衝撃的な数字だ。2020年から2024年(8月時点)までの直近4年間で、中古バイクの平均相場は63.5%値上がりしている。
総務省が発表した2024年7月の消費者物価指数は2020年比で108.6である。世の中の物価は4年間で8.6%上昇したわけだが、中古バイクのそれは63.5%と異常に突出している。
俄かには信じ難い話だけに、先に事実関係をご紹介したい。
上段のグラフは、過去10年間に渡って中古バイクの平均相場がどう推移してきたかを示している。
使用している数字は業者間オークションの平均落札額だ。
業者間オークションとは、買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される会員業者間の市場である。 端的に言えば『業者間の平均取引額=買取業者の平均転売額=販売業者の平均仕入れ額=中古バイクの平均相場』と換言できる。
上記グラフを主要8メーカーの平均取引額に細分化すると下記のような推移になる。
上記が示す通り、2020年までは若干の下落もありつつ総じて緩やかな上昇基調で推移していた中古バイクの平均相場であるが、2021から2022年に掛けて空前の高騰を記録する。
ご記憶に新しいかもしれないがコロナ禍相場である。新車の供給が停滞した反面、代替のバイク通勤特需(2021年は新規二輪免許所得者数が前年比で10.2%上昇)も加わって中古バイクの相場が急上昇した現象である。
抽選販売の末に長期間の納車待ちとなった現行の人気機種においては、新車価格を超える中古車が続出し、Z1をルーツとする旧来からプレミアム化していた旧車は対前年比で2倍や3倍となる機種も出現する異常事態となった。
コロナ禍相場が落ち着いても上昇を続ける理由は何であろう?
コロナ禍相場の期間に中古バイクの相場は実に4割弱も上昇したのだが、相場高騰の理由は国内の需給が主要因であり、日本国内で最終消費される人気車の価格が高騰した現象であった。
2022年も後半に入るとコロナ禍の混乱も収まりを見せる。新車は順当に供給されはじめ、バイクの代替通勤需要も(新規2輪免許取得数は前年比で5・3%)減少したことで、 異常高騰していた機種群の相場は反落に転じたのである。
だが、しかし腑に落ちない点がある。
2023年以降も販売店の仕入れ価格である業者間オークションの平均相場は反落には転じず上昇を続けているのである。2023年には対前年比で5.8%アップ、さらに2024年には9.5%と更に上昇し、2020年から2024年の4年間で63.5%の上昇を記録したことになる。史上最高額を4年連続で大きく更新していることになる。
コロナ禍バブルが弾けた以降も相場が上昇し続けている理由は何であろうか?
その理由について以下の順で迫っていこう。
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1)新車価格の上昇
2)円安
相場上昇で史上空前の売り時を迎えている
中古相場上昇中の理由(1)新車価格の上昇
新車価格の上昇率は4年間で12%超
中古バイクの平均相場が6割超上昇した2024年までの4年間に新車価格はどの程度上昇したのか?
上記はそれを示した表である。
具体的には2024年モデルが発売された機種について、2020年モデルもリリースされていたか否かを洗い出し、20年型と24年型が国内発売された同一機種だけを対象に2020年モデルと2024年モデルの新車価格を総額に(各機種の価格を足し算)して比較している。
(メーカーによって機種数や期中のアップデート内容に差異があるのだが)新車価格は4年間で12.4%の上昇を記録している。
左欄1番目のグラフが示している通り、2020~24年の世の物価上昇率(消費者物価指数108.6)8.6%と比べると高いのだが。
中古バイクの平均相場上昇率63.5%と比べると遠く及ばない。従って新車価格の上昇は、中古バイクの平均相場が大きく上昇し続けているている理由の1つには挙げられるが、充分とは言えない。
国産車と輸入車で値上げ率に違いも
国内と海外メーカーで分けて値上げ率を比較すると、
国内4メーカーの値上げ率は8.9%であり、世の中の物価上昇率8.6%と連動し平均並みの値上げの範疇となっている。
対して海外主要4メーカーの値上げ率は15.2%であり、海外で大きく進んでいる物価高や、円安対応の価格改定が表れた結果となっている。
続いては円安が中古相場に及ぼす影響について見てみよう。
中古相場上昇中の理由(2)円安
中古バイク相場が上昇し続けている最大の理由は円安に伴う海外勢の買いである
2022年春から大きく円安に振れた影響はどうであろうか?
