近年世界では、従来の性や生殖などに留まらない、ジェンダー平等や性の多様性、自己決定能力などを含む人権尊重を基本とした性教育として包括的性教育が広がりを見せています。一方で、東南アジアの東ティモールでは中高生を含む子どもたちが性に関する正しい知識を得る機会が限られており、望まない妊娠をし、家族から理解を得られず孤立したり、望まない学業の中断など様々な困難に直面しています。
■ 東ティモールの教育事情
東ティモールでは教員の数が限られ、保健科目を専門に学んだ教員がいません。性教育に関しても、教職課程で十分に学ぶ機会がなく、子どもたちに十分に教えられる人材がいません。また生徒の人数に対する教室の数も限られており、生徒の登校は午前または午後の半日というパターンが多く、その結果、授業数も限られており、数学や語学などの科目が優先されます。
さらに、保健教育では生徒の行動変容を期待し、子どもたちそれぞれが教えられた知識を十分に理解することが必要になります。その理解を促進するためには参加型の手法が非常に有用ですが、東ティモールでは参加型の授業を行える教員は少なく、教員主導の一方方向の授業も多いのが現状です。
2022年9月、東ティモール現地新聞で「赤ちゃんを遺棄」というショッキングな見出しに目が留まりました。紙面では、若者や学生、情報の不足する女性の間で、望まない妊娠の結果、新生児遺棄に至ることが報じられていました。深刻な若年妊娠の問題に直面したことで、私たちは現地での聞き取りを始めました。東ティモールの首都であるディリ県の中でも人口が集中し、規模も大きいドン・アレイソ郡のコモロ保健センターでは、一定人数の妊婦が若年だったということが分かりました。若い女性が妊娠という重大なライフイベントを経験し、その後、社会的タブーによって新生児遺棄という悲劇に至るケースがあります。
これは東ティモールだけの問題ではなく、実は日本でも同じような問題を抱えた若者が多くいて、一国の開発途上国に限った問題ではなくありません。
シェアは2023年から、学校の先生が性に関する保健教育を提供するための研修や、地域の医療従事者や行政を巻き込んで、思春期の若者への理解、関わり方を学ぶなど、地域ぐるみで活動を展開しています。その中で先生たちが授業での実践に意欲的になっていったり、活動対象の保健センターを増やしてほしいなどのリクエストが出てきたりしています。
■ 中等学校の教員向け性教育実践研修の開催
現在中学校2校、高校2校をパイロット校として、教員研修を行っており、2023年には「性とジェンダー」「思春期と二次性徴」「月経」のトピックで、各30分程度の授業が行えるような実践的な研修を提供しました。
研修の初日には、恥ずかしく居心地の悪そうにしていた先生たちも、最終日には一生懸命、性教育の授業を実践しようと変化しています。
月経について初めて知ったという男性高校教員は、その日に自宅に戻ると自分の娘たちと月経のことを初めて話したと教えてくれました。
先生たちも、その情報や教育の必要性はどこかで理解しつつ、具体的な知識や方法を知らなかったのではと観察されました。
■ 若年妊婦に関する医療者への研修開催
保健センターに対しては思春期・若年妊婦の特徴や対応に関する研修を行っています。思春期の若者に特化した内容は初めてで、思春期や二次性徴、そこでの健康リスクについて学びました。研修の中では、教材を使った保健教育の練習も取り入れました。特に助産師さんたちは、生き生きと保健教育する姿が見られ、妊婦さんたちに情報を届けたいという意気込みが感じられました。
現地の人々の想いやニーズに寄り添った活動を続けるために、今後の研修開催費や地域への啓発活動費などを4月22日(月)から36日間のシェアはクラウドファンディングクラウドファンディングにて募ることとしました。
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