キヤノンMJは、写真・映像に対して熱意ある新しい才能を見いだし応援するための新たな枠組みとして、2023年4月より、写真・映像作家発掘オーディション「GRAPHGATE」を開始しました。2023年に開催した第1回では、グランプリ1名、優秀賞4名を選出し、5名には副賞の一つとしてキヤノンギャラリーでの個展開催の機会を提供し、このたび全国のキヤノンギャラリーにて「第1回GRAPHGATE企画展」を開催します。キヤノンギャラリー S (品川)では、太陽光パネルの撮影を通じて人と太陽光パネルの共棲を訴えグランプリを受賞した逸見祥希氏の個展を、キヤノンギャラリー銀座・大阪では優秀賞を受賞した奥田侑史氏、稲垣翔太氏、宮田草介氏※1、オカダキサラ氏の個展をそれぞれ開催します。本展では、第1回GRAPHGATEに出品した作品のほか、第1回開催の終了後にさらに自身のテーマを追及して制作した新たな作品などを展示します。本展は、5名が第1回GRAPHGATEを通して語ってきた、これまでの創作活動に込めた熱意や、これからの作品制作に込める情熱や意欲など、その想いを表現する一つの通過点となります。
キヤノンMJは選出した作家の活動を継続的に支援していくとともに、今後も「GRAPHGATE」を通じて写真・映像文化の発展に貢献してまいります。
※1.第1回GRAPHGATE優秀賞受賞時は「宮田裕介」名義、その後2024年に現在の作家名である「宮田草介」に改名。
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会期・会場
第1回GRAPHGATE企画展ホームページ:
https://personal.canon.jp/event/photographyexhibition/gallery/graphgate
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各ギャラリーの概要
〇開館時間:品川 10時00分~17時30分
銀座 10時30分~18時30分
大阪 10時00分~18時00分
○休 館 日:品川 日曜日・祝日
銀座・大阪 日曜日・月曜日・祝日
〇住所・アクセス:品川 東京都港区港南2-16-6 キヤノン S タワー 1F
JR品川駅港南口より徒歩約8分、京浜急行品川駅より徒歩約10分
銀座 東京都中央区銀座3-9-7
都営地下鉄東銀座駅より徒歩2分、東京メトロ銀座駅より徒歩3分
大阪 大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト1
地下鉄肥後橋駅・渡辺橋駅直結、淀屋橋駅より徒歩5分、
JR北新地駅より 徒歩8分、JR大阪駅より徒歩11分
○入 場 料:無料
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各企画展作家情報
逸見祥希 | Yoshiki Hemmi
〇会期:11月14日(木)~12月16日(月)(キヤノンギャラリー S )
〇タイトル:光さす杜の声を聴く(ひかりさすもりのこえをきく)
○作家メッセージ:
「あなたの写真は、私にとって非常に不快です」
今年の3月末に言われた言葉。正面から心臓を貫く一言。体温が指先から失せていく感覚。公民館の小さな会議室で僕は裁かれた。自分自身を弁護することに精一杯で、今誰かに優しくされたら膝から崩れ落ちてしまいそうなほど、震えていた。窓の外は大吹雪だった。
昨年11月にインタビューに協力していただいた活動団体から、僕が執筆した修士論文に対する意見をもらう集会での出来事だった。その方は、自宅の周りに設置された太陽光パネルの被害に苦しんでいた。
グランプリを獲って、僕にはたぶんいくばくかの驕りがあった。迂闊だったし、軽率だった。僕の写真が、場合によっては人を傷つけてしまうことがあると、もっと考慮すべきだった。
