントは専用フォームから完全予約制で所要時間は約60分、料金は11,000円(税込)。また完成作品は同店ホームページ中のギャラリーに掲載されます。
・漢字体験 日本語版URL https://dual-hanko.jp/kanji-j.html
・漢字体験 英語版URL https://dual-hanko.jp/kanji.html
■3色記念スタンプも人気
「日本の記念スタンプ、集めていますか?」
来店した外国人観光客に松崎氏は決まってそう尋ねます。「スタンプを捺すという習慣を持たない外国人は、御朱印をはじめとする日本のスタンプに興味津々です。実際に多くの訪日観光客がスタンプ帳を持ち歩き、観光地や駅などのスタンプを記念に捺して楽しんでいます。中には居酒屋やラーメン店などの領収書に捺す、私たち日本人から見ればごく普通の住所スタンプを、記念スタンプとしてに捺してもらう外国人観光客もいるほどです」
そこで、スタンプも扱うハンコ専門店として同店が開発・商品化したのが「ハンコジャポニスム」という名の実にユニークな3色スタンプセットです。それぞれのスタンプを付属のL字型ガイド定規の左隅に沿って捺すことで、色鮮やかで美しい3色のスタンプ印影ができあがります。
日本の伝統芸術である木版画の「色を重ねてひとつの絵を完成させる」手法を簡略化させたこの3色スタンプセットは、忍者・サムライ・着物女性など日本的な人物をデザインした10パターン。さらにスタンプの一部に店名を入れることで、外国人観光客にとってとても印象深い記念スタンプになります。
同店では店名入りの2種類のスタンプを用意して実際に外国人客に捺印してもらうサービスを実施中で「こんな多色刷りの美しいスタンプは見たことない」と大好評です。
「日本滞在中に多くの記念スタンプを気軽に捺すことを通じて、日本独自の捺印文化に親しんで欲しい」と話す松崎氏は、スタンプ帳を持ち合わせていない外国人客には簡易スタンプ帳を無料でプレゼントしています。
また、この3色スタンプセット「ハンコジャポニスム」は、ホテルや施設名を入れる特注加工も可能で、すでに東京都内の2つのホテルが宿泊客向け記念スタンプとして設置しています。
■外国人客に救われた
2020年のコロナ禍を契機とした「脱ハンコ」と「オフィスDX化(デジタルトランスフォーメーション)」の流れにより、国内のハンコ需要は大きく落ち込みました。「当店も、それまで長年にわたって毎月安定的にいただいてきた企業数社からのハンコ注文がここ2年でほぼゼロになり、一時は真剣に廃業を考えざるを得ない最悪の状況でした」と松崎氏は述懐します。
「その危機を救ってくださったのは、皮肉にも本国では日常生活でハンコをまったく必要としない外国のお客様方でした。現在では訪日・在留を合わせた外国人のお客様からの注文が全体の7割以上にも上っています」
そして松崎氏はこう結びます。「多忙なスケジュールの合間を縫ってわざわざハンコを注文しにご来店くださる外国人観光客の方々には、最後にちょっとした楽しいサプライズも用意しています。皆さん大喜びで写真や動画を撮ってお帰りになります。当店でのハンコ購入とプチ日本文化体験を、印象深い思い出の1つに加えていただければ最高にうれしいです」
ただ単にハンコを売るだけではない同店のこうした「おもてなし」の姿勢はGoogleの口コミでも外国人客から高く評価され、それがまた新たな外国人観光客の来店につながっています。
【店舗概要】
■店名 :はんこランド東京
■所在地:〒140-0011 東京都品川区東大井5-7-12
■電話 :03-3472-5171
■最寄駅:JR京浜東北線・りんかい線・東急大井町線「大井町駅」徒歩3分
【オンラインサイト】
■デュアルハンコ オンラインショップ : https://dualhanko.easy-myshop.jp/
■有限会社 文福堂印房オフィシャルサイト: https://bunbukudo.jp/
■はんこランド東京オフィシャルサイト : https://hankoland.com/
■ハンコジャポニスム オンラインサイト : https://hankojaponism.jp/
※Dual Hankoは有限会社 文福堂印房の登録商標です。
※HANKO JAPONISMは有限会社 文福堂印房の登録商標です。
※デュアルハンコのデザインは有限会社 文福堂印房により意匠登録されています。