2024年4月4日 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」に賛同する声明
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1.声明
日本運動疫学会は、厚生労働省が策定した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」1)に賛同します。また、国民の身体活動2)・運動3)の促進に関わる様々な立場の関係者、例えば、健康づくりに関わる専門家(健康運動指導士、保健師、管理栄養士、医師等)、政策立案者(健康増進部門、まちづくり部門等)、職場管理者、その他健康・医療・介護分野における身体活動を支援する関係者が、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を参照することを推奨します。この策定を契機として、国民の身体活動・運動の促進に寄与する取り組みが、より一層広がることを期待します。
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2.声明の背景と根拠
厚生労働省は、「健康づくりのための身体活動基準2013」4)を改訂し、最新の科学的知見に基づき「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を策定しました。今回の改訂で新たに示された主なポイント(変更点)は、次の4点です。
①個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組むことが強調された点
②座位行動(座りっぱなし)5)の時間が長くなり過ぎないように注意すること(立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かすこと)が示された点
③運動の一部において筋力トレーニング6)を週2~3日取り入れることが加わった点
④高齢者の推奨事項が歩行またはそれと同等以上の強度(3メッツ以上)の身体活動を1日40 分以上(週15メッツ・時以上)行うことに変更され、多要素な運動7)を週3日以上取り入れることが加わった点
これらの変更は、最新の運動疫学研究が示す科学的知見に基づき策定されています。身体活動量が多いほど、疾患発症や死亡リスクが低いことや、座位時間が長いほど、死亡リスクが増加することが示されています。筋力トレーニングの実施は、筋力や身体機能、骨密度を改善し、転倒や骨折のリスクが低減するだけでなく、疾病発症や死亡リスクの低減につながることが明らかになっています。また、高齢者では多要素な運動の実施によって、転倒・骨折のリスクが低下することが報告されています。
厚生労働省「健康日本21(第二次)最終評価報告書」8)でまとめられているように、日本人の身体活動・運動の実践状況は、この10年間、目標とする水準に達する兆しの無いまま推移しています。一方、健康行動の社会生態学モデル9)によれば、日本人の身体活動・運動の実践状況の改善を目指すには、多様な関係者からの働きかけが重要です。例えば、健康づくりに関わる専門家が一人ひとりにあった身体活動・運動の実践方法を推奨していくことは無論のこと、職場管理者が身体活動・運動に適した職場環境を整備していくことや、政策立案者が身体活動・運動を支えるまちづくりを進めていくことも、日本人の身体活動・運動の実践状況の改善に寄与します。「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」には、このような多様な関係者が効果的な働きかけを行ううえでの一助となる情報が、参考情報として計8種類盛り込まれています。例えば、「慢性疾患を有する人の身体活動のポイント」(参考情報(3))や「身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズム」(参考情報(5))は健康づくりに関わる専門家に、「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」(参考情報(2))は職場管理者に、また、「身体活動支援環境について」(参考情報(7))は政策立案者にとって、特に有益な情報と考えられます。
以上の点から、日本運動疫学会の取り組みにも資する「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」に賛同し、様々な立場の関係者が身体活動・運動の促進を目指した取り組みを行う上で参照することを推奨します。
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3.日本運動疫学会の取り組み
日本運動疫学会は「運動および身体活動と健康に関連する疫学研究を発展させ、研究成果を社会に還元し、人々の健康の保持・増進に寄与する」ことを目的に活動している学会です。学会員による研究成果の一部は、今回の改訂を支える重要な科学的根拠としての役割を果たしました。また、今回の改定案作成のための厚生労働科学研究には多くの学会員が貢献し、そのうち複数の学会員が、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会」の構成員を担いました。今後、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を支持・強化あるいは次回の改訂に向けた科学的知見を創出できるよう、本学会では、引き続き、運動疫学研究の発展に努めてまいります。
また、様々な関係者の身体活動・運動促進の取り組みを後押しし、研究成果の社会還元と人々の健康の保持・増進への寄与を実現できるよう、研修講習会・検討会・審議会などへの講師や委員などの派遣、メディアなどからの取材依頼に対する学会員紹介や情報提供などの対応、および身体活動・運動と健康に関する科学的根拠の情報発信などの普及啓発活動を積極的に行ってまいります。
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4.関連Webサイトと用語説明
1) 厚生労働省Webサイト「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
2) 身体活動:安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴う全ての活動(「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」3ページ記載)
3) 運動:身体活動の一部で、スポーツやフィットネスなどの、健康・体力の維持・増進を目的として、計画的・定期的に実施する活動(「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」3ページ記載)
4) 厚生労働省Webサイト「健康づくりのための身体活動基準2013」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf
5) 座位行動(座りっぱなし):座位や臥位の状態で行われる、エネルギー消費が 1.5 メッツ以下の全ての覚醒中の行動(例えば、デスクワークをすることや、座ったり寝ころんだ状態でテレビやスマートフォンを見ること)(「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」3ページ記載)
6) 筋力トレーニング:負荷をかけて筋力を向上させるための運動。筋トレマシンやダンベルなどを使用するウエイトトレーニングだけでなく、自重で行う腕立て伏せやスクワットなどの運動も含まれる(「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」7ページ記載)
7) 多要素な運動:サーキットトレーニングのような有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動などを組み合わせて実施する運動や、体操やダンス、ラジオ体操、ヨガなど多様な動きを伴う運動も含まれる(「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」13ページ記載)
8) 厚生労働省Webサイト「健康日本21(第二次)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html
9) 健康行動の生態学モデル:人々の健康行動には、本人の特性・心理レベルの要因だけでなく、人間関係レベルの要因や、組織環境レベルの要因、地域環境レベルの要因、法律・政策レベルの要因といった、多様なレベルの要因が重層的に影響していることを提唱するモデル(Sallis JF, Owen N. Ecological Models of Health Behavior. In Health Behavior: Theory, Research, and Practice, 5th ed. 2015; 41‒64)
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5.声明に関するお問い合わせ先
日本運動疫学会事務局
〒359-1192 埼玉県所沢市三ヶ島2-579-15 早稲田大学スポーツ科学学術院内
E-mail: jaee.info@gmail.com
ホームページ: https://jaee.jp/
以上
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