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イベント概要
・開催概要
子どもたちにとって身近な食べ物である「すし」を起点に、富山湾や富山の魚・水・米について学び、すし文化を未来に残していくためにできることを考える宿泊学習イベント
・日程
2024年7月25日(木)・26日(金)・27日(土)
・開催場所
富山県内各所(富山市、魚津市、滑川市、黒部市、射水市、氷見市)
・参加人数
富山県内在住の小学5・6年生 20名
・協力団体
ほたるいかミュージアム、ユウ・アクアライフ、ダイビングショップ海遊、毛勝の郷シェルピース、魚津漁業協同組合、原信 魚津店、皇国晴酒造、富山県農業研究所、松本魚問屋、氷見海鮮民宿マリンタッチ、氷見高校海洋科学科、富山県栽培漁業センター、新湊すし塾、東京海洋大学 ほか
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水中ドローンで深海の生き物を観察
最初に向かったのは、ホタルイカの街として知られる滑川市。普段はなかなか見ることができない、富山湾の深海にすむ生き物を水中ドローンで観察します。クルージングを行う観光遊覧船「キラリン」に乗り込み、富山湾の特徴についての学習からスタート。立山連峰から富山湾まで高低差4,000mにもおよぶ唯一無二の地形や、沿岸表層水・対馬暖流系水・日本海固有水の3層で構成されていること、日本海に分布する約800種のうち約500種の魚が生息していることなど、子どもたちは学習ノートにメモをしながら知識を身につけました。
観察地点に到着し、いよいよ水中ドローンを海の中へ!船内のモニターに海中の様子が映し出されると、子どもたちは「何がいるかな?」と大興奮。深く潜るほどに水温も下がっていき、15分ほどかけて水深220m・水温7℃の海底に到達。大量のクモヒトデをはじめ、アカモミジヒトデ、トヤマエビ、ウニ、キュウリエソなど、さまざまな生き物の姿を見ることができました。
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シュノーケリングで海の生き物を探そう!
クルージングで船の上から見た富山湾。実際に潜って、どんな生き物がいるかを調査しました。まずは、海で安全に楽しく遊ぶための注意点やライフジャケットの着用方法について、富山県ライフセービング協会の宮田さんにレクチャーしていただきました。そして、ダイビングショップ海遊の木村さんによる指導のもとシュノーケリングを体験! 最初はなかなか生き物を見つけられず苦戦していた子どもたちですが、岩場や流木の下を中心に探すと次々に発見。コケギンポ、ヒメハゼ、メジナの幼魚など、1時間で数種類の魚を見つけることができました。子どもたちは海で遊ぶ楽しさを味わうと同時に、富山湾の豊かさを肌で感じた様子でした。
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富山の郷土ずし・押しずしづくりに挑戦
多くの郷土ずしが根付いている富山県。1日目の夜は、そのひとつである「押しずし」づくりに挑戦しました。作り方を教えてくださったのは、魚津市・片貝地域振興会のみなさんです。主に県内の新川地区で親しまれている押しずしは、ほぐした焼きサバを酢飯でサンドするのが特徴。今回は、玉子や鶏のそぼろを挟んだり、大葉やかまぼこをトッピングしてアレンジを楽しみました。待ち時間は富山の郷土ずしについて勉強。ますずしや笹ずし、かぶらずしなど、どの地域でどんな時に食べられているのかを学びました。完成した押しずしは夜ご飯に。「家でも作ってみたい」という声もあり、富山のすし文化を未来に受け継ぐ意識が芽生えた時間でした。
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活気ある競りを見学し、漁港の役割を知ろう
2日目の早朝、3時に起床して向かったのは魚津漁港。魚津漁業協同組合の浜積組合長に、漁港の中を案内していただきました。この日はいつもと比べて水揚げ量が少なかったそうですが、競り場にはウマヅラハギ、タチウオ、アマダイ、ケンサキイカ、岩牡蠣など、多種多様な魚が並んでいました。浜積組合長から「なぜ魚に神経締めをするの?」「札やタグの意味は?」などと問題を出されると、みんなで一生懸命考えながら答えていました。また、海水温の上昇などの要因から、とれる魚の種類や時期が変わってきていることも教えていただきました。最後に、朝5時から始まる競りを見学。前日に入札の仕組みについて予習していた子どもたちですが、生で見る競りの活気に圧倒されていました。
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朝どれの魚がスーパーに並ぶまでを追跡!
続いて訪れたのは、地域密着型のスーパーマーケット・原信の魚津店。地元の魚が売り場に並ぶまでの流れを学習します。富山県は漁場が近いことから「水揚げされてから市場、仲買人を経て、お店に到着するまでの時間が短い」と前田店長。実際に売り場を見学すると、地元で今朝とれた魚が午前10時台には並んでおり、子どもたちは「さっき見た魚だ!」と感激していました。原信では、魚をお刺身やお惣菜などにすることで食べやすくしているほか、食品ロスを減らすための取り組みにも力を入れているそうです。みんな前田店長の話に終始興味津々で、「よく売れる魚は?」「以前に比べて仕入れが難しくなっている魚は?」「売れ残った魚はどうしているの?」と、質問も止まりませんでした。
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富山が誇る水・米。おいしさのヒミツは?
