7月のFリーグ月間MVPは、バルドラール浦安の石田健太郎選手が受賞。キャプテンであり、攻守におけるコントロールタワーとして、リーグ最小失点で首位に立つ浦安をけん引。パスやフリーランニングを駆使したチャンスメイクのみならず、自らがフィニッシャーとなることで、チームに勝利をもたらす石田選手の受賞インタビューをお届けします。
インタビュー=本田好伸(
SAL
)
編集=伊藤千梅(
SAL
)
※インタビューは2024年8月9日に実施しました
タケ(本石猛裕)は見ないで出してもそこにいる
──7月の月間MVPの受賞おめでとうございます!率直な気持ちはいかがですか?
ありがとうございます。とは言え、特別な結果を残したわけではないので不思議な感覚ですね(苦笑)。
──SNSなどでも、石田選手の選出は多くのみなさんが“納得”という反応でした。
チームが勝っているので、その結果が一番大きいと思います。みんなが頑張ってくれて、たまたま僕がキャプテンというだけ。バルドラール浦安としての受賞だと思います。
──開幕5連勝からスタートして、首位で中断期間を迎えました。今季の好調の要因は?
昨シーズンと比べて、今シーズンはディフェンスで我慢することが多いと感じています。町田戦や立川戦はかなりシュートを打たれていましたし、相手に押し込まれる場面もありました。そんななかで、1回のチャンスをモノにできていて、これまでと違う戦い方でも勝てるようになっているのは大きいと思います。
──チャンスを決め切るために意識していることはありますか?
個人的にはそんなに意識していなくて、なんか入るなという感じです(笑)。
──小宮山友祐監督が指揮を執って5年目です。どんなチームづくりをしてきましたか?
新加入選手が入ったことで、昨シーズンとは違う戦い方になりました。自分のセットはレアンドロ、カズ(菅谷知寿)が入りましたけど、比較的、今までとは変わらないですね。もう一つのセットは、これまでいなかった左利きのロドリゴが入って、より縦に速いフットサルになっています。監督からは「早く相手コートでプレーしよう」と言われていたので、今シーズンはその点をより意識づけできていると思います。
──石田選手のセットもそれほど変わらないということですが、レアンドロ選手と菅谷選手も、これまで組んできたセットとはタイプが異なる印象です。
カズは、以前から相当うまい選手だと思っていました。同い年なのでかなり前から知っていますが、どのチームでも彼は活躍していましたし、浦安でもすぐにフィットして自分のプレーを出しています。左利きの選手がいなくても、こっちのセットは両足を使えるカズがいて、左足でパスを出せることはすごく大きいと思います。
レアンドロはこれまでいろんな国のフットサルを経験してきて、今は日本のフットサルに合わせようとしているところだと思います。技術がありますし、ボールを落ち着かせられる選手なので、彼が後ろにいる時は僕が今までより前線に走ることを意識しています。あとはドリブルも武器なので、彼が仕掛ける時はバランスを取るようにしています。
──ゴールを量産中の本石猛裕選手との連係で意識していることはありますか?
