株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、ドコモが新たに開発した「マルチプラットフォームクラウドレンダリング」(以下、本技術)の実用化をめざし、NTT Comが販売する「docomo MEC(R)※1」などエッジコンピューティング環境※2を利用した3D映像リアルタイム配信の実証実験(以下、本実証実験)を行い、屋外などの環境においてもタブレットやスマートフォンで高精細な3D映像を配信することに成功しました。
【クラウド上の高精細な3D映像をスマートフォンで閲覧する画面イメージ※3】
本技術は、3D映像処理アプリにミドルウェアとしてアドオンすることで、普段ご利用しているタブレットやスマートフォンを用いて高精細な3D映像を利用可能にする技術です。エッジコンピューティング環境上の3D映像処理アプリに本技術を適用することで、映像品質を良好に保つ利用環境を実現します。これまで3D映像処理アプリを利用するためには高機能を備えたパソコンが必要とされていましたが、クラウド側で高精度の情報を映像化してその結果をモバイル提供する仕組みが簡易に実現できることで、さまざまな産業分野における3D映像利用を可能にしました。
本実証実験は、本技術をクラウドコンピューティング環境とエッジコンピューティング環境に適用し、移動先(産業現場)での利用を想定した5G通信、または施設内での利用を想定した無線LAN・有線LANの通信手段を経由して、タブレットおよびスマートフォン上で3D映像品質や操作に対する応答性能の評価を行いました。その結果、エッジコンピューティング環境において良好な映像品質、短い応答時間を維持する動作結果となり、モバイル端末上で流れるような3D動画映像をスムーズに操作できることを実証しました。※4
【クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングのネットワーク経路の違い】
【測定例:クラウドレンダリングを一定時間実行した際のクライアントにおけるフレームレート】
【測定例:クラウドレンダリングを一定時間実行した際のクライアント要求に対する応答時間】
従来、産業分野で利用される高精度3D映像は、デジタルツインという現実空間の再現をするために高精度の点群データ※5などを大量に扱うことから映像処理の負荷が高く、そのため産業現場などではモバイル利用は普及していない状況がありました。また、前述の高負荷な高精度3D映像をクラウドコンピューティング環境で分散処理するクラウドレンダリング技術はもともと3Dデータを駆使したオンラインゲーム用途で開発されたもので、産業用として利用するには困難なものでした。本技術はそれらの課題に着目し開発したもので、例えば、デジタルツインの分野における、工場のフロア設計、土木、建築現場の点群測量3D映像活用、や産業メタバースの分野では、没入感ある疑似体験を活かした製造プロセス・品質管理のトレーニングやシミュレーションなど利用がひろがり、さらにエッジコンピューティングやdocomo MEC(R)と合わせて利用することで、高セキュリティかつ低遅延に品質を落とさず持ち歩き活用できるビジネスが期待できます。
ドコモとNTT Comは、本技術を活用したサービスを2025年度中の提供をめざし、より高通信品質、低遅延、高セキュリティな利用が可能な「エッジコンピューティング」を組み合わせ、いつでもどこでも安心してご利用できるサービス開発に取り組みます。また、デジタルツインやメタバースなどを含む多様なアプリケーションを統合したエコシステムを構築し、産業界全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させることをめざしてまいります。
なお、ドコモおよび NTT Com は、本実証実験成果について2024年8月27日(火)にシンガポールで開催される「AR/VR展示会Augmented World Expo Asia ※6」(AWE Asia)において講演を行います。
※1 「docomo MEC(R)」 :利用するデバイスにできるだけ近い場所にサーバを配置することで一般のパブリッククラウドよりも通信距離を短縮するとともに、ドコモネットワーク内で通信を行うことで、モバイル通信のリアルタイム性・セキュリティ性を向上させるサービスです。詳細は以下をご確認ください。
https://www.mec.docomo.ne.jp/index.html
※2 本実証実験で利用したNTT Comのエッジコンピューティング環境は「docomo MEC(R)」と、オンプレミス環境のエッジサーバ※7です。
※3 本技術の性能評価を目的としたデモ映像。疑似空間を歩くロボットを活用し、工場内における歩行経路の安全性をシミュレーションするユースケースを想定しています。
※4 詳細な実証実験の結果については、「別紙」をご確認ください。
※5 点群データ:3次元空間を直交座標の観測点集合で表現するデータです。
※6 Augmented World Expo Asia:拡張現実、仮想現実、ウェアラブル技術の分野に焦点を当てたカンファレンスおよび展示会です。詳細は以下をご確認ください。
※7 オンプレミス環境のエッジサーバ:データ処理とストレージを企業や組織の施設内で行うためのインフラストラクチャです。ローカルで事前処理したデータをクラウド送信することで、低遅延、データ主権、セキュリティ強化を実現します。
*「docomo MEC(R)」は株式会社NTTドコモの登録商標です。
*「docomo MEC(R)」は株式会社NTTドコモが提供元であり、NTTコミュニケーションズ株式会社が代理人として保有する契約締結権限、および包括的な業務受託にもとづき販売しています。
別紙
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実証実験の概要
1.目的
本技術を活用したクラウドコンピューティング環境とエッジコンピューティング環境において、タブレットおよびスマートフォン上における3D映像の操作・応答性能を評価することで、高精度3D映像を安定した品質で提供可能か、を検証しました。
2.実証実験概要
実証実験は、大きく2つの利用シーンに分けて実施しました。
(1)「docomo MEC(R)」とクラウドコンピューティングに構築したクラウドレンダリング環境へ5Gの無線接続した場合の性能比較(移動先での利用シーンを想定)
5G接続試験ではSA基地局(5G専用)、NSA基地局(5G・4G共用)の比較も実施。
(2)オンプレミス環境のエッジサーバとクラウドコンピューティングに構築したクラウドレンダリング環境へ有線LAN・無線LAN接続した場合の性能比較(事業者施設内での利用シーンを想定)
本実証実験では、操作に対する応答時間が人の体感できる0.1sを下回ること、映像品質が一時的に低下しても正常な状態へ1.0s以内で回復することを目標設定して検証しました。
【実証実験結果】
エッジコンピューティング環境ではほぼ安定したビットレートを保ったのに対して、クラウドコンピューティング環境では局所的にビットレートが低下するシーンが定期的に存在することを確認しました。
【測定例:クラウドレンダリングを一定時間実行した際の映像ビットレート】
クラウドコンピューティングでビットレートが急低下するシーンでは映像品質の劣化する現象が見られました。例えば、クライアント側に配信された映像に以下のような違いがあらわれています。また、ビットレートの低下した状態では動画の進行遅延は微小な一方で、映像品質は境界線や物体の形状が不鮮明になる影響が発生しています。
【ビットレート低下時のクラウドレンダリング映像への影響】
本実証実験では、目標設定した操作に対する応答時間が0.1sを下回ること、映像品質が一時的に低下しても正常な状態へ1.0s以内で回復することを確認しました。
これらの結果から、本技術は高精度3D映像を安定した品質で提供可能であることを実証しました。
3.主な役割