1828年の創業時より、ゲランは芸術と親密な関係を築いてきました。
歴代の調香師たちは、その時代の前衛的な芸術家たちからインスピレーションを受け、彼らの創作に刺激されてきました。その伝統は現在も受け継がれ、毎年素晴らしいアーティストや職人とのコラボレーションから生まれる、芸術作品のようなマスターピース〈エクセプショナルピース〉を生み出しています。
2024年、この特別なコラボレーションに韓国出身の著名な画家であり、現代美術の巨匠、李禹煥(リ・ウファン)を招き、メゾンに伝わるアイコニックなフレグランスボトル〈クアドリローブボトル〉を再解釈したエクセプショナルピースと、彼とゲラン調香師 デルフィーヌ・ジェルクとの対話から生まれたフレグランス〈スヴニール ドルキデ〉が誕生しました。
リ・ウファン – 超越と無限を求めて
李禹煥(リ・ウファン)の作品の根底にあるのは、画家の意図と素材との静かな対話です。彼は常に、自然、芸術、人間の意識の間の力学を探求してきました。
1970年代から多方面で活躍する李禹煥は、独自の創作プロセスを巡ってきました。無垢なキャンバスに、アクリル顔料を染み込ませた大きな筆で描く最初の一筆が、作品の土台となり、そこに何層もの層を丹念に重ね、作品が出来上がります。ミニマルな色使いと、単純な点や線に還元されたフォルムが特徴的なこの技法は、鑑賞者を瞑想的な思索へと誘います。
一見シンプルな構図の背後にある李禹煥の技法は、ゆっくりと思慮深く、とても複雑な奥行きを見せます。わずかにカーブした長方形は、画家の手の痕跡を示す微妙な不完全さとともに、白い背景の中で際立ちます。
“ 私の絵は、完全な人物画でもなく、完全な構図でもありません。空間との関係を表現し、鑑賞者との関係を築きます。見る人が作品との間の詩的な対話を通して、想像力が刺激され、キャンバスを超えて外の世界、無限の世界へと開かれることを願っています。”
ー 李禹煥(リ・ウファン)
李禹煥は自身の絵画を「描いたものと描かなかったものとの壮大な出会いから生まれたもの」と言います。このインタラクティブな空間では、微妙なニュアンスや強弱の変化が単に空白を埋めるのではなく、鑑賞者それぞれが内省的に芸術を体験する場を作り出します。
パリ、ニューヨーク、日本を拠点に活動する李の作品は、儚いものを通して永遠を、特殊なものを通して普遍を呼び起こすミニマルアートの力を示しています。
リモージュから永遠へ
今回のエクセプショナルピースのボトルとして選ばれたのは、19世紀の古い薬瓶からインスピレーションを得た、ゲランのアイコニックなフレグランスボトル「クアドリローブ」。
1908年、フレグランス〈リュ・ド・ラ・ペ〉のために初めて作られたこのボトルは、ゲランとバカラのコラボレーションの始まりでもありました。多面的で構築的なフォルムのボトルに、4枚の葉(ローブ)を象ったキャップの先進的なデザインは、当時大きな話題となりました。そして110年という歳月を経た今もなお、古びることのないタイムレスな魅力を讃えています。
今回、このエクセプショナルピースのボトル製作を担うのは、フランスの老舗陶磁器メゾン、ベルナルド。フランス磁器発祥の地、リモージュの中心で160年以上にわたってフランスの卓越した磁器のクラフトマンシップを受け継ぐ伝統あるメゾンが手がける2Lのクアドロリーブボトルは、伝統と革新の驚くべき出会いの結晶です。
このボトルの独自性はその象徴的なデザインだけでなく、背後にある精緻な製作過程にもあります。古くから受け継がれたこの工程は、ダンスの振り付けのように正確なステップを踏みます。