僕は常に前を見てプレーするようにしていて、タケも僕のパスを出すタイミングをわかっています。見ないで出してもそこにいる感覚は、大学時代からの積み重ねですね。
自分の選択で味方を動かすことはできる
──石田選手はこの7月、しながわ戦の第1ピリオド終了間際、残り34秒で同点に追いついた場面や、立川戦の先制点など重要なタイミングでゴールを決めています。
しながわ戦は、得点から1分間くらいで逆転されてしまって、なかなかクロ(黒本ギレルメ)のところまでシュートがいきませんでした。ただ第1ピリオド終了間際はかなり押し込めていて、スカウティングのとおりに戦えていました。最後、セットプレーでも素早いリスタートから決めることができたので、狙い通りという感じでしたね。
──立川戦は、吉田圭吾選手のパスから先制点を決めましたね(
https://x.com/fleague_t/status/1822551236060840165
)。
※FリーグTVで石田健太郎選手のスーパープレーを公開中(
https://fleague.stores.play.jp/videos/4730a55e-c991-44a0-a7af-3954d73eb8a3)
あれは常に狙っている形で、浦安で積み重ねてきたプレーが出たと思っています。あの時は、タケが降りてきてクワトロ気味になっていて、僕が一番下からタケにパスを出した時に、レアンドロが間に入っていくのが見えました。
そのタイミングで僕が抜けると間のレアンドロが詰まってしまうので、少し我慢してタケとレアンドロがパス交換して相手の目線がボールに集まった瞬間、前のスペースに抜けようと考えていました。
タケとレアンドロにはリターンしてくれと思いながら見ていたらその通りやってくれたので、自分がタイミング良く抜けられました。タケは僕が抜けていくタイミングは常に見てくれていますし、パスがうまいのでボールが来るかなと思っていました。
ただあの時、僕をマークしていたのは25番の選手(岩本大輝)で、そこは走り勝っていましたけど、19番の(中村)充がはさみに来ていたのも見えていました。
なので、タケから外にいた(吉田)圭吾くんに出したほうがいいんじゃないかなと思いつつもパスが来たので、フリーだった圭吾くんにダイレクトで出しました。自分でコントロールできていない動きもありますが、頭で考えていたプレーが思い通りにいったシーンでしたね。
──ちょっと待ってください。今の描写、全部覚えているんですか?
そうですね、覚えています。
──後で映像を見て言語化したのではなく、試合中の映像として入っている感じですか?
そうですね。試合のことはけっこう、普通に残っています(笑)。
──ゴールに絡んだシーンということでもなく?
そうではないですね。相手を含めて誰が出ていたとか、自分が出ている時間のことは覚えています。フットサルは10人しかいないので、それなら覚えられるかなという感覚です。
──まるでサッカーの中村憲剛さんみたいです。
いやいや、サッカーは人が多いですから、もっとすごいですよ。
──瞬間的に考えているんですか?それとも試合中は感覚的に?
フットサルは人がどこにいるかを見て動かないといけないので、ボールを持った時には考えています。それに、この競技はある程度、似たような場面が多いですから再現しやすいと思います。そういう意味では、フットサルは経験則が大事なスポーツだと感じますね。
──石田選手はまさに司令塔という感じです。どんなイメージで味方を動かしますか?
時と場合によりますけど、さっきお伝えした立川のシーンは、タケが降りてくる動きは、僕がコントロールできない部分です。そこはタケが主導して始まったものですけど、そうなった後の動きはある程度、自分の選択で味方を動かすことができると思います。パスでもいいですし、自分が動くことでも動かせるようにとは考えています。
──監督からはものすごく多くのものを求められそうですね。
いえ、伝えられていないだけかもしれないですが、それほど多く、なにかを求められてはいません。それよりも自分は、結果を出さないといけない選手だと思っています。言葉で鼓舞するタイプではないので、試合中のプレーを意識しています。
──石田選手にとって「結果を出す」とは?
もちろん、点を取ったり、チームが勝てたりすることが一番いいですね。ただ、自分の理想としては、常にパフォーマンスに波がなく、どの試合でもハイクオリティでプレーできることを目指してやっています。それはゴールだけでなくて、他のプレーもすべて。どんな試合でも自分のプレーを一定の水準より高いところで出せたらいいなと考えています。
──イメージしている選手はいますか?
