■歴史と伝統を紡いできた「野球の聖地」100年の軌跡がわかる!
2024年8月1日、プロ野球・阪神タイガースの本拠地であり、高校野球「春のセンバツ」「夏の甲子園」の舞台でもある阪神甲子園球場が開場100周年を迎えます。
高校野球の開催を目的に建設され、改修をくり返しながら、「野球の聖地」として今も君臨しつづける甲子園球場。ここには、他のプロ野球開催球場には見当たらない特徴が多くあります。
たとえば、グラウンドの土、天然芝の美しさは他の球場の追随を許さず、高くそびえる観客席(アルプススタンド)、バックネット裏の席を覆う「銀傘」と呼ばれる屋根、外壁を覆う蔦、球場のライトスタンド後方からレフトスタンド・三塁側アルプススタンド方向へ吹き抜ける海風(通称「浜風」と呼ばれる)など……枚挙に暇がありません。
100年にわたる歴史のなかには、さまざまな名勝負、名シーン、そして人間ドラマがあり、グラウンドはその舞台装置となりました。その裏には、数限りない秘話やドラマがあります。
「工期わずか4か月半。初イベントは『運動会』だった! 」
「外壁が蔦で覆われることになった理由は?」
「冬の甲子園に、なんとスキージャンプ台が出現!」
「芝と土への、並大抵ではないこだわりとは?」
「『バックスクリーン3連発』と『浜風』の意外な関係!」
「幻に終わった“甲子園ドーム”計画の顛末!」
「『平成の大リニューアル』で設備はどう進化した?」
など、さまざまなトリビアを散りばめながら、甲子園球場の歴史を誕生からつぶさに見ていきます。あらゆる野球ファンにお勧めしたい一冊です。
■「まえがき」より――甲子園球場は時空を超越した特別な存在
「甲子園」は、いまや一風変わった野球場になってしまった。球場全体を覆う屋根もなく、内野は黒々とした剝き出しの土、外野の芝は天然という「昭和の野球場」を色濃く残しているからだ。
濃緑色の蔦(もちろん天然)が絡まる古色蒼然とした正面の入り口。通路を抜けてひとたびグラウンドの全貌が現れると、目に飛びこんでくる鮮やかな外野の緑の芝生、さらにこれも美しくて品のある黒い内野の土。そしてバックスクリーンの後方にそびえ立つ真っ黒いスコアボードの真ん中には、ひときわ高くシンプルな純白の文字盤の時計が掲げられている。
最近のプロ野球ではとんとお目にかかれなくなってしまった「ニッポンの野球場」が、大げさに言えば、100年の歳月を経て、まだまだ健在であることを強烈にアピールしているようで、妙に心が落ち着くのだ。
「甲子園」は100年の時空を超え、変化しているようでじつは根本的には変わっていないのかもしれない。だからこそ、この「舞台」に刻まれてきた数々の歴史に残るシーンも、私たちの脳裏に強烈に焼き付いているのではないだろうか。本書で、その歩みをじっくりと見つめ直してみたい。
■目次より
第1章 阪神甲子園球場、誕生の前夜(1872〜1923年)
・アメリカから野球伝来。熱気は全国へ
・阪神と阪急、熾烈なライバル関係に
・第1回全国中等学校優勝野球大会の開催
・阪神vs阪急の攻防が野球場建設に飛び火
・観客なだれこみ事件が「甲子園球場」を生んだ
第2章 不断の努力で、大運動場が落成(1924年)
・広大な埋め立て地で進む「巨大野球場」建設計画
・たった1枚の図面をもとに若い技術者が奮闘
・工期4か月半。綱渡りの大工事が始まった
・すべてにおいて斬新だった総合大運動場
・甲子園のシンボル「大鉄傘と蔦」も誕生
第3章 夏の甲子園、熱闘の幕が上がる(1924〜1936年)
・甲子園で中等野球の熱戦がスタート
・関西私鉄の集客競争に勝利した阪神電鉄
・阪神が展開したスポーツとレジャーの一大殿堂
・観客席の増設で「アルプススタンド」登場
・ラジオ中継が中等野球人気に拍車をかけた
・プロ野球球団「大阪タイガース」誕生
第4章 戦禍に耐え、復興へと歩みだす(1936〜1950年)
・隆盛するスポーツの陰で戦雲が近づく
・戦意高揚に利用された中等野球
・幻の甲子園大会と最後の職業野球試合
・戦火のさなか、甲子園球場も軍用エリアに
・戦後の復興とともに中等野球大会が復活
第5章 経済は成長し、野球人気も沸騰(1951〜1964年)
・復興の象徴、プロ野球オールスターゲーム開催
・大鉄傘撤去から7年…「銀傘」として復活
・テレビ中継が開始され、高校野球人気は絶大なものに
・ナイトゲームを彩った“カクテル光線”
・巨人が主役の時代、脇役・阪神も奮闘した
・時代とともに姿を変えたフェンス広告
第6章 幾多の伝説を生んだグラウンド(1965〜1985年)
・漫画のようなヒーローが高校野球に出現した
・“事件”が頻発した阪神の1970年代
・伝説のシーンを生んだ「甲子園の浜風」とは
・美しいグラウンドの基本は「芝生と土」から
・タイガースのどん底時代と高校野球全盛時代
第7章 幻と消えた「ドーム化」計画(1986〜2006年)
・センバツ開催が大震災の被災地を励ました
・“甲子園ドーム”計画の顛末とは
・阪神タイガース、ついに復活す!
・阪神園芸の整備は、なぜ“神”と讃えられるのか?
・初のパ・リーグ主催試合で東北楽天が見せた底力
第8章 大改修され、次の100年へ(2007〜2024年)
・平成の大リニューアルのコンセプトとは
・スコアボードはどう進化したのか?
・全国の高校が協力した、蔦の「里帰り作戦」とは
・いつの時代も、阪神電鉄は「顧客本位」が原点
・甲子園エリアを歩いてみると……
・甲子園は時空を超越した特別な存在だ
その他
・阪神甲子園球場MAP
・甲子園球場こぼれ話(コラム・複数)
■本文より
■内容紹介
2024年8月に開場から100周年を迎える阪神甲子園球場。タイガースの選手が躍動し、高校球児が涙した、巨大スタジアムの歴史をひも解く。野球ファン垂涎の秘話やエピソードが満載!
■著者紹介
工藤隆一(くどう・りゅういち)
1949年、青森市生まれ。慶應義塾大学法学部卒。1972年、日刊スポーツ新聞社入社。大相撲のほかボクシング、ゴルフなどを担当。東北支社次長、企画部長を歴任。1997年、同社退社後、食品メーカーで商品開発、物流会社に勤務する傍ら、スポーツ関係のコラムを執筆。現在はフリーライター。スポーツを歴史、文化、制度、社会などとの関わりでとらえたコラムや著作が多い。著書に『箱根駅伝100年史』『大相撲 誰も教えてくれなかった見かた楽しみかた』(以上、小社刊)、『力士はなぜ四股を踏むのか?』(日東書院)がある。
■書誌情報
レーベル名:KAWADE夢文庫
書名: 甲子園球場100年史
著者: 工藤隆一
仕様:新書判/並製/224ページ
初版発売⽇:2024年3⽉19日
定価:979円(本体890円) ISBN:978-4-309-50450-6
装丁:こやまたかこ
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309504506/
出版社:河出書房新社
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