フェリシモが設立した、『マイノリティデザイン-弱さを生かせる社会をつくろう』の著者、澤田智洋さんを“ゆる研究員”に迎え活動中の「オールライト研究所」は、障害者週間(毎年12月3日から12月9日までの1週間)を翌月に控えた2024年11月8日・9日に、初イベント『オールライトDAY』を開催しました。片手で着られて自分をパッと輝かせることをテーマとした「オールライト研究所」の第2回目のテーマ「one hand magic」の新作ファッションアイテムと、第1回目のテーマ「裏表のない世界」の全アイテムが一同にリアル体験・試着ができる初めての場です。その模様を公開します。澤田智洋さんと、百武桃香さん(オンライン登壇)、木戸奏江さんと、フェリシモ「オールライト研究所」研究員が登壇し取り組みついてトークショー、続いて全アイテムの体験・試着を展開。さまざまな人と一緒に研究を行う目的を実装する「お困りごと」を聞くコーナーも設け催しました。「オールライト研究所」は、障がいがある人のニーズを聞き取るインクルーシブデザインでの商品開発にとどまらず、障がいを持たない人の顕在化していなかったニーズやお困りごとをも解決する、All right(大丈夫・問題ない)=誰もが持つ弱みや苦手やコンプレックスを「そのままでいい、そのままで楽しい」と思える商品開発を行っています。
・イベントの概要/プレスリリース
◆11月8日初イベント『オールライトDAY』イベントの流れ
(会場を移した11月9日『オールライトDAY』イベントの様子、西日本での12月7日開催イベントに「オールライト研究所」アイテム展示情報も下部に記載)
トークショー
フェリシモのIT関連の業務につきながら「オールライト研究所」の研究員として活動する筧麻子から、取り組みの概要説明からトークセッションがスタートしました。「オールライト研究所」は 2022年にスタートして、社会的弱者がありのままでいられる社会を目指し、澤田氏の著書『マイノリティデザイン』の考え方を基に、初回テーマ「裏表のない世界」に続き、最新第2回テーマ「one hand magic」の研究が進行しています。
登壇者:画像内左から、車いすユーザー木戸奏江さん、ゆる研究員澤田智洋さん、モデル百武桃香さん(オンライン登壇)、フェリシモ「オールライト研究所」フェリシモ筧麻子
体験・試着会
最新の研究成果、第2回目のテーマである「one hand magic」の新ファッションアイテム6点・10カラー/タイプと、第1回目のテーマ「裏表のない世界」の新作1点を含む5点・6カラー、全11点・16カラー/タイプをリアル体験・試着ができる場を設けました。
◆トークショー
新テーマ「one hand magic」は、「オールライト研究所」のアンケートで、片麻痺がある方からの「服の脱ぎ着に苦労してる」「特に綺麗目のお洋服が見つかりにくい」という実際の声から開発された経緯が語られました。2023年「グットデザイン賞」を受賞した「裏表のない世界」は、全盲のご夫婦 である大胡田さん、大石さん、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーで車椅子ユーザーの木戸奏江さんがアドバイザーとして参加し、裏表前後のないTシャツ、靴下、パンツを開発しています。
「オールライト研究所」ネーミングの由来は、“そのままで大丈夫 =オールライト、一緒に研究を重ねたい=研究所”です。
澤田さんから木戸さん、百武さんおふたりに、特に気に入っている点や今回のプロジェクトに参加してみた率直な感想をという投げかけからセッションが展開されました。
お気に入りはどれ?