代表などでも一緒にプレーした西谷(良介)さんや(吉川)智貴さん、アルトゥールからもいろいろ学びました。その3人は目指しているというか、すごく影響を与えてくれた人たちです。浦安では(星)翔太さんや中島孝さんにも教わりましたし、お世話になった選手はいっぱいいます。いろんな選手からいいところをちょっとずつ盗んでいるような感覚ですね。
小学校から高校までのサッカーで培ったもの
──自分が主役になるというより、チームをプレーでまとめるタイプですよね。
サッカーの時から、自分でガツガツいくタイプではありませんでした。最近はフットサルもよりフィジカル強度を求められるスポーツになっていますし、Fリーグも若い選手など、速くて強い選手はたくさんいます。自分もそこに劣らないようにトレーニングする必要はありますけど、そんな状況だからこそ、頭を使う選手が重要だとも思っています。僕はフィジカルが五分五分なら最後は技術が高いほうが勝つと考えているので、頭の部分も大事ですね。
──帝京長岡高校でも1タッチ、2タッチのプレーを大事にしていた印象です。
実際、サッカーとやっていることは変わっていません。小学生から一緒だったY.S.C.C.横浜の高橋響もそんな感じでしたね。僕らは高校時代、チームで足が遅くてビリの2人でした。彼は高校生の時にかなり背が伸びましたが、中3の時は2人とも小さかったので、フィジカルが強い選手に負けないように話をしていました。足が遅く、体も細かったので、あの時期はかなり頑張りましたし、その時に1人じゃなくて良かった。ずっと同じポジションでしたが、ダブルボランチで一緒に出ていて、ボール回しを意識していましたね。
──今夏の帝京長岡は、サッカーでは全国高等学校総合体育大会でベスト4、フットサルでは全日本U-18フットサル選手権大会で3位。いずれも全国上位の成績を残す強豪ですが、高校年代で培ってきたものはありますか?
かなり大きいと思います。僕は小学生の頃から帝京長岡の下部組織(と言える協力クラブ)の長岡JYFCにいて、いろんなものを積み重ねてきました。それでも、Fリーグやその先の日本代表で世界と戦うには、もっと際立つ武器が必要です。自分自身、すべてのプレーを理想に近づけたいですけど、ゲームメイクやフリーランニングやパスだけではなく、突き抜けたものを身につけないといけないなと、課題を感じています。
最後にチャンピオンであればいい
──今年4月、石田選手も日本代表として出場したアジアカップはグループステージで敗退し、ワールドカップの出場権を逃してしまいました。大きな失意があったなか、1カ月余りで開幕を迎えるにあたり、どのように新シーズンに向かっていったのでしょうか。
本当なら、今頃はW杯に向けて準備をしていたはずでしたから、アジアカップの敗退は本当に大きな責任を感じています。ですから、すぐに切り替えられないまま5月中旬のオーシャンカップが始まりました。それでも、浦安のみんなが「代表とチームは違う」と伝えてくれたので、そこは割り切って、浦安で成長して、代表で取り返そうと考えました。
アジアでも世界でも、なにか一つでもできないことがあると、勝つことはできません。守備だけ、攻撃だけではなく、全部できないといけない。だから僕はすべてのプレーの質を高められるように、日々の練習からやっていくしかないと思いながらスタートしました。
──直近の代表活動がなくても、やることは変わらない。
そう考えています。もう一度、自分を見つめ直して、次に活動が始まった時にいいパフォーマンスができればいいと思います。代表がなくても、Fリーグを戦うモチベーションに変わりはないですし、一人の選手として自分を高めるためにピッチに立っています。
──高橋健介新監督は、石田選手にとってどんな存在ですか?
僕が大学生の時に大学リーグを見に来てくれましたし、浦安に入ってからも1年間、監督としてお世話になりました。健介さんは僕の今できるプレーのほとんどを教えてくれたと言っても過言ではありません。その監督が代表にいるので、いいパフォーマンスを続けてそこに入れるように頑張って、代表で一緒に活動できるように努力したいと思います。
──このFリーグ中断期間はどのように過ごしますか?
オフもあるので、体を休めながら、再開初戦のホーム・名古屋戦に臨みます。自分たちは首位に立っていますけど、ファイナルシーズンを入れると27試合ですから、半分も終わっていません。ここに立ち続けられたら、選手としてもチームとしても、もう一段階レベルアップできると思います。負けられない試合が続くので、メンタル面も含めて準備します。
──今シーズン、ここからまたどんな気持ちで戦いますか?
1位でいることも大事ですけど、最後にチャンピオンであればいいと思っています。今シーズン自分が目指している数字はなく、個人としても、チームとしても、目標は「優勝」です。そこに向けて自分の力を出したいですし、戦いを進めるなかでもっと成長したい。チーム全員がもっと貪欲になって、練習から頑張りたいと思います。
※取材協力:
SAL
(
@sal_japan
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節:
第6節
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