富山の魚の新鮮さを体感した後は、すしを構成する水・米のヒミツにも迫ります。まずは「水」。地質学者の巽さんに、富山の水がおいしい理由を解説していただきました。軟水から硬水まで6種類の水を飲み比べて、成分によって味わいや口当たりが異なることを知った子どもたち。富山の水は「飲みやすい」「おいしい」といった感想が多く聞かれました。さらに、黒部市生地の清水(湧水)をめぐり、森・川・海のつながりを肌で感じました。
続いては「米」。富山米新品種の開発などに取り組んでいる富山県農業研究所を訪れました。米どころとして知られる富山県では、立山連峰からの豊かで清らかな水により、おいしい米が育てられています。とくに近年の猛暑にも耐えられる品種として開発された「富富富」は、冷めてもおいしいことが特徴だそうです。子どもたちは圃場の見学や米の食べ比べを通して、富山の恵まれた自然環境と、同研究所の職員や農家のたゆまぬ努力を知りました。
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高校生に学ぶ!海の課題を解決する取り組み
最終日の朝は氷見市の海岸へ。近年、増えすぎたムラサキウニが海藻を食べ尽くしてしまう「磯焼け」が県内でも問題になっています。氷見高校海洋科学科の生徒たちはこのウニを駆除する活動を行っており、その様子を見学しながらお手伝いしました。また、高校生は捕獲したウニを廃棄野菜で育て、商品化することを目指しているそうです。富山県栽培漁業センターの実習室で行っている養殖の様子を見学し、活動についての講義も受けました。「この活動が広まってウニに価値がつくようになれば、磯焼け問題の解決にもつながる」と同校の中木先生。身近な海の問題にふれると同時に、年の近い高校生の活動を知ることで、自分たちにできることは何かを考えるきっかけになりました。
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職人に変身して、自分ですしを握ってみよう
3日間ですしに関するさまざまなことを学んだ子どもたち。今度は職人になりきって、すしを自分で握ります!握り方を教えてくださったのは、新湊すし塾の坂橋さん。テーブルにはマグロ、イカ、サーモンなど、8種類のネタと酢飯が用意されました。坂橋さんがお手本を見せたあと、子どもたちも実際に握っていきます。シャリの重さを計って、握って、ネタをのせて…。手順通りにしないとシャリが崩れてしまうなど、普段何気なく食べている握りずしの技術の難しさを感じました。だんだん手つきも慣れていき、無事に握りずしが完成!握りたてを頬張る嬉しそうな表情が見られ、なかには「将来すし職人になりたい」と話す子もいました。
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オリジナルラッピング電車のデザインに挑戦!
イベントの最後は、3日間で学んだことをアウトプットする時間です。クリエイティブディレクターの居場さん、デザイナーの金森さんを講師にお招きし、富山のすしの魅力を伝えるオリジナルラッピング電車のデザインに挑戦しました。
今回は、富山湾の魚がのったすしと、それを構成する魚・米・水などをちぎり絵で表現することに。富山湾を代表するブリ、ホタルイカ、白エビ、ベニズワイガニなど、子どもたちから「これを描きたい!」という積極的な意見があがりました。担当する題材が決まったら、鉛筆で下絵を描いて、ちぎった折り紙やチラシを貼っていきます。3日間で見たり食べたりしたものから想像を膨らませ、個性あふれる作品を完成させました。子どもたちのちぎり絵がデザインされたラッピング電車は、11月1日の「すしの日」に合わせて富山市内で運行開始される予定です。
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参加した子どもからの声
・はじめてシュノーケリングを体験しました。小さな魚でしたが、目の前で泳いでいるのを見ることができて嬉しかったです。(小学6年生・女子)
・牛乳パックを使って押しずしを作れることにびっくりしました。家でも挑戦して、富山の郷土ずしの文化を残していきたいと思いました。(小学6年生・男子)
・漁港の仕事についてよくわかりました。とくに、昔から続いているサンマ漁船の話が印象に残りました。いろんな魚を見ることができて楽しかったです。(小学6年生・男子)
・漁港で見たアマダイやウマヅラハギが午前中のうちにスーパーに並んでいるのを見て、富山湾の近さを感じました。スーパーがSDGsに取り組んでいることも知りました。(小学5年生・男子)
・ちぎり絵では、富山の魚を代表するブリと白エビを担当しました。自分の作品が電車になって街を走るのが楽しみです。(小学5年生・女子)
<団体概要>
団体名称:一般社団法人とやまミライラボ
URL:
https://www.bbt.co.jp/toyama-mirailabo/zaimu/
活動内容:富山県の豊かな海を未来に残すため、海と人をつなげる活動や子どもを中心とした海洋教育を推進する。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。