株式会社河出書房新社(東京都新宿区/代表取締役 小野寺優)は、汐見稔幸編著による『学校とは何か 子どもの学びにとって一番大切なこと』(河出新書)を2024年8月27日に発売します。
いま全国各地の幼・小・中・高からひっきりなしに講演会を依頼されている教育学者・汐見稔幸氏。
教育の原理の転換(主として、教えから学びに教育発想の重点を移すということ)を提唱し、教え方ではなく、子どもの学びの深め方から、いま必要な教育の本質、学びの本質について一石を投じた前作『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(2021年刊)は、保育・幼児教育の場から大学まで、多くの教育関係者、保護者に受け入れられ、刊行以来、支持を得ています。
そして最新刊の本書『学校とは何か 子どもの学びにとって一番大切なこと』(編著者)では、前作で謳った「教育の原理の転換」について、具体的に現場でどのように行われうるものか、紹介しながら考察していきます。
実際のやり方を大きく変えることは簡単なことではありませんが、子どもたちの学びに寄り添いつつ変わりはじめている学校が、全国にはたくさん存在します。本書では、改革を進めているいくつかの学校等を取材。各所での実践の様子を読みながら、学校で、家庭で、そのほかの教育の現場で、子どもたちの学びをどのように応援できるのか、一緒に考えていく書籍です。
本書の取材パートを担当したのは、教育ライターの太田美由紀氏。取材先では、先生や保護者の価値観を大きく変えた、いきいきと学ぶ子どもの姿を見ることができた、と言います。
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「学び」のスイッチはどのように入れる?
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その子に合う「学び」方を見つけるには?
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多様な子どもたちが安心して学ぶには?
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教員の視点はどうすれば変わる?
なお、本文各章末には、具体的な事例を参考にしながら、少しずつでも子どもの「学び」を変えるために一歩ふみ出すことができるかについて、汐見稔幸氏がまとめた【教えから学びにふみ出すために】を掲載。
いま最も教員・保護者から信頼されている教育学者が注目する学校改革の最前線をまとめた本書。
「学校に期待しても何も変わらない」「自分一人の力では何もできない」とあきらめる前に、保護者・教育関係者の皆さんに、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
■ベネッセ「VIEW next ONLINE」にて連載記事公開
本書を再構成した太田美由紀氏による連載記事「子どもと教員がいきいきと動きはじめる学校──いますぐできる12の転換」が公開されます。(初回は8月8日に公開済み)
https://view-next.benesse.jp/innovation/page/article28853/
■汐見稔幸氏による「はじめに」より(一部抜粋紹介)
やはり、改革は内在的であることが大事なのです。つまり、自分たちの学校にどうしたメリット、デメリットがあるのかということを、内部の声、つまり生徒や保護者の声をしっかり聴きながら、また外の声をも参照しつつ、少しずつ明らかにするということが基本になるのです。そこから自分たちの利点を伸ばし、弱さを克服していくためにどうすればいいかをみんなで議論しながら明らかにする。これが教育改革、学校改革の基本哲学だと思います。
教育は、生徒の苦手なところを見つけ、それを訓練して得意なことに変える、という仕方ではうまくいかないということは、つとに指摘されてきましたし、そう実感している方も多いでしょう。苦手なことをさせられると、そもそも学ぶということ自体が面白くない、辛いと感じてしまう生徒が多くなるからです。そうではなく、子どもたちの興味を持っていること、関心が高いことを、なるべく子どもたち自身がしたがっている方法で解明していく、それを応援していく教育の仕方の方がよく学ぶ、ということはある意味常識になってきています。
教員が主導して学校を変えていく場合も原理は同じはずです。教員が苦手とするところを得意に変えて新しい学校をつくれ、というにおいが隠れている改革はうまく進まないでしょう。逆に、教員が得意な分野をうまく活かし、教員自身がやりたいと思っている方向で改革していこう、その進行を、社会が学校と教育に期待している方向とつなげていく、とする方が、うまく進むはずです。