回答としては影響大となる。年間に20万台弱の取引が行われる業者間オークションだが、その取引されたバイクの約半数は海外に輸出されているためだ。
市場取引において5割の構成比を持つ海外ルートの存在感は大きい。
直近5年の円相場のトレンドを振り返ると、2021年春まで1ドル=100~110円のレンジであったのが、2022年中に150円台を記録しトレンドとしては円安基調を強め2024年には160円を記録している。
円相場が大きく動いた直近5年でバイクの輸出入環境は様変わりした。
2021年まではインド・中国・東南アジアで廉価に販売されている機種を40フィートコンテナに詰め込み日本で輸入販売している業者が多く存在したが、2022年以降はめっきりと減っている。円安によって現地通貨建ての仕入れコストと、北米ドル建てで決済される2輪の貿易コストが上昇し、国内での輸入販売価格が競争力を失ったためである。
逆に2022年以降は、円安を受けて国内のバイクは海外勢にとって格好の仕入れ対象となっている。
例えばアメリカのバイヤーが2万ドルの予算を持っていたとしよう。
2021年までは210万円のバイクが業者間市場で落札できたのだが、2024年の上昇局面では320万円のバイクが落札できることになる。
日本で購入して海外で販売するには、通関や輸送コスト(北米ドル建て)なども掛かるので正味の落札上限は310万円程度となるのだが(国内の買い手には太刀打ちできない入札額で)市場の半数を占める海外勢が競って相場が吊り上がっている構図となっている。
1つの事実として。円安基調となった2022年以降、業者間オークションにおいて史上最高の落札額が更新しされ続けているのだが、その買い手は総じて海外勢である。
具体的には、ワールドワイドなコレクター市場が存在する80~90年代のレーサーレプリカが1,000万円を超える金額で次々と落札されているのである。
(1,000万円超の取引が続出する80~90年代のホモロゲ機TOP5)
ユーロ・ポンド・ドルといったメジャー通貨に限らず、主ボリュームゾーンの輸出先であるロシア・タイ・UAE(アジアや中東圏)などの通貨に対しても円は2020年比で大きく下げており、 コロナ禍相場以降も上昇を続けている最大の原動力であると言える。
2022年までのコロナ禍相場を押し上げた主要因は国内需給であった。
国内の中古バイク特需が終了した2023年以降も中古相場が上昇を続けているのは円安に伴う海外勢の高額入札が主要因となっている。
それだけに、円高に振れた際には相場が反転する可能性も含んでおくと良いだろう。
相場上昇で【買取査定】は絶好の売り時
勘の鋭い諸氏であれば「63.5%の値上りって、実際 販売店ではそんなに中古バイクの値段上がってなくね」とお思いであろう。
正解である。上述の通り相場を大きく吊り上げているのは輸出用途の海外勢であり、高額で落札された車両の多くは海外に流れているからである。 幸いなことに国内需要と海外需要では機種や状態によってある程度棲み分けが出来ている。そのため国内の販売店に並んでいる中古バイクの値段がガツンと上がっている実感は薄いであろう。
ただし、仕入れの際に海外勢と競る様な機種(例えば上述の80~90年代のホモロゲーション機など)の店頭販売価格を見たら目玉が飛び出ることであろう。
高額の買取査定となる史上空前の好機
中古バイクの相場高騰は、購入検討者にとっては、おしなべて気の滅入る情報なのだが。
バイクを売ろうと考えているオーナーにとっては朗報以外の何物でもない。特に海外需要が高いバイクであれば現在の買取相場に驚かれる事だろう。
海外需要の高いバイクをお持ちであれば高額で売却し、相場が高騰していないバイクに乗り換えて、大きな売却益を手にしては如何だろうか。
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全ての機種について過去10年間の相場推移が確認できるので、売り時を把握することも可能だ。
▼オリジナル記事とこの記事の参考リンク