今、世界は新しいエネルギー源を求めている。「持続可能な地球環境」という大義のもと、あらゆる場所で電源開発が行われている。僕が主なフィールドとしている山梨北杜市は、日照量が日本一であり、全国でも先駆けて太陽光発電開発が行われてきた。しかし、環境に優しいはずの開発は地域に様々なコンフリクトをもたらした。ルールが十分に整っていなかった頃、北杜市では太陽光パネルが町中に設置され、住民の同意が無いまま住居の目の前にパネルが設置されるといった事案が多々発生していた。住民は景観の破壊や反射光の被害を訴えるようになり、条例の改正を求めて活動団体が結成された。
そういった太陽光発電開発によって新たに生まれる問題と景観について考えるために、僕は写真を撮り始めた。そして、開発によって地域にもたらされる課題を解決するために、僕は大学院で研究を始め、住民の声に耳を傾け続けた。
地道な活動を続けることで、少しずつ、確実に答えに近づいていた。「面白い研究ですね」と言われることも増えた。ありがたいことに賞もいただき、個展を開催させてもらえることになった。修士論文はなんとか完成した。活動を評価されることで、自信もつき、メディアへの露出も増えた。周りからの期待の声は高まり、僕もそれに応えようと必死だった。
その矢先の出来事だった。あの日の一言が、今も頭の中でこだまし続けている。あの日の一言からずっと考え続けている。
僕が撮ってきた写真に、果たして意味はあったのだろうか?人を傷つけてしまう写真や研究なんて、存在しない方がましなんじゃないか?僕が研究や撮影をやめたところで、世界はいつも通り動いていくし、景観は人間の営みと共に変わっていく。開発に対して声をあげた人々もいつかはいなくなり、新たに生まれてくる子どもたちにとっては、太陽光パネルのある景観こそが原風景となっていく。そんなこと気にしなくてもいいと言う人もいる。けれども、住民一人一人の声を無視することはできない。僕はどうすればいいのか。色々なことが急に分からなくなった。
正直言って、研究を続けることも、写真を撮ることも、怖くなった。
だから、誤解を恐れずはっきりと断言したい。この写真展は、僕のそんなどうしようもない問いに対する答えを見つけるためにあると。そして、その答えを探すお手伝いをあなたにして欲しいのです。僕が撮ってきた写真の意味を、どうか、一緒に考えて欲しいのです。この地球で起きていること、地域の開発のこと、そこで暮らす人々のこと、あなたが今使っている電気のこと。電源開発は正義か?悪か?
僕の写真には何が写っているのか、教えてください。
〇プロフィール:
1994年生まれ、青森県三沢市出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。2019年から2022年まで同大学助手。実家のある青森県六戸町で大規模な太陽光発電開発が始まったことをきっかけに、ソーラーパネルの撮影を開始。現在は早稲田大学社会科学研究科に在籍し、写真を通じた太陽光発電の社会的受容性の変化について研究活動を行っている。
HP:
https://yoshiki-hemmi.me/
奥田侑史 | Yuji Okuda
〇会期:7月30日(火)~8月3日(土)(キヤノンギャラリー銀座)
9月3日(火)~9月7日(土)(キヤノンギャラリー大阪)
〇タイトル:家具の映像
○作家メッセージ
映像表現は、絵画や写真などと違い、視聴者の時間を多く占有する。
昨今では、更に過激な表現や飽きさせない⼯夫がなされた劇薬的動画が溢れている。
⾒る側にも、倍速再⽣や⼩説の要約など、タイムパフォーマンスという⾔葉で表現され、⾏間を読むという思慮からは程遠い鑑賞スタイルが散⾒される。
しかし、それは悪ではない。
⽬には⾒えない[時間]という概念そのもの。
そして⾃⼰だけではなく、他者も[同時間軸]を⽣きているということ。
それらを視覚化したものが、第1回GRAPHGATEに出品した「Sundial」です。
本展は、そんな⽬配せすらしない、我々が吐いて捨てる〈過ぎ去っていく時間〉がテーマである。
床に投影された様々な家庭を中⼼に、窓の外を⾒るように過ぎゆく刹那的⾵景が配置されているが、これらはいずれ朽ち、記憶も曖昧になり、消えてなくなる。
「Sundial」は、岸政彦⽒の著書「断⽚なものの社会学」を読んで⾔語化されたと⾔っても過⾔ではない。
岸⽒は、統計学などで数値化されていない、分析できない、⽮⾯に上がらない、我々の悲喜交々を「⽇晒しになって忘れ去られているもの」と表現した。