・片手で着られるアウター〈ブルーグレー〉
木戸さん
横の部分にスリットが入っていることに感動しました。車椅子で座った姿勢では、綺麗な洋服のシルエットにならないことや、腰回りの生地がもたつくといった具体的な悩みの解決になっている上、ファッション性が兼ね備えられています。
筧
スリットが深くはいっているデザインは車椅子ユーザーでない人からも評価されています。例えば自転車に乗る時にも足さばきがしやすく着やすいといった機能性を備え、かつ美しいフォルムも兼ねられているのがポイントです。障がいの有無に関係なく、さまざまな人のそれぞれのお悩み、また顕在化していなかったお悩みの解消やニーズの発見、便利さの提供につながっています。
木戸さんは、車椅子でコートを着ると寒い空気が入ってきたりするのが悩みだったという。
澤田さん
当事者の方には機能的にいいけれど、そうじゃない方には、デザインがイマイチだったりと、どっちつかずみたいになることがインクルーシブデザインの課題としてよくある中で、みんなにとって嬉しい便利なポイントに着地したアイテムだと思います。
one hand magic 片手で着られるアウター〈ブルーグレー〉
商品詳細>> https://feli.jp/s/pr241118/2/
【動画】>> https://www.youtube.com/shorts/WH5X9gR2BmM
・片手で着られるスナップシャツ
木戸さん
袖口にゴムが入っていて、好きな位置で止められ、ぱっと着てちょっと袖丈を簡単に調節できて、かつおしゃれに着こなせるところが気に入っています。
下久保
スナップボタンや通常シャツのカフスにゴムは入れないなどの常識にとらわれない、それでいてシャツとして見えるデザインに工夫しました。
画像左:ゴムの入ったカフス部、右:商品開発者として説明をする「オールライト研究所」下久保英(したくぼはな)
百武さん
左半身麻痺で肩をあげることができないので、手を洗うときなどにシャツに不便を感じ食器洗いのためにシャツを脱ぐこともありました。スナップシャツはデザイン性があって可愛くて、本当に着やすいアイテムです。
筧
子育て中のお母さんの「家に帰ってすぐに洗い物がしたい」とそんなときにもこのシャツはすぐに取り掛かれ、袖がずり落ちてきて上げなおすといった小さなお困りごとがなくなります。
澤田さん
多様な目線やビジョンを入れて商品開発すると、当たり前の新しい当たり前に気づきます。「オールライト研究所」は、日々さまざまな発見に満ちていて、大発見もあれば、ささやかな発見もあるので、発見のダイバーシティに満ちてるプロジェクトだと思います。
one hand magic 片手で着られるスナップシャツ〈ホワイト〉
商品詳細>> https://feli.jp/s/pr241118/3/
【動画】
・一人で着脱ができる片手で着けられるネックカフ
百武さん
ひとりでいるときはネックレスを自分で付け外すことが無理だったので、そのネックレスが簡単に外せて、つけられるのは本当に使い勝手が良くて、可愛いです。
one hand magic 片手で着けられるネックカフ〈コットンパール〉
商品詳細>> https://feli.jp/s/pr241118/4/
【動画】
・片手で使いやすいショルダーバッグ
百武さん
片手で扱える点が便利です。ファスナーの開けやすさやマグネットの強さもほどよいので使い勝手がよいと感じています。特に片手では小物は扱いづらく悩みがあるため、小物のアイテムの選択肢が増えたらうれしい。
安田
長時間背負っていても肩が痛くならないようにショルダーストラップを幅広仕様にしたり、ショルダー部分が片手で付け外しすることができるようにしたり、随所に工夫をしています。スマートフォンのストラップや複数のバッグを持っている際に片手で着脱できる点は、片麻痺のある人でなくても便利な仕様にしたのは、オールライト研究所が目指すテーマを傑出です。お財布として使用ができるポケットは、芯を入れて硬さを変えることで片手で開閉ができることを実現をしています。10個のポケットがあるそれぞれに使い勝手への試行錯誤がほかになく新しい形になった新アイテムになったと思います。
画像左:ショルダーストラップを片手でも外しやすいようにカニカンが本体側に付てある、右:商品開発者として説明をする「オールライト研究所」安田彩美
one hand magic 片手で使いやすいショルダーバッグ〈ブラック〉
商品詳細>> https://feli.jp/s/pr241118/5/
◆プロジェクトに関わった感想
木戸さん
最初にこのプロジェクトの話を聞いたときに、障がいのある人の声を起点にして、みんなにとって使いやすいものを作るという構図がすごくいいなと思いました。障がい者向けの服や靴などは世の中にあったことは知られていても、オーダーメイドだったり、高いお金を出して買わないといけない。製品ではなく作品であることが多いです。今回フェリシモさんは、作品ではなく製品として 障がい者の声を取り入れて作った。このようなことは今までにないと思います。
澤田さん
障がいのある当事者向けのアイテムは最近増えてきてはいるものの、価格が高くて2着目以降が買えないということがあるあるです。その中で、原価を抑えながらクオリティを上げるという知見があるフェリシモさんはとても心強いですね。「オールライト研究所」や個人の活動でいつも大切にしてるのは、当事者もうれしいけど、それ以外の人もうれしい「重なりの最大化」を意識しています。 重なりが大きければ大きいほどみんなうれしいですよね。そうして経済や、事業が回ってくことで、安定して製品をお届けできるということに繋がります。今回の「one hand magic」も、重なりが大きくなったんじゃないかなと思います。
百武さん
実際にいろいろ(試作品から)試してみて、「なんでも教えて」って感じでフェリシモさんも聞いてくださったので、意見が言いやすかったです。意見に対してお応えしていただけたので、一緒に考える中でも使えるようになったら「これから本当に楽だろうな」「ほかの人にもメリットがあるだろう」という思いもあって楽しかったです。商品のモデルをした写真をインスタグラムに載せた際に、障がいを持ってないファンの方々からコートやシャツを購入しました。というお声をいただきました。ちゃんと届いているといううれしさは今まで以上にありました。
◆未来のこんな商品あったらいいな
澤田さん
おふたりへ、未来の話へ質問です。こういうコンセプトや商品があったらいいなと思うことはありますか?
