-
イベント概要
・開催概要:「瀬戸内こども調査団in江田島~シラスとオリーブ、島の宝から里海・里山を学ぶ~」公募により集まった小学5年生6年生20名が、県内最大の島、江田島で、里海・里山を調査、海と山の連環、人の手が加わることで豊かな環境を守っていく持続可能な里海の在り方を学びました。
・日程:2024年7月21日(日)~7月22日(月)(1泊2日)
・開催場所:広島県江田島市
・参加人数:小学5年生6年生20名
・協力団体:江田島市地域支援課、広島県環境保健協会、山本倶楽部、深水、広島電鉄
・後援団体:広島県教育委員会、県下市町教育委員会
-
満潮と干潮で姿を変える里海を調査
島に着いた調査団20名は満潮の里海を自らカヌーを漕いで調査、間近で牡蠣の養殖いかだとその周囲の海の生き物や藻場を観察しました。初めてカヌーを漕ぐ団員も、だんだん思いのままカヌーを操るようになり、今まで遠くからしか見たことのなかった牡蠣いかだの大きさや、その周囲に豊かな生態系があることに驚きました。また目線を遠くに移し、島の里山と里海が一体となっている位置関係を知りました。
午後からは自然環境体験学習施設「さとうみ科学館」で江田島の海や生態系についてや調査の心構えを学んだあと、干潮の「島戸川河口干潟」を自分の足で調査しました。
ここは文字通り江田島の里山と里海をつなぐ位置にあり、カニの宝庫として有名な干潟。ぬかるむ干潟の上手な歩き方を教わりながら、子どもたちはすぐに干潟の生物の採集に熱中します。
最初は恐る恐るだった団員も、次第に、より多くのカニの種類を集めて仲間と見せ合い、珍しい種類を発見するたびに講師の西原館長はじめ講師の先生を質問攻めに。広島県では絶滅危惧種であるハクセンシオマネキをはじめ、干潟の中でも場所によって違う種類のカニが見られることを知りました。
さらに干潮の干潟の波打ち際では、広大なアマモ場を発見!早速膝まで海に入りながら、網をふるう団員達。アマモに付くイソギンチャクや、珍しいヨウジウオや、稚魚やエビなどを採集、干潟が「海のゆりかご」と呼ばれる所以を実感しました。
団員たちはこうした里海の干潟の豊かな生態系が海だけではなく山から持たらされる栄養に支えられていることも実体験として学びました。
夜のまとめの会では、学んだ江田島の里海と里山の関係を、農業をしながら環境保護活動を行う地元の環境カウンセラーの講義を受けて整理しました。さらに江田島の里海を底辺で支える植物プランクトン、動物プランクトンを実際に顕微鏡で観察し、生態系の仕組みや海の水質の変化について知りました。
-
里海の名産シラスと里山の新名産オリーブから学ぶ
2日目は1日目に学んだ江田島の里海で獲れる名産シラスについて調査。今が最盛期のシラス漁を間近で見学しました。シラス(カタクチイワシの稚魚)がどのような魚なのか。動物プランクトンを餌に育つこと。昔に比べて漁獲量が伸び悩んでいること。禁漁日を設け漁師さんが獲りすぎを防いでいること、不漁の原因は、海の貧栄養化や海水温の上昇などいくつかの原因があるということを知り、江田島の里海に今、確実に変化が起きていて、それはどうやら海だけの問題ではないことを知りました。そして、県内最大の漁業の島の異変は街で暮らす我々にも他人事では無いことに気付きました。
午後からは、里山に目を向け、今江田島で市を挙げて生産に取り組んでいる「オリーブ」について学びました。かつてかんきつ畑だった農地が、高齢化や過疎化によって耕作放棄地となり荒れる中、気候が適しているオリーブに着目して栽培が始まったこと。実やオリーブオイルを加工することで、新たな産業を生み出していること。産業が興り、島が活性化することで、里海にも里山にもしっかり人の手がかかわることができる「循環」が成り立つことを知りました。
そして、オリーブが育てられている意味を知った上で実際にオリーブ畑を訪れ、廃棄される牡蠣殻を有効利用できるため今注目されつつある広島の牡蠣の殻を原料に作られた肥料を、オリーブ畑にまく農作業を手伝いました。オリーブが島の救世主となってくれることを祈りながら。
-
島の名産、島の宝をどう伝えていくか?
2日間の調査で、団員たちは、里海も里山も、そこに暮らす人の生活が成り立たないと守っていけないことに関心を持ちました。「瀬戸内こども調査団in江田島」の団員は、今回の学びを「江田島新聞」にまとめ、広島電鉄の特別電車に掲出する予定です。この電車の車体は団員たちが描く江田島の里海・里山の絵やイラストで飾られる「世界に一つしかない」電車になる予定です。
さらに、団員たちは、今回学んだ「島の宝」シラスとオリーブを使ったコラボ商品の開発にも取り組みます。9月に島を再訪し、今回調査し肥料をまいた畑のオリーブの実を収穫、オリーブオイルを搾油します。そして開発するシラスとオリーブのコラボ商品が江田島の新名物になり、一人でも多くの人に島の里海と里山の魅力が伝わるように、パッケージのデザインを考える予定です。
完成した商品は、島内はもちろん、広く販売できることを目指します。
-
参加した子ども・保護者からの声
【団員(子ども)本人】
・2日間では短く感じた。3日間など、もっと学びたかったから。
・さとうみ科学館の館長さんの授業が印象的でした。干潟の生き物の話は、知らないことが多くて特に面白かったです。
・専門家の先生にたくさん教えてもらえました。意見交換では、自分とは違う意見の人もいて、そういう考えもあるんだと思えて、おもしろかった。
【保護者】
・息子は非常に貴重な経験をさせていただきました。ありがとうございます。盛りだくさんな内容をギュッと濃縮してくださっており、どれも魅力的なプログラムだと感じました。干潟や牡蠣いかだなどを観察できた事が、本人にとって最も興味深かったようです。普段なかなか見せてやることのできないことなので良かったなと思います。
・普段はできないようなイベントを、盛りだくさんのスケジュールで勉強させていただいて、本当に楽しかったようです。帰ってから、学んで来たことを詳しく話してくれました。一つ一つがしっかり記憶に残っているようでした。
・2日間を通じて学んだことを話してくれました。特に干潟の生物の観察が楽しかったようで、普段から生き物に興味があり図鑑が好きなのですが、本物の生物を観察できた事に満足していました。プランクトンについても、講義を受けて興味をもったようで今後の学びに繋がるといいなと感じました。
【講師・協力団体】
・子どもたちに自分たちの仕事(シラス漁)を学んで楽しんで味わってもらえたのであれば大変うれしい。
・今後、地元の名産をテーマに学び、今後商品開発まで進めば、これはすでに「六次化産業」の実践です!
・話したことを子どもがしっかり受け止めてくれたのであれば。子どもたちの学びの成果の新聞が今から楽しみです。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人瀬戸内プロジェクトin広島
URL:
https://hiroshima.uminohi.jp/about/
活動内容:身近で我々の生活と密接に関係し、独自の歴史と文化をはぐくんできた「瀬戸内海」をフィールドに、未来へ美しい瀬戸内海を引き継ぐための活動を行っています。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。