京都府立医科大学 生体免疫栄養学講座(フジッコ株式会社(本社:神戸市中央区/代表取締役社長執行役員:福井正一)が参画する寄附講座)、 内藤裕二教授、渡辺真通研究員らの研究グループは、高齢長寿地域において「豆類」の摂取がフレイルリスクの低下と関連することを明らかにしました。この研究成果は、日本食品科学工学会第71回大会(会期:2024年8月29日(木)~31日(土))において発表しました。
■研究概要
フレイルとは加齢に伴い筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい健康と要介護の間の虚弱な状態を指します。近年、日本では急速に高齢化が進行し、80歳以上の約3割(※1)が要介護・要支援者を占める中、健常な状態への回復が見込めるフレイル段階での予防および早期改善は、健康寿命延伸に向けた重要な課題と考えられます。本研究では日本有数の健康長寿地域である京丹後地域(※2)の食習慣に着目し、京丹後市在住の高齢者786名(年齢中央値72歳、男性317名、女性469名)を解析対象にした横断疫学研究を行いました。
■研究結果
その結果、男女ともにフレイル群と比べ、健常群において豆類および緑黄色野菜以外の野菜(根菜や海藻、きのこを含む)の摂取量が有意に高く、男性において豆類の摂取量増加とフレイルリスクの低下に有意な関連が認められました(図1)。
また、栄養面では植物性タンパク質および食物繊維の摂取量増加とフレイルリスクの低下に有意な関連が認められました(図2)。
フレイル予防においてはタンパク質の摂取がこれまで推奨されていますが、近年の研究では食物繊維の摂取が握力の増加と相関し、加齢による骨格筋量の減少を抑制する可能性が報告されています(※3)。豆類はタンパク質と食物繊維の両方を豊富に含む食品であることから、豆類の摂取がフレイルリスクの低下に重要であることが示唆されました。
さらに、階層型クラスター分析(※4)により京丹後住民の食事パターンを6つのグループに分類し、それぞれフレイルの割合を比較したところ、豆類、いも類、緑黄色野菜、緑黄色野菜以外の野菜および魚介類を高頻度に摂取するグループ(67名、全体の8.5%)において最もフレイルの割合が低いことが明らかになりました。
以上より健康長寿地域において豆類を中心とした食事がフレイルリスクを低下させる可能性が示されました。特に男性では1日約60 g以上の豆類の摂取によりフレイルリスクの有意な低下が見られました。本研究は横断研究のため因果関係を明らかにする必要がありますが、後期高齢者の著しい増加が見込まれている日本においては、今後ますますフレイルへの予防対策が重要となってくることが予想されます。フジッコでは、【フジッコわくわくフォーラム~お豆で“腸”元気!】と題したフォーラム(10/2 東京、10/8 大阪開催予定)などを通じて、フレイル対策として「豆類」の活用をより広めていき、全ての人々の健康が達成されるよう努めてまいります。
【注釈・引用文献】
(※1)厚生労働省介護給付費等実態調査月報 厚生労働省(2015)
(※2)京都府の最北部に位置する地域(京丹後市、宮津市、与謝野町、伊根町)で、高齢化率が非常に高い地域ながら同地域の100歳以上の百寿者と呼ばれる長寿者の割合が全国平均の約3倍(10万人あたり)を誇る日本有数の健康長寿地域として知られる。
(※3)Frampton J et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle, 12(6): 2134–2144 (2021)
(※4)対象となるデータ群の中から数学的に類似しているもの同士に分類し、徐々に集団の数を少なくしていく手法。
■発表の情報
学会:日本食品科学工学会第71回大会(https://jsfst.smoosy.atlas.jp/ja)
会期:2024年8月29日~31日
場所:名城大学天白キャンパス
演題番号:3Fp-01
演題名:高齢長寿地域における食品群別摂取とフレイルとの関連
発表者: *渡辺 真通1,2、小山 晃英3、水島 かつら2、安田 剛士4、髙木 智久4,5、内藤 裕二2(1. フジッコ(株)、2. 京都府立医大・生体免疫栄養学講座、3. 京都府立医大院・医・地域保健医療疫学、4. 京都府立医大院・医・消化器内科学、5. 京都府立医大院・医・医療フロンティア展開学)
<お問い合わせ先> フジッコ株式会社
担当者:イノベーションセンター 基盤研究グループ 渡辺 真通
責任者:イノベーションセンター センター長 丸山 健太郎
TEL:078-303-5385
ホームページアドレス:https://www.fujicco.co.jp