株式会社河出書房新社(東京都新宿区/代表取締役 小野寺優)は、世界文学を代表する作家・ジェイムズ・ジョイスが最後に遺した文学の最終到達点であり、その難解さから「翻訳不可能」といわれた文学史上最大の迷宮的奇書に、翻訳家・柳瀬尚紀が挑んだ画期的訳業『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ』、同『Ⅲ・Ⅳ』を、2024年8月26日に復刊いたします。
■復刊告知に大反響! 限定セットが全国書店へ大量予約
本年3月、柳瀬尚紀訳『フィネガンズ・ウェイク』復刊の報を受け、SNS上には「驚き」「文学的事件」といった声が多数投稿。全国の書店からは「狂気の沙汰すぎて素敵」(紀伊國屋書店新宿本店Xアカウント)といった興奮と期待の反応が寄せられました。
1924年『フィネガンズ・ウェイク』の一部が初めて雑誌掲載されてから100周年を迎える記念すべき復刊にあたり、『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ』、同『Ⅲ・Ⅳ』の美麗ケース入り特別セットを限定販売(定価11,000円)。文学史上に燦然と輝く金字塔の復刊を喜ぶ多くの読者から予約申し込みが集中しました。
ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』(鼓直訳)の文庫化とともに、「2024年海外文学最大のトピック」といわれる今回の復刊。書店の海外文学・翻訳文庫売場は近年まれにみる盛り上がりを見せています。
■文学の極北『フィネガンズ・ウェイク』、個人完訳という空前絶後の偉業
僕は夜の本を書こうとした。曖昧になるのはあたりまえだ。
──ジェイムズ・ジョイス
『フィネガンズ・ウェイク』は、『ユリシーズ』が刊行された翌年、1923年3月より執筆を開始。1924年「トランスアトランティック・レヴュー」4月号で作品の一部が「進行中の作品」(Work in Progress)という仮題で初めて発表され、以降「トラジション」他、様々な雑誌で断片的に掲載。執筆開始から約17年を経た、1939年5月『フィネガンズ・ウェイク』としてロンドンとニューヨークで刊行されました。
他のジョイス作品と同様、アイルランド首都ダブリンを舞台に、酒場経営者ハンフリー・チンプドン・イアウィッカーの一家を中心に展開する本作は、パートⅠからパートⅣの四部構成。日本国内では1991年9月『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ』、1993年10月『フィネガンズ・ウェイク Ⅲ・Ⅳ』2分冊での刊行となりました。
本作には、英語による小説ながら、フランス語、ドイツ語からゲール語、日本語まで、60を超える言語が散在し、『ユリシーズ』でも用いられる独特の言語表現、語法が随所に見られます。もじり、語呂合わせといった言葉遊び、意味が重なる合成語、頭韻、擬声語などを自在に操り、聖書、神話伝説、過去の文学作品といった要素が縦横に入り交じる「ジョイス語」は、読者の理解を一層困難にさせるのみならず、翻訳を完全拒否しているともいわれています。
名訳者と言える人は何人もいるが、化け物と呼べるのは柳瀬尚紀だけだ。
──柴田元幸(『フィネガンズ・ウェイク Ⅲ・Ⅳ』帯文より)
柳瀬さんの翻訳は、日本語の表記の多様性をじつにダイナミックに利用しています。はじめ意味において不連続に感じられた文章が、それでもひとつごとの言葉に向けての楽しみにみちた集中のおかげで、そのうち意味のしっかりした脈絡がつかめてきます。
──大江健三郎(「門前の構造」『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ』文庫版序文より)
柳瀬尚紀氏から『フィネガンズ・ウェイク』翻訳の詳細を聞かされたのは他の読者に味わえぬ至福であった。
──筒井康隆(『フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ』帯文より)
柳瀬尚紀氏は、文明史、世界史、地誌、夢の記録、宗教哲学といった重層的なテーマ、物語が絶えず変幻し、循環し続ける「文学の極北」と評される本作と20年以上向き合い続け、漢字・ひらがな・カタカナ・ルビという日本語表現を駆使しながら、意味と同時に音・リズムを重視した日本語独自の訳を見事に完成。
個人による完訳という当時世界初の偉業を成し遂げた柳瀬氏へ、国内外から惜しみない賛辞が贈られました。
本作の雑誌発表から100年、日本語での全訳完結から30年を記念しての今回の復刊では、『フィネガンズ・ウェイク Ⅲ・Ⅳ』巻末に、文庫版刊行時に寄稿された、大江健三郎「門前の構造」(文庫版Ⅰ巻序文)、小林恭二「フィネガンの迷宮」(文庫版Ⅱ解説)、高山宏「この訳、機知甲斐ざたにつき」(文庫版Ⅲ・Ⅳ解題)を収録。
数千年にわたる人類の全歴史を、ダブリン郊外で酒場を営む家族の一夜に圧縮した抱腹絶倒、複雑怪奇な大迷宮を存分にご堪能ください。
■著者紹介
[著]ジェイムズ・ジョイス James Joyce
1882年生まれ。アイルランドの作家。20世紀の世界文学を代表する作家。ダブリンのユニヴァーシティ・カレッジ卒業。22歳で母国を出てからは、パリ、トリエステ、チューリヒなどを転々とする。おもな著書に『ダブリナーズ』『若い芸術家の肖像』『ユリシーズ』『フィネガンズ・ウェイク』など。1941年没。
[訳]柳瀬尚紀 やなせ・なおき
1943年根室市生まれ。早稲田大学大学院修了。英米文学翻訳家。主な訳書に、J・ジョイス『ユリシーズ1-12』『フィネガンズ・ウェイク』『ダブリナーズ』、L・キャロル『不思議の国のアリス』、J・L・ボルヘス『幻獣辞典』、E・リア『完本 ナンセンスの絵本』、R・ダール『チョコレート工場の秘密』、D・バーセルミ『雪白姫』、D・R・ホフスタッター『ゲーデル、エッシャー、バッハ』など。おもな著書に、『日本語は天才である』『翻訳はいかにすべきか』『フィネガン辛航紀』『辞書はジョイスフル』『ユリシーズのダブリン』『翻訳困りっ話』など。2016年没。
■書誌情報
書名:フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ
著者:ジェイムズ・ジョイス
訳者:柳瀬尚紀
仕様:A5判/上製/480頁
発売日:2024年8月26日
税込定価:6,930円(本体6,300円)
ISBN:978-4-309-20900-5
装幀:鈴木成一デザイン室
装画:山本容子
書誌URL:
書名:フィネガンズ・ウェイク Ⅲ・Ⅳ
著者:ジェイムズ・ジョイス
訳者:柳瀬尚紀
仕様:A5判/上製/312頁
発売日:2024年8月26日
税込定価:5,390円(本体4,900円)
ISBN:978-4-309-20901-2
装幀:鈴木成一デザイン室
装画:山本容子
書誌URL:
書名:フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ/Ⅲ・Ⅳセット【限定セット】
仕様:A5判/上製/792頁
発売日:2024年8月26日
税込定価:11,000円(本体10,000円)
ISBN:978-4-309-20903-6
セットケースデザイン:鈴木成一デザイン室
イラスト:山本容子
書誌URL: