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岡山理科大学と東京都市大学を中心とした研究チームは、1986年に香川県で発見された背骨化石について白亜紀(約1億4,500万年前~6,600万年前)のさまざまな恐竜やその他の爬虫類と比較し、ハドロサウルス類の背骨の一部であることを確認しました。この成果は7月23日(日本時間)、学術雑誌「Paleontological Research」オンライン版に掲載されました。
この化石は、当初、恐竜のものと推測されたものの、種類を特定する決定的な特徴が見つかっていませんでした。理大生物地球学部の林昭次准教授らの研究チームが表面の形態を他の恐竜の背骨と比較したほか、X線CTスキャナーを使って詳細な断面・内部構造を分析した結果、ハドロサウルス類特有の特徴があることが分かりました。
白亜紀の中でもカンパニアン期末(約8,000万~7,000万年前)のハドロサウルス類化石で、同時期ではユーラシア大陸最東端の発見例。ハドロサウルス類の当時の分布を理解する上で非常に重要なものであるとともに、香川県さぬき市の白亜紀の地層が、日本の恐竜化石の重要な産地であることも判明しました。
恐竜化石の部位は胴椎(胴体の背骨)1標本。研究チームは、モンゴルをはじめとした国内外の34種類のさまざまな恐竜標本と比較した結果、以下の点からハドロサウルス類と特定しました。
①骨の大きさが非常に大きく、大型の脊椎動物のものである
②ワニ、海棲爬虫類など白亜紀の恐竜以外の大型脊椎動物の胴椎と外形が一致しない
③前面から見たときのハート形の輪郭は、ハドロサウルス類特有のものである
④X線CTスキャンで観察したところ、骨の内部構造が陸生動物のもの、特にハドロサウルス類と似ている
化石は1986年10月21日、論文著者の一人である香川県丸亀市在住の金澤芳廣氏が、香川県さぬき市の山中で発見、何の化石か不明のまま自宅で保管していました。2015年9月、金澤氏の化石標本一式が、大阪市立自然史博物館に寄贈されたのをきっかけに、研究チームの調査が本格的に行われことになりました。