1.取り組みの背景
農林水産省生産局畜産部畜産振興課が公表した資料<*2>によると、2020年(令和2年)の畜産経営に起因する苦情発生戸数(1386戸)の内容として、悪臭関連が52.2%と最も多くなっています。苦情発生戸数および苦情発生率でも養豚が高い傾向にあり、豚舎と近隣民家が比較的近い距離にある「都市型畜産」においては、重要な事業課題となっています。
<*2> 一般社団法人 畜産環境整備機構「畜産臭気対策マニュアル」
https://www.chikusan-kankyo.jp/newhomepage/manual/akushumanual.pdf
NTT東日本 神奈川事業部では、2019年より神奈川県養豚協会、神奈川県畜産技術センターとの「飼養環境の見える化」(温湿度データや豚の衛生環境等監視)実証実験を皮切りに、「センサーを用いた適切なCO2濃度を維持・管理方法の見極め」「AIカメラを活用した体重・体格・肉質の計測および推定算出、飼育状況のデータ活用などのシステム化」「プラチナバンドのIoT向けWi-Fi 「IEEE 802.11ah」を活用した無線環境構築」「『咳音検知技術/ SoundTalks® 』<*3>を活用した飼養豚の体調管理」など、スマート畜産に関する実証実験を実施してきました。<*4>
<*3> 提供元:ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン株式会社
<*4> NTT東日本 神奈川事業部 報道発表サイト
https://www.ntt-east.co.jp/kanagawa/information/
この度、都市型畜産の重要な事業課題解決に貢献すべく、上記の取り組みにて連携実績のある株式会社フルノシステムズ<*5>の協力を得ながら、横山養豚をフィールドとして、豚舎内の温湿度・アンモニア臭気濃度等をモニタリングする嘉創株式会社のシステム「AIOTICA」を活用した環境対策(温湿度<*6>、アンモニア計測モニタリング)の検証に至りました。
<*5> 株式会社フルノシステムズ 公式サイト
https://www.furunosystems.co.jp/
<*6> 920MHz無線センサはセイコーインスツル製『ミスター省エネ』を活用
https://www.sii.co.jp/wsn/index.html
2.検証概要
(1)期間:2024年6月1日 ~ 2024年11月30日<予定>
(2)場所:横浜市泉区和泉町5049
(3)検証項目:温湿度、アンモニア臭気濃度、風向・風速、豚の体格・体温
(4)役割分担・検証環境イメージ図:
(5)機器設置模様:
<豚舎内気流シュミレーション図>
<データ分析画面イメージ>
3.横山養豚社長 横山 清コメント
横山養豚は、横浜の地で創業して60周年が過ぎました。横浜という土地柄、都市型養豚を念頭に置いた環境整備・臭気対策が非常に重要だと考えています。また、良い飼育環境こそがおいしい豚肉をつくる重要な要素でもあります。
横山養豚は臭気対策として県内でも数少ないオゾン噴霧装置をすでに導入していますが、今回の取り組みを通して、豚舎内の環境を見える化・数値化をすることにより、今までの臭気対策の検証とともに、より良い都市との共存を目指していきたいです。消費者に支持され、地域に貢献する産業として、また、もっとおいしい豚肉を市内の方々に提供できるように発展していくような取り組みになることを期待しています。
4.今後の展開
本実証実験の結果を踏まえ、「都市型畜産」における最適な豚舎環境づくりに向けた、周辺住民への臭気対策や豚舎内の環境対応に取り組み、畜産業界の更なる発展に貢献していきます。