この展⽰は、そんな過ぎ去る記憶たちをこのギャラリーに⼀時保存し、私という撮影者を通過した[時間]を、観てくれた皆様に持ち帰っていただくことで、いずれ朽ち果てる記憶たちを少しだけ延命する装置となりえるかも知れません。
〈⽇晒しになって忘れ去られているもの〉を慈しみ、他者の時間を考えるきっかけになれば、少しだけ世界が優しくなる気がします。
〇プロフィール
東京都武蔵野市出身
2014年より映像制作を開始し、企画・監督・撮影・編集などマルチに活動。
ジョナサン・グレイザー、スパイク・ジョーンズ、クリス・カニンガムなどが監督したミュージックビデオに衝撃を受け、小津安二郎や市川崑などの“静”的カメラワークをミュージックビデオで表現したいと考えキャリアをスタート。
「人間の内面をどのように映像として表現するか?」ということを共通したテーマとしている。
HP:
https://linktr.ee/yujiokuda/
稲垣翔太 | Shota Inagaki
〇会期:8月5日(火)~8月10日(土)(キヤノンギャラリー銀座)
9月10日(火)~9月14日(土)(キヤノンギャラリー大阪)
〇タイトル:WHY I CAN
○作家メッセージ
今回のテーマは夢です。夢というものは、いろいろな形があります。その夢に対してのアプローチも同様に様々です。夢を叶えようとする人、諦める人、叶えた人、夢を持ってる人、持っていない人など。どれも正しくて間違っていないと、個人的には思います。ただキラキラした夢に対して、憧れは誰しもが持っているのではないかと思います。私もそんな夢を持っている1人です。ただし、残念なことに全ての人が自身が持っている夢を叶えられるわけではないのも現実です。では、どうすれば叶えられる事ができるのだろうと思いました。もちろん夢を叶えられた先人の方たちからのアドバイスはたくさんありますが、個人的にどこか遠いものに感じてしまうことが多々ありました。そこで同じように夢を追いかけており、そして少しずつ近づいている人からそのヒントを得ようと思いました。
今回の被写体は、フィリピン人の21歳のプロボクサーです。彼は幼い頃から一貫して「ワールドチャンピオンになりたい」という夢を持ち続けています。ただし、その人生は困難なことが多く、夢を追うことを諦めるタイミングは多々ありました。彼の人生は幼少期に両親が離婚し、母親と6人の姉と生活することになり、経済的に追い込まれ学校に行くことが難しくなったり、またやっとボクシングができるようになったと思ったらコロナによって全ての試合がなくなってしまったりと、試練がたびたび訪れたのが彼の人生です。それでも彼は諦める事なく、突き進んで現在に至ります。
ここで私が感じたのは、どうして彼はこんなにも強い気持ちを持つことができたのだろうか。私が彼の立場なら、同じようにできる自信はありません。けれども夢を叶えた人たちは、共通してこういった気持ちを持っている気がしています。ではどうやったら、彼らのようになる事が出来るのだろうか。どういった夢ならここまで力を発揮できるのだろうか。何がここまで彼の背中を押しているのだろう。彼が自身の夢を叶えられるかどうかは正直分かりませんが、彼の人生から何かヒントを得ることが出来るのではないかと思い、彼の映像を撮影することにしました。
〇プロフィール
コロナ禍を機にドキュメンタリー映像を見る機会が増えたことで、映像が持つ「伝える力」に興味を持ち、大阪の映像制作会社に就職。アシスタントマネージャー業務を経て、映像を制作するため一年後に独立。その後、結婚式や飲食系のプロモーション映像の制作をメインに活動。現在は自主制作でドキュメンタリー映像に取り組んでいる。
Instagram:@show_time_ina
宮田草介 | Sosuke Miyata
〇会期:9月3日(火)~9月7日(土)(キヤノンギャラリー銀座)
10月1日(火)~10月5日(土)(キヤノンギャラリー大阪)
〇タイトル:川
○作家メッセージ
本展覧会の中核は展示がなされていない壁面の空白にある。
「生命とは流れ、人とは川。」