木戸さん
障がい者でも着やすくフォーマルな場にふさわしい「ハレの日の服」があるとうれしいです。先週七五三のでスーツを着た時、普段はひとりでお手洗いに行けても、スーツのときには補助が必要になるという不便があり、フォーマルな装いであっても着脱しやすい服があるといいですね。
百武さん
片手で使いやすいショルダーバッグのように財布機能が一緒になっていたり、ネックレスのようなアクセサリーなどの小物類が増えたらうれしいです。特に財布やカードケースなど片手では持ちにくい小物が多いので、選択肢が多いほどいいですね。
筧
2023年10月に発表した「裏表のない世界」では、使う人を絞り込みすぎたり、創造するだけではダメだなという反響がさまざまな人からありました。プロジェクトをやらせていただいて、メンバーもみんな思い込みがあるということにすごく気づきました。社内の働くお母さんからの声からも「この服はこの仕様があたりまえ」というような思い込みから、見直し、工夫をし直しをすることがすごく大切なことだったと思います。思い込みをブラッシュアップしていく取り組みをこれからも続けたいです。
澤田さん
一番深く届けたいのは障がいのある当事者だけど、その次に届けたいのが重なる部分。同じようなところで 悶々としてたり、改善してほしいと思っているマジョリティが周辺にいっぱいあるから、取りこぼさないでおこうみたいな。使う人をいくつか設定して開発する中で、どっちもしあわせにできたら。
木戸さん
ハンドソープのポンプが自分で押せなくなったときから、自動で出てくる家庭用のディスペンサーを使用しています。コロナ禍で一般的になったことで安くて便利で壊れにくい、そして使いやすくなりました。マジョリティとマイノリティが合流して一緒に商品をつくることが今後必要になるのでは。
百武さん
フェリシモの洋服は障がいのある人だけでなく、健常者や育児中のママなど幅広い人々に使いやすいものです。障がい者がどのようなニーズを持っているかを知らなかった人にも、気づいて心を配れる社会へ、境目を作らない世界を広める役割を果たせると期待しています。
◆質疑応答
Q.片手で着られる利便性とデザイン性を兼ね備えたアイテムのデザインで気に入っている部分は?
A.
木戸さん
グレーのようなブルーのようなコートの色やネックレスです。身に着けることが物理的に難しかったり、補助をお願いしないといけない場合、色を諦めてしまうんですね。障がいが長くなると、諦めてることももう忘れてしまいます。好きな色や好きなアイテムを着たいという忘れていた自分の気持ちを思い出させてくれたので、デザインが心に与えてくれる影響を感じました。
百武さん
障がいが長くなり、シャツは着ることを諦めたほうがいいものという認識でした。今回のアイテムは着やすさもあり何色も欲しいと思います。
Q.シャツの販売の目標はありますか?
A.
筧
まずは作ったものをみなさまに届けるということをこれから頑張っていきたいなと思います。
澤田さん
長く愛されるアイテムになるポテンシャルを秘めていると思います。これからのマーケティング活動の訴求の中で、幅広い層への認知拡大そして理解促進をおこなっていくことが大事です。
Q.視覚障害者の方も注目しているアイテムなので、視覚障害者に今回の商品を紹介するにあたりアドバイスをいただきたい。
A.
