メゾン ヴァレンティノ(MAISON VALENTINO)は日本時間2025年1月29日(水)、フランス パリのパリ旧証券取引所にて、クリエイティブ ディレクター アレッサンドロ・ミケーレ初となる2025年春夏オートクチュールコレクション ‘ヴェルティジニュー (VERITIGINEUX)’ を発表しました。
ヴェルティジニュー
リストの詩学
「文化の起源であるリスト。それは芸術と文学の歴史の一部である。文化は何を求めているのだろうか? それは無限を理解できるようにするため。それは常にとは言わないまでも、往々にして秩序を生み出したがっている。そして、人間として、我々は無限とどのように対処すればよいのだろうか?掴めないものをどのように掴むことができるのか? リスト、カタログ、博物館のコレクション、 百科事典、辞書を通じて。リストは文化を破壊するのではなく、文化を創造するのである」
ウンベルト・エーコ『芸術の蒐集』
<アレッサンドロ・ミケーレからのメッセージ>
リストの魅力、一覧表に対する好み、人、そして現象は常に人間性の歴史に付随しています。見かけのシンプルさをよそに、リストの修辞的な姿はその物語的で詩的な可能性に関して学者たちによって掘り下げられることはほとんどありません。しかしウンベルト・エーコは、他の人々とは異なり、ホメロスからジョイス、エゼキエルからガッダ、アルチンボルド、カルヴィーノ、モローまで、芸術と文学を通じた詳細な例を集め、分析することによって、この概念の示唆に富む解釈を現代的な議論の中心へと持ち込んだ人物として称賛に値するといえるでしょう。
イタリアの記号学者によると、すべてのリストは、ふたつの相反する、そして補完的な傾向の間で変化
します。それは存在の無限の拡張を意味のある枠組みの中に閉じ込めようとする試みでもあります。宇宙の混沌に秩序をもたらす方法。一覧表にするそうした試みは、遺産や蔵書目録、博物館のアーカイブの編集といった主に実用的な機能を果たす一方で、詩を超え、幻想的で美的な、物語風の手段となることもあります。この時リストは、言葉では言い表せないものの前に平伏し、渦を巻いて無限を暗示するのです。混沌を鎮めるのではなく、むしろそれを熟考することを目的としています。
このふたつの次元はしばしば共存し、秘密の逢瀬を設けます。「リストは秩序をもたらすと同時に分散を 促す。リストは閉じていることも開いていることも、静的であることも動的であることも、有限であることも無限であることも、秩序だっていることも無秩序であることもあり、リストであることを決してやめることはない」とベルナール・セヴは言います。その二重性により、リストは秩序の手段であると同時に、方向感覚を失う原因にもなり、歓喜と放心状態を生み出すのです。
より具体的に言えば、エーコは「リストの眩暈」について言及し、しばしばエトセトラの寸前で止まってしまうような、騒々しく、自由奔放で、強迫観念的なリストによって生み出される特別な感覚を喚起している。エトセトラは、無限に広がる可能性のあるもの、収められないもの、閉じ込められないものの前に、宙吊りの状態を作り出し、この眩暈は、実際、あらゆる可能性のある目録の未完成な性質から生じています。
私にとって初めてとなるオートクチュールショーの準備期間中、これらの考えが常に私を支えてくれました。そしてそれらは途切れることのない、潜在的に無限にある言葉のカタログとして、ユニークで限りある、つまり蓄積と並置によって進む非文法的なリストとして、ふたつとないドレスを想像するよう私を促しました。48 のドレス、48 のリスト。それぞれのリストには、測定可能な比率、感情的な糸、絵画的な参照、商品メモ、伝記のようなキルト、映画のような織物、色彩的な配置、哲学的なステッチ、音楽的な印、象徴的な縦糸、言語的な刺繍、植物の断片、視覚的な原型、歴史的なファブリック、物語風のインターシャ、関係性のある結び目など、それぞれのリストには物質的な要素と非物質的な要素が共存しています。
まるですべてのドレスが、関連性を通じて、個性はじける、熱狂的で絶え間ない参照の階層という相互接続された多数の世界を想起させるよう。カルヴィーノはそのようなリストを「幽霊たちの黄道帯」と呼ぶでしょう。つまりすべての糸、すべてのステッチ、すべての色の痕跡が、目に見える範囲を超え、数え切れないほどの言葉へと姿を変える詩学です。振動し、一覧表の渦の中へと溶けていくビジョンの の星座なのです。
それぞれのドレスは単なる物体ではなく、むしろ重要な網の結び目であり、視覚的で象徴的な記憶の
痕跡を残す生きた地図です。それはありそうもない組み合わせが調和を見出し、さまざまな時代、文化を思い出し、過去の物語の残響が現在に共鳴する物語のアーカイブです。それは組み合わせ、想起、残響が言葉で表せるものの境界へと一気に展開されるリスト。それは不完全な多様性のめまいへの旅なのです。
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