手首を流れる静脈に抱いた生命のイメージを宮田草介はカメラドローンを用い、冬の釧路湿原に投影した。 「数えきれないほどの流れがつながり合って私たちというかけがえのない可能性を 生み出した。」 宮田のいう”流れ”とは”縁”とも言い換えられる。縁とは仏教の”縁起”に由来し、あらゆる事象に起因があり、つながり合っているという考え方だ。
「そのつながりを遡って想像してほしい。百年、千年、万年。そこに記録はない。けれどその空白には私たちへ流れをつないだ人々の営みが確かに存在する。」
宮田は川と川との空白のつながりを観る人に思い描かせることでそれぞれに流れる壮大な”縁”を感じさせたいと考える。
「周りに自傷する人や生きることに苦しむ人がいた。でもかける言葉が見つからなかった。それをアートでどうにか出来ると考えるほど傲慢じゃない。けれど自分が大きなつながりの中にあると感じられたら、ほんの少し楽になれるんじゃないかと思った。」
生を受けた意味。そして生き続ける意味。
おそらく人が人になった瞬間から生まれたその疑問にはどんな答え合わせをしてもどこか虚しさが残る。だが宮田はこう続ける。
「どの時代の人々もきっと私たち以上に苦しんできた。でもそれでもこうして私たちにつないでくれた。だから出来れば自分も何かをつないでいきたい。たぶん生きる意味なんてそれだけで十分なのだと思う。」
今展で宮田は展示の空白に見えない”つながり”を描く。そのつながりは観る人々によって様々に形を変えることだろう。
〇プロフィール
群馬県高崎市出身。10代で音楽制作に目覚め単身米国ニューヨークへ渡る。以後、音楽アーティストとして活動し海外を遍歴する中で写真表現に出会う。2019年に自身初の個展を開催し、インド・ラダック地方で暮らす少女との長年に渡る交流をテーマにした作品を発表した。新型コロナウイルス感染症の影響を受け帰国後、国内に留まる中、日本の伝統的な芸術文化に傾倒。2022年に俳句をテーマとした作品を発表した。2023年、第1回GRAPHGATE優秀賞受賞。2024年、宮田裕介から現在の作家名へ改名。
HP:
https://www.yusukemiyata.com
オカダ キサラ | Kisara Okada
〇会期:9月10日(火)~9月14日(土)(キヤノンギャラリー銀座)
10月8日(火)~10月12日(土)(キヤノンギャラリー大阪)
〇タイトル:きっと今も光って
○作家メッセージ
「街が見逃した奇跡の現場」をテーマに、街を撮り続けている。
毎日カメラを首からぶら下げて外出し、見たものをストレートに切り取り17年が経った。撮影データは優に100万枚を超えている。
誰の目から見ても現実だと思えるように、合成や過度の加工はしない。その代わりレタッチには多くの時間をかけていて、1枚仕上げるのに1週間以上かかることもある。
「リアルであること」にこだわっているのは、日常の小さな発見は、作品を見てくれた人の人生を豊かにする方法のひとつだと考えているから。
なんてことのない日々が、かけがえのない瞬間の連続であることを、写真に映された光景は教えてくれる。
今回は、今まで撮り溜めた写真の中から再セレクトしたものを展示する。
改めてデータを見直すと、忘れていた写真ばかりだ。記憶に残したい瞬間があまりに多くて、その全てを覚えていられない。だから写真にして残していたのだろう。いつの日か思い出せるように。
積み重なった記録を振り返れば、過去に焼き付けた光に、眩しさが灯る。
その光が、来場してくださった皆様の心にも届くよう、願っている。
〇プロフィール
東京生まれ、武蔵野美術大学卒業。「街が見逃した奇跡の現場」をテーマにストリートスナップを撮り続けている。2011年、第4回1_WALLファイナリスト。2015年、Juna21に入選。2016年、コニカフォトプレミオ入選。2023年、第1回キヤノン「GRAPHGATE」優秀賞受賞。2024年より、えるマネージメントに所属。2024年1月に初の作品集「新世界より」刊行。
HP:
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Instagram:
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