まず最初に、デッサンに基づき、石膏の型を作ることから始まります。そこから作られた鋳型に粘土液を流し込むと、多孔性の石膏が粘土液に含まれる水分を吸収し、型通りの形に固定されます。その後、980℃で一次焼成( 素焼き)を行います。これにより磁器は固まり、水分が抜け多孔質になり、表面にほうろうが吸着しやすい状態になります。その後、焼き物の表面に一定の厚みで釉薬を塗る、非常に高い職人技を要するほうろう引きを施し、最後に1400℃で2 回目の焼成(本焼き)を行います。本焼きにより、表面の粘土とほうろうはガラス化し、白く透明感のある見た目へと変化、磁器を恒久的に硬化させます。
土と火の対話、卓越した職人技の賜物であるこのボトルはそれ自身が、大地からの貴重な恵みである磁気の持つ純粋さが表れ、単なる”容器”を超えた芸術作品と言えます。
ミニマルで普遍的なマスターピース
〈エクセプショナルピース 李禹煥〉は、ゲランの伝統的なクアドリローブボトルに李禹煥の代表作の一つ「Dialogue( 対話)」シリーズからエクスクルーシブな鮮やかな緑のバージョンが描かれます。不穏なほどに鮮明に描かれた大胆な緑の筆跡。一見ごくシンプルなブラシストロークは、描かれている部分と描かれていない空白部分の、物質と空虚の、色彩と無垢な磁器の間の対話を示し、その色面からは、動き、エネルギーの躍動が感じられます。グレーの単色で始まったこのシリーズは、その後、青や赤などでも製作されるようになりましたが、今回李が選んだ色は、彼にとっては異例と言えます。
バランス、自然、再生のシンボルである緑は、アートと環境への取り組みにおいて志を同じくする李とゲランのコミットメントを反映しています。
また、彼が拠点を置く日本では、緑は永遠の生命を連想させる色でもあります。
“ 私は無限を感じさせる芸術が好きです。
そこには、描いたものと描かれていないものが力強く共鳴する、作り手をはるかに超えた荘厳なものがあります”
ー 李禹煥(リ・ウファン)
芸術技法の真髄が凝縮されたこのボトルはそれ自体が芸術作品であり、創造、シンプルさの感動的な美しさ、ミニマリズムの華麗さについての考察を促します。
2人のアーティストによる、香りの芸術
李禹煥とゲランの調香師、デルフィーヌ・ジェルク、2 人のアーティストが出会い〈スヴニール ドルキデ〉は誕生しました。
アクアティックでムスキーなこのフローラルフレグランスは、李が幼少期に親しんだ山々とそこに咲く蘭に着想を得て、クリスタルのような純粋さ、ミネラルの世界と岩を中心に展開します。
アンジェリカのグリーンなフレッシュさとパラディゾンのフローラルな甘さを調和させたトップノートは、山の蘭のフレッシュさと幽玄な繊細さで呼び起こします。ハートノートには、朝方に咲く白い花びらの優しさを思わせるジャスミンサンバックとアイリスパウダーが豊かな香りを織りなし、やがてアンブレットムスクとアンバーチンキのベースノートに優しく包み込まれます。パウダリーなムスクと組み合わせられたアンバーチンキは、柔らかさとミネラルの深みをもたらし、山の空気の清らかさと蘭の柔らかさを想起させます。最後に塩気のあるアクアティックミネラルのアクセントを持つモスノートとマリンアコードがともに香り立ち、ヨードの香りが広がり、山のミネラルの壮大さと純粋さを讃えます。
エクセプショナルピース 李禹煥(スヴニール ドルキデ)
7,744,000円(税込)
エクストレ〈スヴニールドルキデ〉は、空気の清らかさと精神の高揚を想起させ、アイリスとムスクのパウダリーな質感が、蘭の柔らかさや石の堅牢さを包み込みます。
その香りの深さと複雑さは、感覚を目覚めさせ、未開の自然への旅へと誘います。
ゲラン公式オンラインブティック https://www.guerlain.com/jp
ゲラン公式インスタグラム https://www.instagram.com/guerlain/