本書は、そういう視点で、日本の学校、とくに公立の学校で、それぞれが自分の学校はこうすればもっと生徒たちが本気になって学ぼうとするのではないか、自分の得意を活かして学校改革をするとこんなアイデアが浮かび上がった、等の視点で自前で学校の改革を進めてきたところを選んで紹介し、あわせてその改革の意味するところを少し突っ込んで意味付けする、ということでできあがったものです。
選ばれた学校は、各章のタイトルにあるテーマのようなことを追求している学校、あるいはそういうテーマに次第になってきている学校ですが、共通しているのは、冒頭で述べたように、〈教えの教育から、学びを支える教育〉に移行しようとしているところです。このテーマを、昨今テーマになっているインクルーシブ教育、あるいはGIGAスクール、不登校の見直し、等を切り口に具体化しているところについても紹介しました。
いずれの学校も、内在的に改革を進めることによって、自分たち自身がめざしている学校を徐々に形にしていることに大きな喜びを感じていることぜひ読み取っていただきたいと願っています。改革は喜びを伴わないと首尾よく進まないのです。
■本文より
■目次
はじめに いま、学校が変わりはじめている
第1章 「学び」のスイッチを入れる──できる・できないからの解放
・週一時限の「探究」で生まれた変化──神奈川県大和市立下福田中学校
・学びの多様化学校の可能性──神奈川県大和市立引地台中学校分教室
【教えから学びにふみ出すために】評価・教育課程(カリキュラム)からの解放
第2章 「学び」に向かう前提──主体的な学び・個別最適化
・コロナ後に必要な院内学級の視点──東京都品川区立清水台小学校昭和大学病院院内さいかち学級
・ICTで進む個別最適な学びと協働的な学び──埼玉県さいたま市立桜木小学校
【教えから学びにふみ出すために】こころの安全の保障・安心して失敗できる環境づくり
第3章 自分に合う「学び」方──一斉授業からの脱却・本来の自由進度学習
・子どもが自分たちでつくる授業──神奈川県横浜市公立小学校
・エラー&トライで自分に合う学び方を選ぶ──東京都新宿区立柏木小学校
【教えから学びにふみ出すために】一斉授業からの脱却・自分に合う学び方
第4章 正解のない「学び」──プロジェクト学習・縦割り
・プロジェクト活動が動き出すための土台──新潟県長岡市立表町小学校
・体験学習を中心に縦割りで取り組む「本物の仕事」──学校法人きのくに子どもの村学園 南アルプス子どもの村小学校
【教えから学びにふみ出すために】プロジェクト学習の効果
第5章 多様な子どもたちが安心して学べる環境──インクルーシブ教育を目指して
・通常の学級でも一人ひとりに合った支援を──京都府八幡市立中央小学校
・子どもではなく手段と環境を変える──東京都狛江市立狛江第三小学校
【教えから学びにふみ出すために】インクルーシブ教育への歩み
第6章 教員の視点の転換のために──教育委員会の動き
・演劇ワークショップで変わる教員の視点──豊岡市教育委員会(兵庫県)
・暗闇を体感することで気づく子どもたちの視点──広島県教育委員会
【教えから学びにふみ出すために】教員と保護者に必要な子ども観
取材後記(太田美由紀)
おわりに
■内容紹介
先生や保護者の価値観を大きく変えた、いきいきと学ぶ子どもの姿。すべての子どもたちが「自ら学ぶ力」を存分に発揮できる学校とは? 各地の先進的な実践から、学校での「学び」を考える。
■編著者紹介
汐見稔幸(しおみ・としゆき)
1947年、大阪府生まれ。専門は、幼児・児童教育学、保育学、教育学。東京大学名誉教授。白梅学園大学名誉学長。著書に『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出新書)、『本当は怖い小学一年生』『「天才」は学校で育たない』(ともにポプラ新書)、『人生を豊かにする学び方』(ちくまプリマー新書)など。
■書誌情報
レーベル:河出新書
書名:学校とは何か 子どもの学びにとって一番大切なこと
編著者:汐見稔幸
仕様:新書版/並製/368ページ
発売⽇:2024年8⽉27日
税込定価:1100円(本体1000円)
ISBN:978-4-309-63176-9
装丁:オクターヴ
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309631769/
出版社:河出書房新社
□好評既刊
書名:(河出新書)『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』
著者:汐見稔幸
仕様:新書判/並製/256ページ
発売日:2021年7月27日
税込定価:979円(本体890円)
ISBN978-4-309-63136-3
内容紹介:なぜ教育には「~しなければならない」が多いのか? どうすれば「みずから学ぶ」環境はつくれるのか? 教え方ではなく、子どもの学びの深め方からいま必要な教育の本質を考える。