「脂肪」をめぐる人類の歴史を描いた、イェンヌ・ダムベリ著、久山葉子訳『脂肪と人類:渇望と嫌悪の歴史』(新潮選書)が、1月23日(木)に新潮社から刊行されます。
かつて人類にとって脂肪は命そのものでした。私たちの祖先は肉ではなく、脂肪たっぷりの骨髄や脳、内臓を求めて狩りをしたのです。そして貴重な油脂は、神への捧げ物にも使われてきました。それが近年になって忌避すべき栄養素とされるようになったのはなぜでしょうか。
著者ダムベリは世界各地を訪れて伝統的な脂肪料理を味わい、神話のなかの乳について調べ、酪農や畜産の歴史にも迫ります。さらに味覚や健康への影響など科学面からもアプローチ。油脂への評価がロビー活動によって揺れ動く様も描き出します。脂肪の知られざる歴史から世界の脂肪料理まで、驚きに満ちた一冊です。
・脂を食べたサルがヒトに進化した?
・縄文土器は魚を茹でるための壺?
・赤身肉しか食べないとヒトは飢餓状態になる?
・宗教改革の原因はバターだった?
・マーガリンの生みの親はナポレオン三世?
・ダイエットを広めたのは葬儀屋?
・ヴァイキングはなぜ発酵サメを食べるのか?
・サーミが珍重する「老人のソーセージ」とは?
・ウクライナ人が愛してやまない「サロ」(豚背脂の塩漬け)の味とは?
・飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、パーム油、本当に体に悪いのは?
■目次
序文 脂肪――命と欲望
第一章 ホワイトチャペルの怪物――世界を虜にしたロンドン下水道の「脂肪の山」
第二章 骨髄――祖先たちの飽くなき脂への欲求
第三章 バターとチーズ―― 神の食べ物、女性の苦労の結晶
第四章 だから脂は味わい深い
第五章 豚肉、ナショナリズム、アイデンティティ
第六章 かくも恐ろしき脂肪
第七章 熱帯の木に生えるラードと大豆ロビイスト―― 植物油を巡る熱い闘い
第八章 結局、脂肪を摂ると太るのか痩せるのか
第九章 どれも同じくらい脂っこいわけではない――しかし多様性で脂肪は最高の存在になる
脂と料理のヒント もっと脂を使った美味しいレシピとテクニック
出典・インスピレーション・お勧めの文献
■著者紹介
著者:イェンヌ・ダムベリ Jenny Damberg
スウェーデンのジャーナリスト・作家。朝刊紙に所属したのち、フリーランスに。デビュー作の『さあ食べよう! 現代人気料理の知られざる歴史』がスウェーデン食事アカデミーの食事エッセイカテゴリーにおいて最優秀食事文学賞を受賞したほか、食文化関係の著書多数。
訳者紹介:久山葉子 Yoko Kuyama
翻訳家・エッセイスト。スウェーデン大使館商務部勤務を経て、現在はスウェーデン在住。訳書にアンデシュ・ハンセン著『スマホ脳』などがある。
■書籍データ
【タイトル】脂肪と人類:渇望と嫌悪の歴史
【著者名】イェンヌ・ダムベリ著、久山葉子訳
【発売日】2024年1月23日
【造本】新潮選書
【定価】2,200円(税込2,420円)
【ISBN】978-4-10-603921-8