木戸さん
着るだけでおしゃれに見えることです。シャツを着た後に襟元の開け具合などの調整を気にしなくても綺麗に着れている状態がつくれることはメリットだなと思います。
百武さん
「失敗しないおしゃれ」が大きいポイントです。片手で着るときにヨレたりどう着こなせば良い分からないといったストレスがフェリシモさんの商品にはありません。想像ですが視覚障害の方にとっても使いやすいのではないかと思います。
澤田さん
視覚障害者の方は物を失くすことが多いです。服もパッと決まる、バッグも財布と一体化したり、「失敗しない、失くさない」といった点も、着心地と合わせて心理的に安心できると思います。
◆体験・試着会
参加者が自由に商品を手に取り、動きやすさや着用感を確かめられ、にぎわいました。
片手で履けるレースアップ風シューズ〈ブラック〉
商品詳細>> https://feli.jp/s/pr241118/6/
one hand magic 片手で着けられるイヤカフ〈片耳用〉の会
商品詳細>> https://feli.jp/s/pr241118/7/
みんなにやさしくかっこいい 裏表前後ろのないすっきりフィット靴下の会
商品詳細〈ネイビー〉>> https://feli.jp/s/pr241118/8/
◆みんなの「お困りごと」を募集
障がい者を持つ人も一般の人とも広く使えるオールライトな商品が広がることを目指し、服にとどまらない研究開発を続けていく社会的意義や、多様性から多面への進化を視野に入れた活動をみんなで行っていきたいとメッセージしました。会場ではその起点となる「お困りごと」を書き込んで参加できるボードも設けられました。「オールライト研究所」では『オールライトDAY』に行くことができなかった人も参加できる「お困りごと」を募集フォームを開設しています。
◆登壇者
澤田智洋(『オールライト研究所』ゆる研究員)
コピーライター / 世界ゆるスポーツ協会代表理事。著書に『マイノリティデザイン(ライツ社)』『ガチガチの世界をゆるめる(百万年書房)』など。
X(@sawadayuru)>> https://twitter.com/sawadayuru
百武桃香/momoちゃん(『オールライト研究所』モデル、研究員) ※オンライン登壇
17歳のときに脳内出血で左半身麻痺に。その経験をもとに、障がいのある方が笑顔で暮らせる社会を目指して活動中。今はSNSでリハビリや日常を発信し、同じ境遇の方々に勇気を届けています。
木戸奏江(『オールライト研究所』モデル、研究員)
10歳のときに顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーと診断される。20歳より電動車いす使用。2021年5月に第一子出産。近距離モビリティのWHILL株式会社でマーケティング業務に従事した経験を持つ。
note>> https://note.com/kanaekido/n/n45b5d30ff661
筧麻子
フェリシモ所属『オールライト研究所』研究員。
ほしいのは、弱みもそのままでたのしく暮らせるための工夫。裏表のない服を手がける「オールライト研究所」にまつわる10のこと。>> https://feli.jp/s/pr241118/10/
『オールライトDAY』は、日テレNEWSに報道されました。(※試着会は2024年11月9日に終了しています)【動画】
新、第2回テーマ:「one hand magic」
・ウェブサイト>> https://feli.jp/s/pr241118/11/
《プレスリリース》
第1回テーマ:グッドデザイン賞を受賞「裏表のない世界」
・ウェブサイト>> https://feli.jp/s/pr241118/12/
《プレスリリース》
◆会場を移した11月9日『オールライトDAY』イベントの様子
【動画あり】「オールライト研究所」X>> https://x.com/f_allrightlab/status/1855163851375030474
◆西日本開催「多様性・インクルーシブ・ありのまま『ありのままを受け入れ和(あ)えるファッションショー』」イベント12月7日(土)にオールライト研究所アイテムを展示
詳細「オールライト研究所」X>>https://x.com/f_allrightlab/status/1859863750196724010
※兵庫県明石市「あかし市民広場」会場にて10:00~
◆オールライト研究所(2023年~)
よわさや苦手やコンプレックスに悩むのは、そろそろ終わりにしましょう。足りないのは、あなたがそのままでたのしく暮らせるための、社会の工夫。~IT”S ALL RIGHT. ありのままで。~オールライト研究所は、「そのままでたのしい、そのままがたのしい暮らし」をみなさまと一緒に作り出すプロジェクトです。『マイノリティデザイン』の著者、澤田智洋さんをゆる研究員に迎え、さまざまなテーマで商品開発を行います。
ウェブサイト>> https://feli.jp/s/pr241118/13/
研究note>> https://note.com/allrightlab/
X(@f_allrightlab)>> https://twitter.com/f_allrightlab
株式会社フェリシモ
◆ウェブサイト>> https://feli.jp/s/pr240301/1/