年齢から考えて「そろそろお終いか、と感無量」と本人が語る「壁」シリーズの最新作は、ファンはもちろん悩みを抱えるすべての現代人必読の書となっています。
2003年4月に新潮新書の創刊ラインナップの1冊として刊行された養老孟司さん(東京大学名誉教授・解剖学者)の『バカの壁』は、発売直後からベストセラーとなり、今日までに460万部以上を売り上げています。この「壁」シリーズは、その後『死の壁』『超バカの壁』『「自分」の壁』『遺言。』『ヒトの壁』と続き、いずれもベストセラーとなりました。
本日、11月18日発売の『人生の壁』はその最新作。養老さんが自身の半生を振り返りつつ、正面から「人生」をテーマとして取り上げた1冊です。誰にとっても厄介な人生を軽く生きるにはどうすればいいのか。自分にとって居心地の良い場所をどう見つければいいのか。養老さんが優しく語りかけます。
実は本書を作っている最中、養老さん自身の人生にも大きな出来事がありました。肺がんが発見されたのです。幸い、治療は無事終了したものの、この体験を経て養老さんの人生観はどう変わったのでしょうか。
『人生の壁』は、養老さんが人生を振り返りながら、さまざまな現代人の悩みに答える構成となっています。子どもは何をすればいいのか、子育てで何に気を付ければいいのかを語った「第1章 子どもの壁」に始まり、「第2章 青年の壁」へと続き、さらに社会問題について扱った「第3章 世界の壁、日本の壁」「第4章 政治の壁」を経て、最終章となる「人生の壁」へと展開します。
本書にはいつもにも増して養老さんの金言、箴言が詰まっています。それらは現在何らかの壁にぶつかっている人にとって救いの言葉となるかもしれません。以下にいくつか抜粋してみます。
「あれこれ習わせることで、子どもが良い方向に育っていくというのは、一種の幻想ではないでしょうか。
あれこれ手をかければかけるほど、子どもにプラスになるなどというのは勘ちがいの典型です。」
(「第1章 子どもの壁」より)
「将来のためにがまんしろ、先にはいいことがあるぞというのは、子ども時代そのものに価値を置いていないということです。
子どもには子どもの人生があり、その毎日がとても大切なものだと考える。これが子どもを大切にする基本なのではないでしょうか。」
(「第1章 子どもの壁」より)
「他人の顔色をうかがうのは、不幸になる第一歩みたいなものです。
他人とつきあうなと言っているのではありません。
『他人とつきあうけれども、過剰に気にしない』ということを成長するにつれて覚えていく必要があるのです。」
(「第1章 子どもの壁」より)
「江戸時代に日本にやってきた外国人が、日本人の印象としてみんなニコニコしていると書いています。大して成長しておらず、また豊かでもないのに、です。
お金がないから不機嫌になるのではなくて、お金を基準にしてしまったので、お金によって機嫌が左右されるようになった。そう考えてみてもいいのではないでしょうか。」
(第3章「世界の壁、日本の壁」より)
「面倒くさいことがまったくない人生というのは、決して素晴らしいものではありません。むしろつまらないものです。ここを勘ちがいしている人がいます。面倒なことがなければないほどいい、と。」
(第5章「人生の壁」より)
ここでご紹介したのは、ごくごく一部の言葉です。「なるほど」と膝を打つ言葉もあれば、「なぜそういうことを?」と首をひねる言葉、さらには「何言ってんだ」と反発する言葉もあるかもしれません。しかし、そこから考えることで読者は自分自身の答を得ることができるはずです。
本書は、誰にとっても厄介な「人生の壁」を越える知恵をやさしく語りかける、養老先生、本気の人生論です。
■書籍内容
生きていくうえで壁にぶつからない人はいない。それをどう乗り越えるか。どう上手にかわすか。「子どもは大人の予備軍ではない」「嫌なことをやってわかることがある」「人の気持ちは論理だけでは変わらない」「居心地の良い場所を見つけることが大切」「生きる意味を過剰に考えすぎてはいけない」――自身の幼年期から今日までを振り返りつつ、誰にとっても厄介な「人生の壁」を超える知恵を正面から語る。
■著者紹介
養老孟司(ようろう・たけし)
1937(昭和12)年、神奈川県鎌倉市生れ。解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。1989年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。2003年の『バカの壁』は460万部を超えるベストセラーとなった。ほか著書に『唯脳論』『ヒトの壁』など多数。
■書籍データ
【タイトル】『人生の壁』
【著者名】養老孟司
【発売日】11月18日
【造本】新書版
【本体定価】968円(税込)
【ISBN】978-4106110665